M.Masako

森に還りたいし、仙女になりたい。

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    久しぶりに会う人に「何してるの?」とよく怪しまれるので、お仕事案件を掲載していこうと思います。

記事一覧

半年ぶりにnoteを書いた。

M.Masako
1年前

墓に生きる花

お盆のころになると、家族でお墓参りに出かけた。 父方のお墓は熊本の山鹿というところにある。車でむかう途中、目に入ってくるのは道に立つたくさんの灯籠。街路灯として…

M.Masako
1年前
1

太い幹があるということ

赤く美しい実をつけるセンリョウという木がある。正月飾りも使われ、縁起物としても親しまれている。 1月のはじめに生けて、いまもなおツヤツヤした赤い実が部屋を彩って…

M.Masako
2年前
3

2021年の記録

2021年は更新頻度が減ってしまった。来年はちょっとずつでも復活したい。

M.Masako
2年前
4

その日は、朝から1,000円が

その日は、朝から1,000円がずっと気になっていた。 1,000円のことばかり考えていた。こんなことは初めてで1,000円、1,000円、1,000円、1,000円欲しいとか、1,000円下さい…

M.Masako
2年前
7

見せない喜び

noteをはじめて3周年記念。 お祝いをしていただいて何だが、日記を書くようになってnoteの更新頻度が減ってしまった。毎日つづられる、原稿用紙1枚分くらいの日常は、パソ…

M.Masako
3年前
2

家族のLINEグループでめずらしく兄と弟が子供の写真を送り合っている。兄弟の中で、生まれて初めて肩身が狭いと思った。

M.Masako
3年前

モッコウバラ

いつの頃からか、庭先にモッコウバラを沢山見かけるようになった。 漢字で書くと「木香薔薇」。原産は中国。キク科植物の根っこを乾燥させた「木香」と香りが似ていること…

M.Masako
3年前
2

彼の人の居場所

彼の人を見て思う、彼の人の居場所を。 人にはそれぞれ似合う場所があるように思う。その人がその場所を望むか望まぬかは置いといたとして。 学生時代の同級生に変な男が…

M.Masako
3年前
3

綺麗なだけでは嫌なのです

最近、日記をつけ始めた。 今まで日記らしい日記をつけたことがない。夏休みの宿題も適当にまとめて書くタイプだったし、mixiの日記も頻繁に書いてはいたが、その日あった…

M.Masako
3年前
6

見知らぬ駅で

電車を一駅、乗り過ごした。 見慣れない駅に降り立つと、重い雲の下には嵐のあとの空があった。紫と黄と透明と青、それから橙。 色とりどりの空には、あたかも希望とか未…

M.Masako
3年前
3

2021.3.11

たまに強めの地震がくると体がこわばる。忘れているようで忘れていない。体はあの日のことを確かに覚えている。 10年前の今日、私は埼玉にいた。仕事で麦わら帽子をつくる…

M.Masako
3年前
5

花道

とつぜんあらわれた花道。 きっちりと等間隔に並べられた椿の列は、灰色の世界にそっと色を添える。 誰がどんな気持ちで並べたのかな。ステキな仕業。 わたしとあなたと…

M.Masako
3年前
3

空が白い日

胃がキリキリするし、頭も少し痛いし、寒い。 薄暗い部屋では、パソコンの画面だけが光っている。窓の方に目を向けると1、2、3、4、5、6、7、8個の屋根が見える。丘の上に…

M.Masako
3年前
4

旅の効用

旅に出た。とても久しぶりの旅に。場所は福島県の南会津。 雪深い南会津の山奥にひっそりとたたずむタンボ・ロッジ。そこで2泊3日、のんびりと過ごした。 寒さをまったく…

M.Masako
3年前
8

マルタ食堂

料理人の弟がめずらしく夢を語っていた。 「自分のお店を持ちたい。名前はマルタ食堂。」 お年寄りにも優しい健康的な食事を提供したい。父親が囲碁や将棋が好きなことも…

M.Masako
3年前
5

半年ぶりにnoteを書いた。

墓に生きる花

墓に生きる花

お盆のころになると、家族でお墓参りに出かけた。

父方のお墓は熊本の山鹿というところにある。車でむかう途中、目に入ってくるのは道に立つたくさんの灯籠。街路灯として夜の街をやさしく照らす。8月には山鹿灯籠まつりがあって、浴衣姿の女性たちが灯籠を頭にかぶり舞いおどる。

熊本の夏は焼けるように暑い。思春期にもなると自我も芽生え、家族と連れ立って行動することへの恥ずかしさや反抗心、面倒臭さもあったかもし

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太い幹があるということ

太い幹があるということ

赤く美しい実をつけるセンリョウという木がある。正月飾りも使われ、縁起物としても親しまれている。

1月のはじめに生けて、いまもなおツヤツヤした赤い実が部屋を彩ってくれている。しかし枝切りしたものは、瞬く間に枯れてしまった。

センリョウだけではない。他の植物だって同じだ。幹があるものは長生きし、枝だけになったものは短命だ。

枝を手でしならせる“ためる”という技法がある。ためることによって曲線がで

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2021年の記録

2021年の記録

2021年は更新頻度が減ってしまった。来年はちょっとずつでも復活したい。

その日は、朝から1,000円が

その日は、朝から1,000円が

その日は、朝から1,000円がずっと気になっていた。

1,000円のことばかり考えていた。こんなことは初めてで1,000円、1,000円、1,000円、1,000円欲しいとか、1,000円下さいとか、そんな馬鹿げたことをずっと考えていた。

さんぽの途中、金ピカに飾られたハデな自動販売機が忽然とあらわれた。「いったい何なんだ!?」そう思って近づいてみる。“1,000円ガチャ”と書いてあった。

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見せない喜び

見せない喜び

noteをはじめて3周年記念。

お祝いをしていただいて何だが、日記を書くようになってnoteの更新頻度が減ってしまった。毎日つづられる、原稿用紙1枚分くらいの日常は、パソコンの中でひっそりとしている。なんなら、こっそり小説も書いている。

撮影した日々の風景は、そのほとんどが特に出番もなく、スマートフォンの中で高解像度のまま眠っている。

今日、久しぶりに絵が描きたくなって、あえて利き手とは逆の

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家族のLINEグループでめずらしく兄と弟が子供の写真を送り合っている。兄弟の中で、生まれて初めて肩身が狭いと思った。

モッコウバラ

モッコウバラ

いつの頃からか、庭先にモッコウバラを沢山見かけるようになった。

漢字で書くと「木香薔薇」。原産は中国。キク科植物の根っこを乾燥させた「木香」と香りが似ていることから、その名前がついたと言われている。

卵色の花は、ふわふわと丸っこくてかわいい。モッコウバラの王冠で包み込まれたおうちは、どこかおとぎの国みたい。

青空に映えるモッコウバラは輝かしい。

夕日に溶ける寸刻にだけ、妖艶な表情を見せてく

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彼の人の居場所

彼の人の居場所

彼の人を見て思う、彼の人の居場所を。

人にはそれぞれ似合う場所があるように思う。その人がその場所を望むか望まぬかは置いといたとして。

学生時代の同級生に変な男がいた。図体は大きく、なんというかプロレスラーのそれのようだった。顔は妙に整っているが、変態感は隠しきれなかった。彼の生み出すものは狂気を孕んでいて、底知れぬ才能を感じていた。

ある日、八王子駅前の歩道橋でバッタリと出くわした。彼は地べ

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綺麗なだけでは嫌なのです

綺麗なだけでは嫌なのです

最近、日記をつけ始めた。

今まで日記らしい日記をつけたことがない。夏休みの宿題も適当にまとめて書くタイプだったし、mixiの日記も頻繁に書いてはいたが、その日あったことを書き留めていたわけではない。

日記は、なんてことない日々の記録であり、思うことでり、誰にも見せないセキララな心のうちである。もしかしたら読み返すことはないかもしれないけれど、自分の言葉を自分で抱きしめて、いたわるような、私には

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見知らぬ駅で

見知らぬ駅で

電車を一駅、乗り過ごした。

見慣れない駅に降り立つと、重い雲の下には嵐のあとの空があった。紫と黄と透明と青、それから橙。

色とりどりの空には、あたかも希望とか未来とか、そんなものがあるように思えた。

2021.3.11

2021.3.11

たまに強めの地震がくると体がこわばる。忘れているようで忘れていない。体はあの日のことを確かに覚えている。

10年前の今日、私は埼玉にいた。仕事で麦わら帽子をつくる工場に来ていて、打ち合わせ中に強い揺れに襲われた。私たちは急いで外に出ると、揺れはますます強くなる。ぐらぐらと揺れるアスファルト。まるで豆腐の上に立っているようだった。グワングワンとしなる電信柱、危険を知らせる女性のアナウンスがスピーカ

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花道

花道

とつぜんあらわれた花道。

きっちりと等間隔に並べられた椿の列は、灰色の世界にそっと色を添える。

誰がどんな気持ちで並べたのかな。ステキな仕業。

わたしとあなたと、あの子とあの子と、あの人とあの人。知らない誰かと知ってる誰もが、広がる間隔。

会わなくても、なんとなく画面越しでやり過ごせるようになった日常。
この先どうなるのかな。

空が白い日

空が白い日

胃がキリキリするし、頭も少し痛いし、寒い。

薄暗い部屋では、パソコンの画面だけが光っている。窓の方に目を向けると1、2、3、4、5、6、7、8個の屋根が見える。丘の上に立つ木々はいつの間にか緑色に茂っていて、空は白い。

今、何月だっけ?と、思う。3月だ。

時計の針を見ると17時を指していた。空が白い日は、ずっと白いままなので、夕方になっても気がつかない。

加湿器からモクモクと煙が湧き上がっ

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旅の効用

旅の効用

旅に出た。とても久しぶりの旅に。場所は福島県の南会津。

雪深い南会津の山奥にひっそりとたたずむタンボ・ロッジ。そこで2泊3日、のんびりと過ごした。

寒さをまったく感じさせない重厚なつくりのタンボ・ロッジは、なんとオーナーご夫婦の手作りと聞いて驚きだ。2年がかりで完成させ、かれこれ25年が経つという。建物だけではない、テーブルやベッドなどの家具までもが手作りだという。

ご飯もぜんぶ手作り。動物

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マルタ食堂

マルタ食堂

料理人の弟がめずらしく夢を語っていた。

「自分のお店を持ちたい。名前はマルタ食堂。」

お年寄りにも優しい健康的な食事を提供したい。父親が囲碁や将棋が好きなこともあって、遊べるスペースも作りたい。そう言っていた。

そのために、居酒屋やホテルのレストランなどで掛け持ちをして働いていたし、店長もやっていた。

このご時世、飲食業界はとても大変だろう。近所の多くのご飯屋さんでは、寒空の下、店員さんが

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