見出し画像

幼稚園のころ、私が独占していた友人について

誰しも元トモ(疎遠になった友達)について、思いを巡らせたことは一度や二度ではないでしょう。疎遠になった友達へのメッセージ、彼らのものがたり。それを扱うラジオの人気コーナーから、たくさんのエピソードが一冊に集められたそうです。

老若男女。様々な関係性のエピソードが集まったこの本を読むにつれ、自分の元トモについての記憶が滲み出てくるのを感じたのです。今日は私の記憶がある中で最も古い友人について書こうと思います。

***

しおりちゃん(仮)は私が幼稚園の年少さん時代、やたらとついて離れなかった友人でした。彼女とはなぜ仲良くなったのか、もう全く覚えてもいません。普段何をして遊んでいたのかも、その子といつまで同じクラスだったのかも、私の記憶の中には残ってもいない気がします。

鮮明に覚えていることは、私が彼女をしおちゃんと呼んでいたこと。そして彼女は私のことをまゆちゃんと呼んでくれたこと。私の幼稚園年少さんのページには、彼女しかいませんでした。くるくるという言葉が似合う、強めの天然パーマの髪に、度の強い牛乳瓶の底のような眼鏡。そしてその奥で白く滑らかな肌と長いまつ毛をふわふわさせていたのがしおりちゃんでした。

体があまり強いわけではなかったわけではない彼女と、幼稚園に途中から入った私は、活発に遊ぶでもなく教室か園庭のすみっこによくいたと思います。何か思い出のものがあるわけではないのに、私が彼女を独占していたと言い切れるのは、別のクラスメイトにそれを指摘されたことを覚えているからです。

「しおちゃんはまゆちゃんのものじゃないんだよ!みんなのしおちゃんなんだよ」

その子は私としおりちゃんがいつもの通りしゃがみ込みながら頭を突き合わせて遊んでいるところに、真っ直ぐにきて、仁王立ちのままそういい放って帰っていきました。3歳ほどの女の子が語気荒く「ダメなんだよ!」と言ってきた光景が鮮明な記憶すぎて、忘れることができないのです。

昔から協調性をこれっぽっちも持ち合わせていなかった私は、なんだようるせえな。こっちは好きで友達と遊んでんのに、と思ったに違いありません。でも、そんなに仲良しだったはずのしおちゃんとは、小学校になると顔を見ても話さないほどになっていました。

高学年になると、当時仲が良かった別の友達経由でしおちゃんとはたまに会いました。彼女は当時のアイドルにどっぷりハマっているようで、いわゆるオタクだったと思います。幼稚園の頃に何で盛り上がっているのかを知る術はありませんでした。私は私で冷めた優等生ムーブを決め込んでいて、小学校で友達の少ない日々を過ごしていました。

もうしおちゃんは私をまゆちゃんと呼ぶことはなく、苗字にさんづけなのでした。今でも彼女のSNSも知りません。小学生の時から、私たちはもう元トモだったのでしょう。これからも会うことはないんだろうな。

***


ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。 スキやシェアやサポートが続ける励みになっています。もしサポートいただけたら、自分へのご褒美で甘いものか本を買います。