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ライブ、舞台、ダンスなど、パフォーマンスを見た時に、頭の中に降ってきた言葉や見えた風景を書きました。 ヘッダー写真撮影地:東京・台東区
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「兎が二匹」という名の呪い

「兎が二匹」という名の呪い

※漫画「兎が二匹」(作・山うた)のレビューです。
ネタバレあります。

「兎が二匹」特設サイト

深い呪いをかけられてしまった。

海を見る度に、ラストシーンのあのモノローグが頭をよぎる。

「いつまでも つづく」
「いつまでも いつまでも つづく」

海は永遠だ。
少なくとも人間の命に比べたら。

でも、海と同じくらい死なない人間がいたら、どうだろう?

398年生きている稲葉すずは、不老不死。

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プリーツ

折り畳んで誤魔化してくれても
私には本質が見えるわ

マイルドなら消毒
過剰なら炎上

この手の皮膚を焼き切って
骨を吐き出すためでしょう

冤罪じゃない魔女狩りが
規則正しく行われていて
ターゲットは私みたいで

そんなに水を流さないで
涙と私の見分けがつかなくなるじゃない
そんなのだめなの
まだ燃えていたいの

だって私は可哀相なの

マグマも涙も同じこと
でも勢いが足りないの
そんなに早く拭

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太陽の娘

母は完璧だった
美しい顔を持っていた

私は手足が生えていて
バタバタと空気を煽った

母のようになりたかった

ある日
火の粉の欠片を盗んだ
それは神様になる覚悟

けれども

光は乱反射で私を焦がし
皮膚には灰が付き纏う

這い出た私は
撚り合う糸を
指先で受けとった

いつしか穏やかな歩みを覚え
棘を優しく撫でさする

それでも

止まりかけた心臓を
この足で蹴って目覚めさせ
一瞬で崩れる王

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人魚と僕は

ファースト風土の店でもらった
ケチャップの容器の赤に
君の瞳はよく似ていた

海に行くための
青いオープンカーの開いた天井は
ちょうど僕の空虚のサイズ

立入禁止の夜を
黄色と黒で囲っても
簡単に飛び込んできた君を
どうしても逃がせないと
思っていたけれど
君は簡単に
飛び出してしまった

誕生日もクリスマスも嫌いだった
花束も喜ばなかった
それは多分
君は人魚で
触れると枯れてしまうから

僕が

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レプリカント

僕らは模範的なピエロじゃなかったから、工業用オイルではなくてレモネードを飲んだ。

オイルを飲んでいたやつは皆、酸化して動かなくなったよ。
別に嬉しくも悲しくもなかった。
ただ僕らは、レモネードを飲んだ。

そしていつの間にか溜まったカロリーが、僕の力になっていた。
それを気付かせてくれたのは、君だよ。
真っ白なドレスの、君。

ホログラムを撒き散らし、突然空から降ってきた雪。

僕は分かった。生

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輪廻の憂鬱

空気を水彩絵の具にして塗ったのは、空と雲の境目の掠れたブルーグレー。

マカロンカラーの水玉がバウンドする、ギモーヴの雨降り。

少女狂気、少年はただ夏の一瞬、
晴れすぎた日の黄緑の草むらの中で
大人びて相容れない二人は最期の時だけ隣同士。

カレンダーに一房垂らした前髪が秋の日に目印の線を引く。

どの木を庭に植えても、どの鳥の声を聞いても、きっと同じようにここに来ていて、同じ壁を見ていた。

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魔法

魔法だ。

君は結界を育てている。

シャラシャラと軽快に枝葉を伸ばした光が柔らかいドームを作って、
たくさんの衛星が飛び回って、世界に間違いがないかをチェックしている。
確認すると満足気ににっこりと笑う。

「あなたに魔法をかけました」
「あなたは3日後に、死んでしまうはずだったのですが、魔法で助けてあげました」
「だからもうだいじょうぶですよ」

海の底も空の上も、ここから10,000メートル

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海底散歩

僕の家は海の底にあって、どこまでも涼しく揺れる群青色の中の鍵。
落ちた星を目印にして。
小指の先に貝殻、ほの甘い香りの珊瑚、今朝夢を見た僕だ。

広がる言葉の後を追う、潜水艦は誰のもの。
火花が弾ける水の中、 声をつぐんだ秘密の色。

りりりりりりりり
音が聞こえる、聞きたかった音だ、
話し相手を探していた、もう長いこと。

ヘッドフォン。
闇夜が入り込まないように、ひそかに沈んでいった、シーツを

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