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【連載小説】聖ポトロの巡礼(第12回)

おしまいの月17日

 ヒマだ。何もする気が起こらない上に、することそのものがない。
 いや、早くその謎の「王国」とやらを探しに行けばいいんだけど、なんだかやる気を思いっきりそがれた感じで、きっと世に言う「燃え尽き症候群」ってやつかな。
 ま、ポトロってだけで殺されるかもしれないし、この宿でのんびりしてたらたぶん安全だし、しばらくゴロゴロしてようかな。シーツも毎日換えてもらえるし、風呂にも入れるし、飯も食えるし・・・。

 そうだ、バンナバンナについて書いとこう。

 俺はこの世界に来てからずっと、ハンバーガー屋を探し続けてたわけだけど、ま、ぶっちゃけそんなもんがあるとは全然期待してなかった。でも、この町の街頭の露店でそいつを発見したときは、正直驚いたね。
 サバラバでよく食べられている肉は、ヤダ肉っていうんだけど(ヤダって生き物は、犬くらいの大きさのネズミと考えてもらえばいいだろう。乳は取れないけど、もっぱら食肉用としてあちこちの農場で飼われているのを見たことがある)、その肉を細かくつぶして丸く固め、油で焼いてトランっていうパンみたいなもんではさんで食う。まさにハンバーガーですよ。
 この町では割とよく食べられる料理らしくて、たいていの飯屋に用意してある。しかも安い。出てくるのも早いし、まさにファストフードだ。
 ただ、俺の世界のものよりちょっと脂っこいのと大きいのとで、いっぺんにたくさんは食べられないのが難。
 でも大満足だぜ、バーガー党の俺としては!・・・贅沢を言うなら、テリヤキ味もあったらなぁ。

 さーて、このページで日記帳がちょうど半分埋まった。結構よく書いたなぁ。前の世界では日記なんか書いたことなかったのに。
 いや、だいたい紙に筆記具で何か書くなんてめったになかったしな。たいていコムログで事足りるからね。
 しかし、コムログのない生活ものんびりしてていいもんだ。最初のうちはさびしい気がしたけど、なくなったらなくなったで、別に困らない。どうせ持ってたって、向こうの世界と通信できるわけでもあるまいし、暦が違うから時計にすらならんからね。
 ハイテクなんて、所詮そんなもんか。



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)