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【連載小説】聖ポトロの巡礼(第10回)

おしまいの月12日

 昨日入国審査(?)が済んだ。変な検査だ。おそらくその、変な薬やら武器やらを持ち込まないようにだと思うんだけど、たいそうな身体検査だった。

 王国の城砦の入り口らしき巨大な門にたどり着いて、門番らしい人に例のポトロの札を見せる。するとその門番は、幅15メートル、高さ10メートルはあろうかという巨大な門の横の、小さな通用口から俺を中に入れてくれた。そこは小さな部屋になってて、普段門番が使ってるんだろう、木でできたテーブルや椅子が中央に配置してある。その部屋の更に奥に、もう一つ部屋があって、そこは石造りの小部屋。ちょうど牢屋みたいな感じだ。俺はそこへ通されて、こう言われた。
「イーギクーンイーナノタゼン。」
俺はビックリして、
「ノタ? ノタゼン? アーシーラクーンアーナノタゼン?」
って聞き返したら、
「オト、オト。ギクーンイーナノタ。」
って言われて。そういう趣味なのかな?(笑)って最初思った・・・違うと思うけどね。
 で、結局俺は全裸にされて、何人かの検査官?にじろじろ裸を見られなければならなかった。結局、合格だったらしく、俺は元通り服を着せられて、さっきの木のテーブルの部屋に戻された。そこで、さっきの門番がすごい笑顔でやってきて、私たちの街に来てくれてありがとう、って感じで、なんとお金までくれた。街に滞在している間、好きなだけ使ってくれということらしい。結構な額だ。そしてこの宿まで案内してくれた。
 ここはなんと5階建ての石造りの建物で(この町じゃほとんど一番の高さじゃないかな?)、その一番上の階のとても豪華な部屋だ。ふかふかのベッド、やわらかいじゅうたん、金細工の豪華なテーブルセット、そしてすごい見晴らし。風呂も共同じゃなくて、部屋に備え付けだ。
 あまりに豪華なので手持ちがちょっと心配になり、給仕さんに一泊いくらなのか聞いてみると、ポトロからお金をもらうなんてとんでもない、といったことを言われた。やっぱポトロすげえや。VIP扱いですよ。元の世界じゃ、社会の底辺の鼻つまみ者だったのに。

 俺は久々に、ふかふかのベッドでゆっくり寝た。ここならきっと首を落とされることもあるまい。それに何より、普通の寝床で眠るのは久しぶりだった。今月に入って、旅を始めた頃の暑さがだいぶ和らいできて、野宿だと朝なんかちょっと冷え込みがきつかったから、布団をかけて寝られるのはホントにありがたかった。
 疲れもたまっていたんだろう、俺の世界の時間にすると、多分16時間くらいぐっすり眠っていたろう。おきたら節々がちょっと痛んだ。

 体から疲れが抜けたら、ちょっと町を探検してみようと思う。ロヌーヌとやらを探すのは、その後でも大丈夫なんじゃないかな? と思ってるんだけど、根拠は別にない。
 ただ、今までも俺のペースで歩いて旅をして、ここにたどり着いたからといって目的を急ぐ必要も無いんじゃないかと。いいじゃん、俺のペースで、ってこと。ロヌーヌに会って何をすればいいのかも分からないのに。

 ともかく、まずハンバーガー屋を探すのが先だ。



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)