見出し画像

迷惑な恋愛

「自分の魅力が分からないから 恋も不器用になっちゃいそうで」

大森靖子ちゃんの「I&YOU&I&YOU&I」の最初の歌詞。


自分の好きなところなんてない。魅力なんて1ミリもない。本気でそう思いながら20年間生きてきたし、長年それになんの違和感もなかった。  

でもいざ視界を広げてみると、すごく可愛くて、強くて、弱くて、かっこよくて、キラキラした女の子たちが目に飛び込んできた。今まで私はどうやって生きてきたっけ。この子達にあるきらきらした何かを、私はひとつも持っていない。急に、自分がすごく劣った価値のない人間だと自覚した。そう自覚したのは正直いつからなのかは覚えていない。でも気づいたらコンプレックスまみれになっていた。大学生になる前に必死に磨いた外見も、他の子達に比べたら大したことない。というか、化け物みたいなメイクをして、大きくて真っ黒なカラコンをしなきゃ、私はみんなみたいな「普通」のレベルに達せない。今までもずっとブスな自覚はあった。でもそれが一気に人生のハンデに感じるようになった。それに、特に秀でたこともない。親に言われて勉強はそこそこしたし出来たけど、私より上の人なんていくらでもいた。第一志望なんて程遠くて、中途半端な大学に入った。長年習っていた硬筆も中途半端な段を取って終わったし、得意だと思っていた美術も音楽も、センスなんてなくて、ただの趣味のレベルにすぎない。6年間吹いた楽器なんか特に、中途半端に終わったなと思う。今まで色んなことを自分なりに努力したつもりだったけど、私は恥ずかしいことに、20年間生きてきても、正直「どこまで努力すればやりきったと言えるのか」がずっと分からない。全部中途半端な自分には、何も魅力はない。

けど、好きな人が私の好きなところをたくさん見出してくれたから、例えそれが私には納得出来なくても、もしかしたら本当にそうなのかもしれない、と思うことでなんとか自分を保っていた。可愛いと言われたら嬉しかった。低くて大きな鼻も、小さな目も、分厚い唇も、ニキビ跡が残った肌も、笑ったら目立つ少し出ている前歯も、総じて大嫌いな私の顔。美人なお母さんから何の要素も受け継がずに生まれたこんな醜い顔を肯定してくれて、疑いの気持ちの方が大きかった。思わず「目腐っとるんじゃない」って言ったら怒られた。こういう素直じゃないところも私の可愛くないところだと思う。今も治ってない。

コミュ力もあまりなくて、地味な顔だし、流行りには疎くてオタク気質で、運動は出来ないし、声も通らない。かと言って陽キャとも普通にコミュニケーションは取っていたので、スクールカーストで言ったら下の上か中の下、くらいだったと思う。要するに、いじめられたりはしないけど別段目立つこともない。影の薄い人間である。友達関係も、そこそこ円満に関係を築くことができるけどどこか1歩引いてしまうから、親友と言える友達がいるのかと聞かれたら分からない。全てにおいて中途半端なのだ。

好きな人は、こんな存在してもしなくてもさして変わらないような、中途半端な私を認めてくれて、たった1人のわたしだけを好きになってくれて、本当に嬉しかった。

でも私は、やっぱり自分を好きにはなれない。好きな人がいくら肯定してくれても、愛情表現してくれても、自分のことを好きになれなくて辛くなった。そして、なんで私なんかと付き合ってくれているんだろう、とよく思うようになった。考え始めたら止まらなくて、「自分のことを好いてくれる子が好きなだけでは無いのか?」という結論に至った。そう本人に伝えたらすごく怒られた。でもほんとうに分からない。なんで私なんだろう。他に、もっと可愛かったり、賢かったり、優しかったり、生活力があったり、面白かったりする女の子なんて五万といるはずだ。この考えは1回発生したら脳みそを大きく占領して離れなくなった。好きな人と一緒にいるときも、なんでだろうと考えてしまうし、私なんかと付き合ってもらって申し訳ないとさえ思う。かと言って私はその人のことが大好きだから他の人には絶対取られたくないから相手を思って別れるなんて出来ない。ジレンマ。ただのわがまま。

ついついしんどくなって「なんで付き合ってくれてるの?」とか「私のどこが好きなの?」と聞いてしまう。ちゃんと答えてくれる時もあるし、なんでやろうなー、でも好きなんよなー、とぼんやり返される時もある。ちゃんと答えてくれて嬉しくても、例えば「可愛いところ」と言われても、私に可愛いところなんてないのに、と思って結局どうしても疑問が残ったまま終わってしまう。そしてまたしつこく聞いてしまう。次第に相手に「俺が答えても否定して信じてくれんやん」と言われるようになった。私のせい。

私よりもっといい子はいっぱいいる、という考えから、「目移りされたらどうしよう、浮気されたらどうしよう」という考えもまた脳みそを覆った。相手の言動を気にしてしまうし、しつこく問いただしてしまう。少し喧嘩しただけで、「まあ私なんていいところないし、嫌われても当然」という考えが浮かぶ。そんな私の相手をしていると、彼はだんだんしんどくなっていったらしい。本当に申し訳ないです。

私も、好きな人に好きって言われたら素直に嬉しいと思える人になりたかった。好きな人が浮気するのを想像して何度も泣いて困らせるんじゃなくて、むしろ「彼ってほんとに私の事大好きだから〜」って堂々と友達に惚気られるような性格に生まれたかった。好きな人に言われた好きなところを、そのまま自分の自信にプラス出来るような人になりたかった。好きな人の好きな人を大事にできる人になりたかった。

この記事が参加している募集

#今こんな気分

74,584件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?