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村崎懐炉短編小説集

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短編小説をまとめました。僕は不思議な話や甘い恋の話が好きなんです。
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#NEMURENU

短編小説「豚人間」

俺は何故、生まれたのか。

俺は、生まれた時から豚人間だった。真っ当な存在ではない。いや、其うでは無い。もし、俺の他にも豚人間がいて、そいつらと競い合ったら、きっと俺は真っ当な方だ。頭も体も、きっと顔だってそこそこだ。

豚人間の女が俺に恋をして、俺達は結婚して豚人間のベイビーを作る。
ベイビーがヨチヨチ歩いてさ、俺を見上げるんだ。ブーッ!俺はベイビーをあやす。鼻を鳴らすのが得意だ。ベイビーがフゴ

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短編小説奇々怪々「ひとだま饂飩」

短編小説奇々怪々「ひとだま饂飩」

第一景「実録うどんの怪」

「屋台」(Kさん・40代男)この前さ、家に帰るのに近道しようと思って。

墓地を通るんだけどさ。もう深夜になろうかという時間で。
墓石が黒い影になって並んでるんだよね。
墓石って全部形が違うじゃない。
高さとか大きさとか。それが影になってると

人が並んでるように見えるんだよね。そうしてさ、みんなこっち見てるような気になるの。
それで、良いお墓と悪いお墓がなんとなく分か

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短編小説「眼丩蝶」

短編小説「眼丩蝶」

Q県の僻村で眼球が殖える奇病が発生したと聞いて私は自身が勤める雑誌編集部のデスクに出張許可を申出たのであるが、デスクの返答はつれない。

「何故ですか」と私は訊いた。
「読者が眼球の殖える奇病に興味が無いからだ」とデスクは言った。
巷間の人々は眼球の殖える奇病に興味がない。
そんな事で自らの眼球が殖えてしまったらどうするつもりだ。

「そんな事で自らの眼球が殖えてしまったらどうするつもりだ」と私は

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