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蛹から蝶へ
濃密な三連休が終わろうとしている。
始まりは土曜日。
自然観察のために、森と川へ連れて行ってもらった。
後日記事に書く予定だが、それはもう言葉に言い表せないくらい楽しい時間を過ごした。
土曜の早朝5時。
目的地に到着した私たちは、車を降りてウェーダーに着替え、川へ降りる準備をしていた。
目に搭載されている生き物レーダーを作動させると、脇に生えるフキの葉裏に白っぽいものを発見した。
![](https://assets.st-note.com/img/1658151654234-OMaDQuex0h.jpg?width=1200)
真っ白で、下腹部(?)にはスタッズのようにシルバーに光る4つの尖り。
周辺は電波がゼロで調べようもない。
持って歩くわけにもいかないので、とりあえずそのまま川へと向かった。
散策を終え、車に戻ったときにふとあの白い蛹が気になり先程の葉をめくると、当たり前だが同じ形でぶら下がっていた。
昆虫は生まれた森で生きるのが一番だと思っている私は、昆虫を見つけても持ち帰ることはしない。
ただ、このときは何故か連れて帰りたくなってしまった。
エゴといえば完全なるエゴだ。
自然観察はまだまだ午後まで続く予定だったので、蕗の葉を千切って採集箱へ入れ、次の目的地へと向かった。
時々箱の中を覗くと、なんとなく色味が変化しているように感じる。
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家に帰ったのは、午後4時半。
すぐに蛹を取り出し、虫かご代わりのケースへと移した。
ネットで調べると、タテハチョウの蛹らしい。
なんとなく先程よりも濃いグレーに近づいている。
もしかしてこれは、今日中に羽化するのではないか。
やばい、私は非常に眠いのだ。
1時間半睡眠で、13時間の冒険をして帰ってきた私の意識は、ソファの上でいとも簡単に事切れた。
…ハッと目覚めると、30分ほどが経過していた。
蛹の色味は徐々に濃くなっているようだ。
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すでに、タテハチョウ特有のオレンジと黒の模様が透けている。
![](https://assets.st-note.com/img/1658152588785-KHGLIIlnFF.jpg?width=1200)
たった3時間でこんなに真っ黒になるとは。
今日の夜が山場だ。
寝ている場合ではない。
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たったの30分でこの変化!
白かったのがグレーになり、黒になり、またグレーに戻る。
そして、「ここから割れて出てきますよ」と教えてくれているかのようなラインが一本。
眠い。もうダメかもしれない。
でも、ここで寝るわけにはいかない。
なんのために連れてきたのか。
自分のエゴで持ち帰ったなら、しかと見届けなければ。
眠気を覚ますために無駄に家の中を歩き回ったりしながら、その時を待つ。
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そして、それは突如始まった。
21:40の時に入ったラインからミシミシとひび割れ、隙間から黒っぽいものがチラチラと見え始める。
約3分間の羽化ショー。
あんな小さな蛹の中に、どうやって収まっていたのかと不思議でしかたがない。
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エルタテハ
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ぶら下がるものを探していたので、準備していた割り箸を差し出す。
この時点で0:30。
限界点に近づいた私は、そのままそっとケースの蓋を締め、深い眠りへと落ちた。
翌朝。
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この日は生憎の土砂降り。
外へ放すことは諦め、しかしながらケースに入れっぱなしにするのも可哀想なので、家の中で放蝶することにした。
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寝る前には流石にケースに戻そう、ということになり、光で誘導しながらなんとか収納に成功…の直前、羽ばたくエルタテハが夫の胸元に止まるというアクシデント発生。
昆虫が苦手な夫は、声にならぬ声をあげ、椅子から転げ落ちそうになっていた。
そして、本日。
4時起きで、自転車にまたがり20分ほどの距離にある森へ向かった。
こんな時間に行ったのは、人がいなそうという理由と、あわよくばクワガタなんぞいるかもしれないと思ったからである。
しかし、またしても生憎の雨。
小雨ながら、まとわり付くように降り続いていた。
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ここの森を選んだのは、以前エルタテハを見たことがあったから。
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風や空気の湿り気を感じているのだろうか。
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葉の裏へ紙を近づけると、スッと乗り移った。
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お別れの挨拶と感謝の気持を伝え、薄もやがかかり始めた森の空気をいっぱいに吸い込み、ゆっくりと来た道を引き返した。
雨は昼前には止んでいた。
今ごろはどこかに飛び立っただろうか。
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