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うたのおへや

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わたし 村嵜千草の詩をまとめています
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#詩の朗読

2月の雪 ( 朗読・伴奏 )

2月の雪 ( 朗読・伴奏 )

もう何度目でしょう
いつもいつも音は無く
あるものを無かったみたいに

喜ばれたとて 疎まれたとて
なんにも気にも留めない風で

あなたを羨む私を
仲間に入れてはくれませんか

塵として埃として
冷たくなって重たくなって
舞って流れてどこかへ飛んで

私の元へも集まって
私の形にかたまって
境目のないように
誰にも分からぬように

あなたを羨む私を
共に溶かしてはくれませんか

儚くなくても美しく

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No.34    (※「34」改)

No.34 (※「34」改)

さよなら世界 ありがとわたし
短いなんて知らないよ 十分すぎる長さだよ

ありがと世界 さよならわたし
溶けて溶けて溶けゆくの 
土になる 水になる 大地へ還る

ありがと世界 おはようわたし
なんて なんて 広すぎて 
なんて なんて 狭いのかしら

おはよう世界 ありがとわたし
眩しいだとか 気持ちいいだとか いったん忘れていいんだよ

「揺れるカーテン 温かいスープの匂い
ふわふわのタオル 

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「おいしい」

「おいしい」

夕どきに母が耳鼻科へ行きました。
耳の詰まりが気になるからと、出かけてゆきました。

私は台所で母を見送りました。

コンソメスープと、夏野菜のサラダを作りました。
まだ母の帰りはありません。
ひとりそそくさと食べることにいたしました。

「おいしい〜!」

我ながら腹も心も満たされる食事ができたと、私を褒めました。

私の食事が終わるころ、母が帰ってきました。
ぐったりとひどく疲れた様子でした。

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34

34

さよなら世界 ありがとわたし
短いなんて知らないよ 十分すぎる長さだよ

おはよう世界 ありがとわたし
眩しいだとか 気持ちいいだとか いったん忘れていいんだよ

揺れるカーテン 温かいスープの匂い
ふわふわのタオル 汚れたぬいぐるみ 
イヤホンを外してごらんよ その雫を拭ってごらんよ
また目が覚めた 今日もゆくのね

ありがと世界 さよならわたし
溶けて溶けて溶けゆくの わたしは土で水でそれから

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眠れぬ夜

眠れぬ夜

ただ静かに
夜(よ)の更けるのを共にする

時には庭の鈴虫が
時には窓打つ雨音が
また時には 喉の渇きと腹の音(ね)が
わたしの旅の友になる

闇のなか
寝息のすきまを静かに歩く

ああ この時でさえ
無駄も無意味も起こさない
それを知っているわたし
だから止(や)めずに歩くのだ

歩けども歩けども
闇は 深く鋭くて

瞑れども瞑れども
歩みを止(と)めてはくれなくて

ああ 光を恋い
また 闇を

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