作業着とヘルメットと指差し呼称
素材・化学系メーカーの研究員と言うと、高確率でイメージされる姿がコレだ。
・白衣
・メガネ
・試験管/ナスフラ/三角フラスコ
たった今、"メーカー 研究員"でググったら、上記に示す3種の神器(?)を身につけた人物の写真やイラストがボロボロ出てきた。
就職活動中の大学生・大学院生たち、企業の研究員を夢見る全ての人たちに伝えたい。
「そんなのイメージして会社入ったら絶望するぞ」
毎年春、絶望感に苛まれている新入社員を、"必ず複数人"見かける。
覚悟していても、現実を受け止めきれないといった様子だ。
だからこそ、今、この瞬間に、よく考えてほしい。
作業着に耐えられるか?
白衣メガネ試験管/ナスフラ/三角フラスコ
↓
作業着
ゴーグル
10L丸底フラスコ
まず、白衣ではなく、作業着だ。
最近流行りの"くすみカラー"。
やっと時代が追いついてきた。
次に、メガネではなく、ゴーグルだ。
メガネだと、隙間から溶剤が眼に入る危険性があるからだ。
眼に入れていい薬液は、目薬だけだ。
最後に、手のひらに乗るガラス器具ではなく、ドデカい丸底フラスコだ。
数gスケールなんて、収率数%なんて、いつ量産化できる?
ドカッと作って、見込みがあれば、実機で数kg〜数tでやってみよう。
因みに、私の職場は、一昔前まで作業着は男女別の色・デザインだった。
くすみカラーの男性作業着に対して、紫やピンク、デザインもさまざまな女性作業着。
なぜか?と尋ねたらこう返された。
「事業所の所長のご配慮(趣味)だよ。」
アンコンシャスバイアスが、当然のように存在している。
ヘルメットに耐えられるか?
建屋を一歩出たら、ヘルメットをかぶる。
事業所勤務なら当たり前の習慣だ。
うっかり忘れてしまうと、安全課に笛を吹かれ、大声で「ヘルメットォォ!」と叫ばれる。
交通違反で警察に呼び止められたかのように、血相を変えて平謝りする姿を目撃する。
ただし、昼休憩中は大型車やフォークリフトが稼働してないので、ノーヘルで大丈夫、というルールがある。
大きな声で指差し呼称に耐えられるか?
階段を降りて、廊下に差し掛かった時。
工場内の交差点に差し掛かった時。
立ち止まり、人差し指を出して左右に振りながら言う。
「左右安全確認、ヨシッ」
誰が見ているか分からない。
やらなければ、確認を怠っていると思われて注意され、目に余るようなら、上司に通報される。
毎朝整列してラジオ体操に耐えられるか?
工場に近ければ近いほど、決まった時間に、決まったことを、みんなで一斉にする習慣が根強い。
その代表格がラジオ体操だ。
フレックス制度で出勤時間は調整できるが、職場の習慣が朝礼前のラジオ体操だったらどうだろう。
職場が良くても、工場の人たちはよく見ている。
特に、新入社員のことは。
まとめ
これが良いとか、悪いとかいう議論はするつもりない。
社員の身体の安全を守るためだ。
けれども、知っておいてほしい。
受験を乗り越え、朝から晩まで講義を受け、レポートに追われ、研究室に配属されてからも大変な苦労をしてきたであろう、理系大学院生。
田舎の工場に配属され、1ヶ月前までの生活とは打って変わった春を迎えた新入社員のあの表情は、いたたまれないものがある。
宇宙兄弟というマンガをご存知だろうか。
メーカーの研究員から宇宙飛行士になった"真壁ケンジ"の、前職での様子を描いた場面が良い例だ。
それをリアルタイムで読んでいた頃、私はまだ学生だった。
まさか、それが、未来の自分の会社員生活そのものとは、全く想像がつかなかった。
事業所勤務の研究員とは、そんな感じだ。
以上
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