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「かわいくない後輩だな」と言えちゃう五十嵐さんがとても素敵だ 【3/17 オープン戦 ソフトバンク⚫️】

19歳と、39歳が、グラウンドで目を合わせて合図を送る。カツオさんの半分しか、まだ生きていないんだなあ村上くんは。と思うと、なんだか不思議な気がする。言うまでもなく私はカツオさんとの方が歳が近く、村上くんに至っては、私との歳の差よりも息子との歳の差の方が近いのだ。

39歳のカツオさんが投げる。早速ホームランを浴びたりする。かと思うとゲッツーをとったりする。うむ、いつものカツオさんだ、と私は思う。

そして気づけば2点が入っている。うむ、いつものカツオさんだ、と私は思う。

とにかくソフトバンクはとても強い。そりゃ「世界最強」を目指しているだけある。世界最強なんて言えるのは武井壮かソフトバンクくらいである。いや武井壮は違ったっけ。

でもそのソフトバンクから、19歳の村上くんはなんと、スリーランを放つ。私は久々に、「ぎゃーーーーーーー!!!」と叫んだ。人は驚くと本当に「ぎゃーーー」と叫ぶのである。神宮の中心で。自由席なのをいいことに初めて座ったネット裏で。

でっかい逆転ホームランだった。あまりに早いうちから期待しすぎるのはよくない、プレッシャーかけちゃダメだ、と、なぜか母親のような気持ちで19歳を見るのだけれど、それでも期待せずにはいられない一本を、この19歳は放つ。

そういえば発熱してたんじゃなかったっけ。発熱明けに2試合連続でホームランを打てるのはそれは若さなのかそうなのか。こちとら一週間くらい地味に喉の痛い風邪が治らないというのにそれは歳なのかそうなのか。とにかく、発熱明けでもホームランを打てるのが、それが19歳なのである。

25歳の塩見は、世界最強を目指すチームの世界最強の甲斐キャノンから、盗塁を決める。夢のような対戦に、神宮はわっと湧く。希望だらけだな、どうするんだろうこれ、と私はまた思う。

ヤクルトのユニフォームを着て初めて神宮のグラウンドに立ったルーキーの中山くんは、タイムリーツーベースを放つ。どうするんだろうこれ、ともちろん私はまた思う。ビールもじんレモ(新発売の神宮レモンサワー650円、なかなかおいしいです。高いけど。)も緑茶ハイもよくすすむ。どうするんだろうこれ。

一方で、ものすごく暖かい、大きな拍手で迎えられた五十嵐さんは、久々のマウンドで、2失点をする。いろんな思いがあって、そしていろんな人の思いを乗せて、このマウンドに立つ五十嵐さんのことを考えると、少し切なくなる。人生というのは、現実というのは、そんなドラマみたいにうまくいくもんじゃない。10年ぶりに、ヤクルトのユニフォームを着て立つ神宮のマウンドで、直前まで所属したチームのバッターを簡単に打ち取れるほど、人生は甘くない。

と、思っていたのだけれど、五十嵐さんは試合後に言う。

チームメートだった塚田に犠飛、釜元に適時打をそれぞれ許し「あんなにかわいがったのに、かわいくない後輩だな、と。試合だから仕方ないけど」と冗談めかした。

あーめちゃくちゃいいな、と思う。最近の、良くも悪くてもとにかく謙遜しまくり反省しまくるヤクルトの若手たちももちろんかわいいのだけれど、こうやってユーモアを交えながら自分の失点のことを話せちゃうのは、それはやっぱりベテランの余裕だ。エイオキもこういうところがあるから、あるいはメジャー帰りのマインドセットなのかもしれないけれど。

「真っすぐの切れが良くなったら違う結果になる」

五十嵐さんは、もう次を見ている。もちろん実際にはいろんな思いがあったとしても、それを必要以上に出さない。かっちょいい。

今日も、若手たちは打ちまくって走りまくった。そしておじさんたちも、投げて、打って、走った。その背中でたくさんのことを伝えるように。なんといったって、甲斐キャノンから盗塁を決めた塩見を、ホームにちゃんと返したのはエイオキ兄さんなのだ。まだまだ見ている私が切なくなっている場合なんかじゃない。

「なんか楽しい試合だったね」と、家族四人でにこにこしながら銀杏並木を歩いた。(負けたけど楽しかった、というのはシーズン中多発するセリフである。)またこの季節が来たねえ、と笑いながら。神宮のビールがもっともっとおいしくなる季節は、もうすぐだ。


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