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ゼルジーとリシアン

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2020年11月の記事一覧

2.ゼルジーとリシアン

 車がストンプ家に到着したその頃、リシアンはまだ森の中だった。夏の日暮れは遅い。そろそろ夕方だというのにいまだ日差しが強く、木立の影はくっきりとしていた。
 お気に入りの隠れ家、桜の老木にぽっかりとあいたうろの中で、リシアンはあいかわらず空想の世界にひたっていた。
 いま訪れているのは、何もかもがパンでできた国である。家は丸ごと一斤の食パン。屋根にはブルーベリーやイチゴ、マーマレード、外壁にはバタ

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3.リシアンの秘密の場所

 小鳥のさえずりと次第に大きくなるセミ達の前奏曲にうながされて、ゼルジーはそっと目を開けた。
 差し込む朝日に顔をしかめながら、焦点を合わせようと努める。見慣れない天井が浮かび上がってくる。しばらくの間、自分がどこにいるのか思い出せずに不安になった。たっぷり10秒ほどのちに、ようやく記憶が蘇る。
 そうだ、わたしはソームウッド・タウンに来ていたんだっけ。ここはリシアンの子ども部屋で、夕べは遅くまで

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4.ゼルジーの想像力

 パルナンとゼルジーがソームウッド・タウンへやって来て、すでに数日が過ぎていた。
「お昼を食べ終わったら、また、森へ行くんでしょ?」クレイアが聞く。
 リシアンはスープを飲む手を止め、「ええ、もちろんっ!」と答えた。ゼルジーと桜の木のうろで空想ごっこをし、昼ご飯を食べに戻ったところだ。
「だったら、ウィスターさんところにちょっと寄ってもらえるかしら。クッキーをたくさん焼いたから、持っていて欲しいん

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5.雨続き

「今日も朝から雨ね……」ゼルジーは、リシアンのベッドでどっかりとあぐらをかきながらつぶやいた。
「もう3日も降り続けてるわ。いつになったら止むのかしら」向かい側にはリシアンが座り、うんざりしたような声を絞り出す。
「でも、わたし達には想像力があるわ。そりゃあ、桜の木のうろに行けないのは残念だけれど、空想はいつでもどこでだってできるもの」
「ほんとね、ゼル。あんたの言う通りだわ。今日はどんなことを空

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紙ヒコーキ、はるか宇宙を目指す

紙ヒコーキ、はるか宇宙を目指す

 アレルギー性鼻炎に苦しむわたしを見かねて、主治医が宇宙研究所を紹介してくれた。
「宇宙を知ると、この鼻炎が治るんですか?」わたしの頭の中はハテナマークでいっぱいだ。
「いや、そうじゃないんです」主治医は理由を説明する。「最新の天文学によってもたらされた情報によれば、遙か4.3光年の彼方、アルファ・ケンタウルスの3つ隣に、ベータ・カロチンという惑星が見つかったというんですな」
「なんだか、体によさ

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6.5つのルール

 ソームウッド・タウンに、久しぶりの晴れ間が広がった。ゼルジーとリシアンは朝食をすますと、走り出す勢いで「木もれ日の王国」へと向かおうとしていた。
「パル、あなたも来る?」まだテーブルに着いたままのパルナンに、ゼルジーはふと尋ねる。
「そこ、カブトムシはいるかい?」その様子から、この間見つけたというクヌギ林では大した収穫がなかったようだ。
「桜の木の蜜を舐めに、カナブンがたかってくるわ。それにいつ

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