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虫女の秘事〜ムシージョのヒメゴト〜

私が現在のような「虫女〜ムシージョ〜」になった経緯は、下記の通りなのだけれど。

普段は限られた場でしかそのことを明らかにしていない。
私は、虫女という素顔の上に、平々凡々な女の仮面を被って生活している。

ここnoteや、その他いくつかのSNSは、私にとって数少ない虫表現のフィールドなのである。

しかし昨日、その秘事は白日の下に晒されてしまった。

約2年の虫探しの旅、もといニート期間を経て、パートタイムジョブを始めたのが今年1月のこと。

虫シーズン真っ只中、虫探しの時間が減ることが最たる懸念事項ではあったが、今月から正職員としての採用が決まり、昨日は私と他何名かの合同歓迎会に参加した。

職場の食堂で開かれた、アットホームな歓迎会。
…にしては、開始直後からウン万円のワインやら日本酒の瓶がポンポン封を切られ、アチラコチラでワイングラスをグリングリン回しながら「芳醇な香り」とやら、「この日本酒は人生変わる」とやら、感嘆の声が上がるのが聞こえてきて、さながら酒の鑑評会の様相である。

下戸の私は一瓶3000円のデコポンジュースをすすりながら、みんなが出来上がっていくのを眺めていた。

「はい、みなさーん、宴もたけなわですが、ここで新しく入った方々にご挨拶をしてもらおうと思いまーす!」

きたきた。

私は無難に日頃の感謝と、正職員となるにあたっての抱負を述べようと思っていた。

私の順番は二番目。
前の方が名前と所属を言い、「よろしくお願い致します」と簡単に挨拶を終えると、すかさず院長が「名前だけで、ええの?なんか他に聞いとかなあかんとちゃう?」と司会者へツッコんだ。

「それでは…ご趣味は…?」

おお…プライベートなことに踏み込んできますか。

と思ったら、すぐに私の順番がやってきた。

現時点までの5ヶ月間、お淑やかで落ち着いた雰囲気のアラフォー女性を演じている私は、一体どういうスタンスで挨拶したらいいのか決め兼ねたまま、高鳴る胸にマイク代わりのハート型ペンライトを抱き立ち上がった。

「1月から外来でお世話になっています、アサミサガシムシです。今月から正職員として採用していただけることとなり…」

よし、無難に始めたぞ。
このまま行けば、私はしっかり者のアラフォー女性像を死守できるはずだ。

「…いつもありがとうございます。これからもご指導のほどよろしくお願い致します。」

「はい!それでは、質問ターイム。休みの日は何をしていますかー?」

休みの日は…
「休みの日は、えー…本を読んだり。」

読んだり…
その他にすることといえば…

「実は、虫や爬虫類の類が大好きなので、虫を探して森の中を歩き回って、写真を撮ったり手に乗せて観察するのを楽しんでいます。」

「えーー!!初耳!」(イケメン理学療法士)
「おいおい、これはマズイぞ。ヤバいな。」(副院長)
「ヒャッヒャッヒャッヒャッ」(院長)

ヤバいヤバい。
これではただの変人虫女だ。
もっと実用的なアピールをしなければ。

「えー…、これから夏になって、院内に虫が入ってきてお困りの際は、ぜひ私を呼んでください。蛾とか大抵の虫なら素手で掴めますので。」

「スゴーーーイ!(ヤバーーイの類語)」(一同)「ヒャッヒャッヒャッヒャッ」(院長)

よし、つかみはオッケーだ。

なんのはなしですか

こうして私の秘事は、周知の事実として院内全員の知るところとなったはなし。

私の溢れ出る虫愛は、そう簡単に隠し通せるものではなく、遅かれ早かれバレたであろう…と諦めるしかないはなし。

クスサンのブローチ

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