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<コラム>ウグイス嬢が見たドミニカ野球旅行記ー草野球編ー

高校野球の指導者をしている夫が講演会を聞きに行き、家に帰ってくるなり「ドミニカに野球視察に行かないかと誘われた」と言い出した。

当時、「野球人口も減ったし、これからは群馬の学生野球も変えていかないと」と言う人も出始めていた頃だった。そのための視察といえば聞こえがいいが、元バックパッカーの私はこんな機会でもなければ、まだMLBも本場で見たことない私がドミニカの野球なんて自分で見に行くことははないだろう。ということで夫の視察に邪念たっぷりで同行することにした。

そうして2018年1月、ドミニカ 共和国に行ってきたのだ。元日に出発して飛行機に搭乗する際、折り鶴をCAの方にもらってワクワクした事を今も覚えている。3年経った今、記事を書くのにはいくつか理由はあるが、自分の旅行記の一つとして書くことにした。

最近ではレイズ・筒香選手のコメントなどの影響でドミニカ野球もクローズアップされてきているが、それでも日本の野球ファンにはまだまだ馴染みがないのが本当のところ。かといってweb記事でも取り上げてられているようなドミニカ野球と日本の野球の違いに私が触れてもおもしろくは無いので、この記事ではいち野球ファンとして、そして本業の野球場内アナウンサーという立場から見たドミニカ野球について、見てきたままに書いていく。

ドミニカ共和国てどんな国?

簡単にまとめると中南米、カリブ海に浮かぶ島にある国。人口は約1100万人。日本で例えると九州より少し大きいくらいの面積だ。日本から行くにはアメリカ、もしくはメキシコ経由で20時間ほどかかる。日本よりも小さな島国にも関わらず、メジャーリーガーの輩出人数は約600人近く。日本人メジャーリーガーの6倍の人数にもなり、メジャーリーグの外国出身選手の中で一番多い出身地がドミニカ 共和国だ。輩出人数の差についてフィジカル面を唱える人は多いが、実際に見に行ってそれだけではないという印象を受けた。

実況付きの草野球

到着してまず向かったのは首都サント・ドミンゴから40分ほど行ったところにあるビーチリゾート地ボカチカ市内のJuan alberto(フアン アルベルト)球場。ボカチカ市で「スポーツの父」と呼ばれているJuan alberto ozoriaの名前がついているが、規模は高校野球の予選でも使われないような小さい球場だ。

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球場では草野球の試合をしていた。若い人から少し年配でお腹の出たおじさんまで、幅広い年齢の人が楽しそうに声を出して野球をしている。ギャラリーはおそらく家族と近所の野球好きたち。観覧席は屋根付きで頑丈な金網で囲まれているのでファウルボールも心配なさそうだ。

そしてとってもにぎやか。なぜならバックネット裏でマイクを持って実況している人がいる! その実況が球場内に響きわたっているのだ。場内アナウンスと合わせてそのまま試合の状況を実況している。ヒットが出れば実況が大声で叫び、それを聞いてギャラリーの子供達や女性も歓声をあげている。「みんな楽しそう」 というのが最初の感想だった。草野球で実況が場内に流れている試合なんて見たことない。ありそうでない試合、でも日本にもあったら絶対楽しいと思った。

実況を聞きながら騒ぐ人でいっぱいの観客席を見て感じたドミニカの草野球は、プレイヤーだけでなく家族や見にきている近所のおじさんたちにも娯楽として、休日の過ごし方として、いや平日でも過ごし方の一つとしてきっと確立されているんだと感じた。

手作りマウンド! 野原で広々野球

続いての野球場は、なかなか刺激的な場所だった。

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道中あった牛たち

サントドミンゴの中心地から山道を車で数時間。車を降りて民家を抜けて牛が放牧されている道を歩いていくと山の中にぽっかりと空いたスペースが見えてくる。

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周りを川に囲まれたグラウンドはグラウンドというよりは野原、ただの野原だ! ここでメジャーリーガーを目指している10〜20代の青年達が日々練習をしている。

キャッチャーの防具はボロボロに使い込まれていて、ボールもほつれているものが数個だけ。グラウンドの奥は川が流れているので暴投すると水に濡れて使えなくなるし、探すのに時間がかかることも。ブルペンのマウンドは、毎回その時の感覚で土を盛るので、高さがいつも微妙に違うという。

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ブルペンのマウンドは練習前につくる

グラウンドのマウンドはピッチャープレートの位置を示すために角材が置かれているだけ。これには本当に驚いた。

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こんな環境の中練習していると思うと不遇なイメージを抱くが、選手達は楽しそうにアップのキャッチボールをはじめている。アップが済むとブルペンで投球を見せてくれたが、ピッチャーのほぼ全員が140km越えの投球をしていて、環境と選手の実力のギャップに驚いた。この野原グラウンドから日本のNPB球団で育成選手をしていた選手も出たのだという。

整った球場で練習する人もいれば、今ある環境でメジャーリーガーを夢見る人も……
短期間でいろいろな環境のグラウンドを見たが、どんな環境にいても選手の目標はメジャーリーグ。現在学生で野球をしていても、その先多くの選択肢がある日本との違いを感じた。

〜少年野球編に続く〜

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