日本人にとって自然とはなにか。
タイトルからしてそそられます。
自然豊かとされる信州。
つい先日危機感煽るこんな声明が出されたばかり。
先の異常とも思える台風19号の事もあり、個人的にも信州人的にも”自然”という重大ワードについて考える機会は今後増え続けることと思われます。
そこで手に取った、本書。
これで内容が・・・だったらそれでハイ、おしまい。ですがナカナカいい内容でした。
「美しい自然の風景」と「あの人、自然でキレイ」の違い。
自分を自然の一部とするか、自然は自分とは別に見えるもの・・・とするか。
内側から見る自然、外側から見る自然。
なるほど、古来日本人にとっての自然の在り方が見えてきます。
またそれが何時ごろからいくつかの意味・角度を持つようになったのかも。歴史的な背景も踏まえその言葉の意味を解きほぐす。
自然とは何か?というよりは日本人にとってどれくらいの立ち位置が、自然との距離感が心地いいのか?・・・という提案の書でもある。
著者は、コメ農家(蔑称でなく”百姓”と本人は名乗ります。)として適切なバランスを模索していますね。
確かに農業って、すごい微妙なバランスの上で成り立っている。特に近代型農業は農薬の問題はじめ”自然破壊”と隣り合わせ。
そこから”自然”を語る・情報を発することに凄く意味があるように思います。
(本書で語られる自然という言葉に非常に幅があるので、あえてカッコで括っています。)
里山、という言葉がありますね。
つい最近までなかった言葉と思います。
元々あった山林と人間世界の境界線。
本来、田んぼも近い場所にありましたね。そこから発せられる声は、やはりいろんなことに気づかせてくれます。
何処に目を向ければ心地よい、適切なバランスで暮らしていけるのか?
そんなヒントのひとつと言える本、ですね。
ちなみに本書が収録されているちくまプリマー新書は、ヤングアダルトにとっての入門の書・・・という立ち位置。
クラフト・エヴィング商會によるおしゃれな装丁も特徴的です。
しかし入門書とは程遠い内容の充実度。深さ。
特に本書で取り上げらているテーマは若い人への入り口としてはあまりに深いように思えます。
が。
こんな提案が広く受け入れられるような世間であれば、この国も捨てたもんじゃないなんて思ったりしています。
なんて、先の件の発表も相まって。
災害への思いと自然の思いもまた、隣り合わせですからね。
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