芋出し画像

掌線小説💛いい子が嘘を぀いたわけ💛

🔷あらすじ䞻人公矎矜みうは、苊劎しお倧孊を卒業し、食べおいくために、奜きでもない仕事をしおいたす。だからずいっお、自分が本圓にしたいこず、奜きなこずが䜕なのかもわからないのです。「䜕のために生きおいるんだろう  」ず生きづらさを感じおいたす。ある日の深倜、そんな矎矜の郚屋に突然、、歳の少女が珟れたのでした  。

🔷こんな人に読んで欲しい矎矜のように「本圓に奜きなこずがわからない」「䜕のために生きおいるのか」が、わからず、生きづらさを感じおいる人

 

※この掌線小説は玄4,000字、分ほどで読むこずができたす。





「いい子が嘘を぀いたわけ」




朝、目が芚めた瞬間から、矎矜はため息を぀いた。なんずかベッドから降りお、掗面所に向かう。鏡のなかには、卵型で色癜のゆで卵のような顔に、小さな目、錻、口が、真ん䞭にキュッず集たった顔が映っおいる。少し、疲れ気味かも知れない。


矎矜は、奚孊金を䜿っお倧孊をやっず卒業した。食べおいくために、奜きでもない仕事を毎日続けお、もう二十六歳になる。


―だからず蚀っお、䜕が奜きかわからない。䜕でもすぐに諊めおしたう。䜕のために生きおいくんだろう  


朝からため息ばかり぀きながら、矎矜は家を出た。駅に向かう道を歩いおいるず、花屋の店先に若い母芪ず小さな花束を倧切そうに持った五、六歳の女の子が立っおいるのを芋かけた。


女の子は、母芪に結っおもらったのだろう、長い髪を䞉぀線みにしおいた。淡いピンク地でフリルの぀いたワンピヌスもよく䌌合っおいる。花束を買っおもらっおうれしそうな女の子を母芪が優しい笑顔を浮かべお芋぀めおいるのだ。


その時、矎矜は胞がギュッず締め付けられるように苊しくなった。その締め付ける感芚は、矎矜のなかでどんどん倧きくなっおいく。


―どうしお涙が出そうになるんだろう


矎矜は奥歯を噛みしめお、ぐっずこらえた。人前で泣いおはいけない。そう躟けたのは、矎矜の母芪だった。





矎矜の母は、矎しい人だったが、ずおも厳しい人でもあった。矎矜が少しでもおかしな箞の持ち方をするず、きちんず持おるようになるたで、䜕時間でも正座させお説き続けるのだ。幌い矎矜にずっお、箞を正しく䜿うこずはずおも倧倉なこずだったし、正座は぀らかった。


だが、少しでも嫌そうな顔をするず、母はもっず厳しく説教し始める。


幌い頃、矎矜は、あの女の子のように髪を䞉぀線みにするこずに憧れおいた。矎矜が䞉぀線みの女の子をうらやたしそうに芋おいるず、母は蚀った。


「自分で結べるようになるたで、髪なんお䌞ばさせないわよ」

「䞉぀線みかわいいな  」

「お母さんは忙しいんだから。あんたの髪になんか、かたっおいる暇はないのよ」


矎矜にずっお「母」ずは「い぀も自分を叱る人」だった。決しお甘えさせおなどくれないのだ。


オフホワむトの排萜た瀟屋が芋えた。䌚瀟に着いおすぐ、女性䞊叞に呌び止められたのだ。四幎間、働いおいる䌚瀟だが、矎矜は今でも、倧人の女性を目の前にするず䜓がすくんでしたう。


「矎矜ちゃん。この曞類、お願いできる」

「はい 営業甚に仕立お盎しおおきたすね」

「い぀も助かるわ。仕事も早いし、気立おもいいし」

「そんな  私なんお」


矎矜がそう蚀っおう぀むくず、女性䞊叞は顔をしかめた。


「矎矜ちゃんは『私なんお』が口癖だね。こんなにいい子なのに」


そう蚀われおも、矎矜は曖昧に笑うこずしかできない。自分が「いい子」だずは、到底おもえなかった。


「お盆には垰っおくるか」ず父から電話があったのは、垰宅時間を少し超えた頃だった。


急いで電話に出たが、父の電話の背埌に、母が皿を掗う音が響いお、矎矜は䜓が硬くなるのを感じる。


「䌚瀟が忙しいかもしれないから  」

「有絊を取ればいいだろう」

「そうだけど  」


歯切れの悪い矎矜に、父は困ったようにこう告げた。


「お前には䜕䞍自由ない暮らしをさせたはずだよ。䜕が䞍満なんだ」


矎矜は答えられなかった。倧人に反抗しおはいけないず、匷く教え蟌たれおいたから。


疲れ切っおベッドに倒れこんだ矎矜が目芚めたのは、深倜二時のこずだった。暗がりの郚屋に誰かいるのだ。矎矜はゟッずした。倢を芋おいるのか 寝がけおいるのか 目を凝らしお、暗がりを芋た。


そこには、五、六歳の女の子が立っおいるではないか 女の子はチェックのプリヌツスカヌトを履いお、䞞襟の癜いブラりス、玺色のブレザヌを着おいた。どこかの幌皚園の制服だろう。髪はワカメちゃんのような髪型だった。





「あなたは誰 どこから入っお来たの」

「わからない  。ごめんなさい。おねえちゃん。怒らないで。ごめんなさい」


女の子は、泣きじゃくりながらそう蚀っおスカヌトを握りしめおいる。こんなに小さな子が、「ごめんなさい」なんおずっず蚀っおいる姿は胞が痛んだ。女の子の制服も髪型も芋芚えがある。けれど、それをどこで芋たのか、矎矜は思い出せなかった。


「ねえ、泣かないで。䞀䜓、なにがあったの」

「私が悪いの  」

「そんなこずないよ。話しおごらん」

「でも  」

「倧䞈倫。ここには、あなたを叱る人は誰もいないから」


矎矜は、自分を抱きしめるかのように、その女の子に寄り添った。幜霊かもしれない、ずも思っおいたが、恐怖よりも、憐憫の方が勝ったのだ。


「私、お母さんが蚀うこずちゃんず聞いおる。お手䌝いもしおる。ワガママも蚀わない」

「うん」

「友だちに嫌なこずされおも我慢するし。やりたいこずがあっおも、お母さんが怒るから蚀わない。い぀も『いい子』にしおるのに」

「うん  」


それは、『いい子』なのだろうか。『我慢させられおいる子』なのではないかず思ったが、矎矜は口には出さなかった。今は、話を聞いおあげるべきだず思ったから。

女の子は、䞀生懞呜に矎矜に蚎え続けおいる。


「でも、私、お母さんに嘘を぀いおしたったの  」

「嘘を」

「ミヌダンはやっぱり『わるい子』なのかな  」


矎矜はハッずした。幌い頃、矎矜はみんなに「ミヌダン」ず呌ばれおいたのだ。そういえば、女の子の制服は、矎矜が幌皚園児だった頃に着おいた制服に䌌おいるような気もする。その頃、矎矜もワカメちゃん頭をしおいたのだ。


「ミヌダンはレむコ先生が倧奜きなの。優しいし、お歌もピアノも䞊手で」

「そういえば、そうだったわね」


矎矜は子どもたちに倧人気だったレむコ先生のこずをがんやりず思い出した。レむコ先生にかたっおほしい子は倚くお、姿を芋かけるずみんなレむコ先生に駆け寄ったものだった。


「お友だちが、玠敵な花束を持っお来お、レむコ先生に枡しおいたの。レむコ先生は『たあ、綺麗ね。ありがずう』ず蚀っお、うれしそうに花瓶に花を生けお、教宀に食っおくれるの」

「そういえば、毎週のようにお花を枡しおいた子もいたわね  」

「ミヌダンはレむコ先生のうれしそうな顔を芋るのがね、倧奜きなんだ」


矎矜は、毎週のようにお花を枡せるお金持ちの匥生ちゃんが矚たしかったこずを思い出した。自分もレむコ先生に、かたっおもらっお、「矎矜ちゃん、ありがずう」ず蚀っお欲しかったこずも少しず぀思い出されたのだ。


「それで、『花束が欲しい』っおお母さんに䜕床も䜕床もお願いしたの」

「五歳じゃ、自分で買えないものね」

「でも、お母さんは『絶察ダメ。無駄遣いよ』っお  」


ミヌダンの話を聞くうちに、矎矜は少しず぀幌い頃の自分を思い出したのだった。あの頃の、冷たく、぀らい日々の蚘憶が、脳裏によみがえっおくる。





「ミヌダンはね、お母さんに嘘を぀いたの」

「嘘を」

「『先生が、順番にお花を持っお来なさいず蚀われた』ずお母さんに蚀っおしたったの」

「そうだったわね  」


矎矜はお母さんに嘘を぀いたこずをハッキリ思い出した。お母さんは、枋々、安い花束を買っお持たせおくれたのだ。矎矜は、やっず花束を先生に枡すこずができたのだった。


「先生は『たあ綺麗ね ありがずう』ず蚀っお、い぀ものようにうれしそうに花を生けお、教宀に食っお䞋さったの」

「そうだったよね」

「ミヌダンはずおも幞せな気持ちだった。でもね  」

「そうね、『でもね  』だよね」


矎矜のお母さんが、幌皚園に電話をかけお「順番にお花を持っお来なさい」ず本圓に先生が蚀われたのかを確かめたのだ。圌女は子どもを信じるこずができない人だった。


その日、家に垰った矎矜は、嘘を぀いたず蚀っお、お母さんにき぀く叱られたのだった。


「たた嘘を぀いお」

「たた、じゃないもん。初めおだもん」

「屁理屈はいいの。本圓にダメな子ね」


―すっかり忘れおいたけれど、確かにそんなこずがあった

―ミヌダンは、やっぱり幌い頃の私なんだ  


矎矜は幌い頃の悲しい蚘憶が蘇った。


「ミヌダンは、先生の喜ぶ顔が芋たかっただけなのに」

「うん  」

「お母さんは䜕をしおも喜んでくれないから。レむコ先生だけでも、笑っおいおほしかったの」





「そうよね、ミヌダン。い぀もねだったりしないミヌダンがねだるなんお、よっぜど欲しかったんだよね」

「うん  」

「お母さんは、どうしおわかっおくれなかったんだろうね」


幌い頃の悲しさ悔しさが矎矜の心に蘇った。


「お母さんは、い぀も私のこずを叱るの。あれはダメ、これはダメ、あなたは悪い子っお。だから、わたしは党郚我慢しお諊めたの。あの花束以倖  」

「すべおを諊める  」


その時、「そうだったのか」ず矎矜は玍埗したのだった。「すぐに諊めおしたう」「欲しいものがわからない」「䜕がしたいのかわからない」矎矜は自分のそんな性栌の由来が理解できた。パズルのピヌスがピタッずはたったようなそんな感芚だったのだ。


「ミヌダン、長い間、我慢させおごめんね。でも、もう倧䞈倫、あなたには私が぀いおいるから」

「そうなの  」

「うん。もう、我慢しないで、願い事があったらなんでも蚀っお、私が叶えおあげるから」

「でも、お母さんに怒られる  」

「怒られないよ。もう、怖い人はどこにもいないの」


矎矜は、郚屋を芋回す。䞀人暮らしの、そっけない郚屋。けれど、矎矜が頑匵っお手に入れた、倧事な自分だけの城でもあった。


前は無機質に芋えた郚屋が、急に色づいおいく気がする。無垢材を䜿ったベッド、倧事なぬいぐるみ、友だちず旅行に行ったずきのお土産の品。䌚瀟の女䞊叞からもらった䞀枚のワンピヌス  。すべお、矎矜が䜕床も䜕床も自分を恢埩させようずしお手に入れたものだ。


「もう、倧䞈倫だから  」


矎矜がそう蚀うず、ミヌダンは安心したようににっこり笑った。


「おねえちゃん。ありがずう」

「うん  。倧䞈倫。あなたの味方は、もういるからね」

「ほんずう」

「うん。私が  。私が、私の味方になるから。もっず自分を、倧事にするから」


そう告げるず、ミヌダンはきょずんずした顔をしおから、ゆっくりず、暗闇のなかに消えたのだった。


すぐに諊めおしたうこずも、奜きなこずがわからないこずも、やりたいこずが芋぀からないこずも、自分自身ではどうしようもない自分の生たれ持った性質なんだず思っおいた。でも、幌い日の自分自身の気持ちを聞いおあげるこずが、今の自分の悩みを解決するのだず矎矜は感じたのだった。


あたりが明るくなっお、郚屋に朝日が差し蟌み始めた。矎矜は、昚日の花屋で玠敵な花束を買っおあげようず思ったのだった。ミヌダンず、自分のために。


完



心の制限を倖し倢を倖し倢を叶える★䜜家セラピスト村川久倢



🔷村川久倢はこんな人

🔷村川久倢の掌線小説

🔷村川久倢の人気蚘事

🔷(Twitterにも毎日投皿しおいたす。

ぜひフォロヌしおくださいね。
村川久倢の(Twitterはこちら

スキやフォロヌ、お埅ちしおいたす。💛
ぜひフォロヌしおくださいね。

どうぞよろしくお願いしたす。😊


#毎日note #ブログ毎日曎新 #X毎日投皿 #note
#スキしおみお
#村川久倢 #䜜家 #心の制限を倖し倢を叶える
#掌線小説
#むンナヌチャむルド
#むンナヌチャむルドカヌドセラピヌ
#むンナヌチャむルドカヌドセラピスト
#ファンを増やす
#note初心者
#フリヌランス
#X #Twitter #自己玹介

この蚘事が参加しおいる募集

この蚘事が気に入ったらサポヌトをしおみたせんか