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よしなが大奥から学ぶ暗記できない日本の歴史
大学の同級生に「歴史の勉強がしたい」と言っていた子がいた。
私にとって歴史は暗記するもので、勉強するものだという認識が薄かったので、当時はその夢があまりピンと来なかった。だけど、その子が言っていた「歴史は調べれば調べるほど深くて、今わかっていることがすべてじゃい」という言葉とその表情は心に強く残っている。
私がその言葉の意味に少しだけ近づけたのはそれから10年ほど経って、よしながふみの「大奥」を読んでからだった。
同作は、過去2回の実写映画化、1回のドラマ化を果たし、現在は再度NHKでドラマを放送中というどんだけ実写化されるの!?という驚きの人気作である。
"男女逆転大奥"とか"歴史改編SF"等のキャッチコピーを耳にしたことのある人も多いのではないだろうか。
読み始める前の私は、「大奥ってあれでしょ?ハーレムと人間の闇が凝縮されたやつでしょ?それの男女逆転の何が面白いの?」と思っていた。人間の闇なんて現実だけでお腹いっぱいだし、物語でまで読みたくない。正直、アプリで一部無料になっていなければ、手に取らなかったと思う。
でも、読んでみたら印象がまるっとかわった。
まず最初に驚いたのが、4代将軍家綱編だ。
編というほどの長さはない部分だけど、ここを読んで私ははじめて、家綱が"さようせい将軍"と呼ばれていたことを知り、それをきちんと書いているこの作品がただの歴史もどき恋愛漫画ではないのだと気がついた。
その後に続く綱吉編でも、また新しい気づきがある。義務教育で習っていた綱吉のイメージと、漫画の中で描かれている綱吉が結びつかないのだ。
自分なりに調べると、生類憐れみの令を出し庶民を苦しめた犬公方だった綱吉は、今の教科書の中では徳川の平和をもたらした将軍の位置にいるらしい。
歴史の研究がすすむことで「1192つくろう鎌倉幕府じゃありませんでした、今有力な説は1185年です」となるのは理解できる。でも、人物の評価が変わるはなぜ?過去に起きた事実が変わることはないのに、歴史が変わったように感じるのはなぜなんだろう。
よしなが大奥を読んでいくと、そういう現象に多々出会う。特に田沼時代の章では歴史上で起きた事実と、話の展開上必要なフィクションを上手に絡めているので、エンターテイメントとして成立させているその手腕がほんとに化け物じみている。
あくまでフィクションかつSFであるというブレない軸とそれを忘れさせない男女逆転という設定があることで、読み進めていく中で「これは本当に史実で起きているの?」という疑問を読者に抱かせることに成功しているのが本当にすごい。
これを読んでから義務教育の歴史の授業を受けたらさぞ面白かろうと、今の中高生がちょっと羨ましい。
特に阿部正弘が登場した徳川家定編から徳川幕府の終焉に向けた流れが物語としてとても好きなので、ぜひまだ読んでない方はご一読ください。
漫画苦手な方はドラマでどうぞ!
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