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遺伝と記憶

記憶は遺伝されない

それで同じ失敗を

何度もするんだから

非効率だと思いませんか

歴史は繰り返すという

記憶を閉じ込めた書物

焼けた図書館

本当に価値のあるものを

探すための時間を返してくれ

もし赤ちゃんに千年の記憶があったなら

この目の輝きは失われるんだろうか

無駄なことだといって

甘えた声を聞けなくなるんだろうか

人の肌の温もりを

記憶していないのならば

この笑顔はどこからやってきたと

いうのだろうか

死ぬ時に辛い思いをした

その記憶はどこにいくのだろうか

子供がないている

母親の記憶があるのだろうか

それとも

お腹が空いているだけだろうか

満たされた子供は

私たちのなにを引き継いで

なにを次に繋げるだろうか

どんどん薄くなっていく

濾されて濾されて

最後に残るのは

ちいさなかけら

そのかけらに触れたくて

自分に問いかける

私たちはなにを大事にして

生きていけばいいのと

ちいさなかけらに

問いかける

雑音に掻き消されて

小さくなっていく声で

問いかける

この子の中にある

ちいさなかけら

それは私と妻が遺したもの

私たちの声

それは憶えられて

やがて忘れられる

ちいさなかけら


サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。