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物語

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夢の中で出会ったものや、街で聞こえた誰かの声や、本や映画や音楽から見える情景、などを拾い集めてコラージュし、お話を作っています。 ヘッダー写真撮影地:台湾・台南
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本の通販はじめました

本の通販はじめました

文学フリマ東京37で販売した、初めての書籍「麦野菜摘短編集 シンプル・コラージュ」の通販ページができました。

このnoteのマガジン「物語」で公開している9つの短編を収録しています。

✰蝶々を栞にして地下室で読書をする話
「アスタリスク」

✰電話ボックスや海の上を走る電車が飛び出してくる地図を手に入れた話
「その街の地図」

✰森に迷い込んだら、動物からカセットテープを作る芸術家に出会った話

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【11/11(土)】文学フリマ東京37出展告知【R-03】

【11/11(土)】文学フリマ東京37出展告知【R-03】

「文学フリマ東京37」に出展します!

*11/11(土)12〜17時(入場無料)
*東京流通センター 第一展示場・第二展示場
*最寄り駅は東京モノレールの流通センター駅
*イベント詳細→ bunfree.net/event/tokyo37/ 

麦野のブースは「第一展示場 R-03」

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これまでnoteに書き溜めてきたお話をまとめた短編小説集を販売します。

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見知らぬ小指

見知らぬ小指

襟を立てたコートしか頼るものがない。
この冬は、誰もが、誰にも触れることができないのだ。

人類はすっかり冷えてしまった。
未知のウイルスだとか、突然変異だとか、進化論だとか言われているが、本当のところは誰にも分かっていない。

体温は「マイナス」273.15度。
それは絶対零度と同じ温度。
ある日突然、全ての人間がそうなった。

質量保存の法則がどこか壊れてしまったようで、世界中の学者が何度も実

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秘密協定

秘密協定

ベッドは机に言った。
「役割を交換しましょうよ」
机はそれを承諾した。

それは私の知らないところで交わされた約束で、だから、私はベッドで食事をして手紙を書き、机の上に丸まり眠らなければならなくなった。

この家の主は私だと思っていたが、ベッドと机は私の思い通りにはならなかった。

この世はすべて錬金。

次の日は、書斎とバスルームが役割を交換していた。
なので私は、本から「湯」の文字を取り出して

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新世界ちゃん

新世界ちゃん

先輩、第ニボタンください。

そう言いかけてやめた。
本当に欲しい物を言わなければ。

先輩、心臓を見せてもらえますか。

先輩はいつも校舎より大きくて、上履きの爪先のゴムの部分とか、体育座りをした時の腰のあたりとか、そのくらいしか見えない。

先輩は、いいよ、と優しいトーンの声、それから大きな手に私を乗せて、エレベーターのようにぐぅんと一気に胸元まで連れて行った。

私の全身をくるむふかふかの手

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0時のレシピ

0時のレシピ

銀河に吸い込まれるように、煙はキッチンの窓から夜空に上ってゆく。

彼はいつも帰りが遅い。
仕事は忙しいし、睡眠も不規則だ。
だからせめて、家に帰ってきた時はきちんとした物を食べて欲しいし、向かい合って一緒に食事がしたい。

だから私は今日も料理をする。

今日は玄米粥。
深夜の帰宅だと、脂っこくて味の濃い物よりは柔らかくてホッとする物が食べたいはずだ。

玄米は消化に時間がかかるけど、彼はそんな

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A Spiral Balance

A Spiral Balance

「さかちゃん、ビンゴ使って京都作ったらしいよ」
研究室で100年間の天気予報を見ていたら、よしおがそんなニュースを持ってきた。
今日のよしおは坊主頭でガタイがよく、目が蛍光黄緑に光っている。
宇宙人の司令塔みたいだ。

「なるほどね。ビンゴだったら一人でやってれば、絶対いつか自分がビンゴだもんねぇ」
「夢の中だったとしても、覚めなきゃいいわけだしね」
「さかちゃんなら向いてそうだよねぇ」
「しばら

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CRY FOR THE MARS-プロトタイプ-

CRY FOR THE MARS-プロトタイプ-

できたばかりのあのファミレスに、深夜に行こうと言い出したのは、やっぱりまりんだった。

まりんはその名前とは裏腹に、海が嫌いで、好きなものはエアコンのきいた部屋で食べるアイスクリームとか、ビーズのぎっしりついた華奢なミュールとか、それで、いつも白いシャツ。
襟の形や素材が違っていたりするけれど、まりんはいつも白いシャツを着ていた。

あのファミレス?え〜国道沿いじゃん、夜だと音うるさくなーい?トラ

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心象録音

心象録音

遠くに見えるあの子の着ているスカートが、あまりに鮮やかな赤だったので、道に迷った。

いつもの散歩道をいつもどおりに歩いていたつもりが、なぜか見慣れない森の中にいる。
ついさっきまで陽炎が揺らめいて、アスファルトから湯気が立ち上るほど暑かったのに、森はすっかり紅葉していて、煤けた落ち葉が足元でサクサクと鳴った。
道というより、水のない大きな川の中にいるようだった。

赤や黄色、乾いた茶色が敷き詰め

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その街の地図

その街の地図

今、そばで舞った花びらが君の声に聞こえたのも、気のせいだったのか。

君からの手紙には、1枚の地図しか入っていなかった。
他には何もなかった。

しっかりした厚めの紙が幾重にも折り畳まれていて、広げると畳三畳ほどの大きさになり、僕の家の居間の中心はそれで覆われた。
地図としては、かなり大きい。

僕はその地図を俯瞰する。
君が住んでいる新しい街の地図。

これから住む街には世界遺産があるんだ、と、

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アスタリスク

アスタリスク

書店で蝶を買った。新しい本と一緒に。

茜色や菫色に彩られたその羽根は、光が当たるとキラキラと深く輝く。

それは紙で作られた蝶だった。
と言っても、ちゃんとパタパタ飛び回るし、花の蜜も吸う。
少し羽根が破れやすいことを除いては、普通の蝶と何ら変わりはない。

蝶は僕の栞であり、読書記録であり、コレクションだった。

蝶を買ってくるとまず、透明なビニール袋から丁寧に取り出して、光に透かしてじっくり

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