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鯨 統一郎『月に吠えろ! ・萩原朔太郎の事件簿・』

先日、宮内悠介さんが明治時代に耽美主義の芸術家が集まった「パンの会」をミステリーに仕上げた『かくして彼女は宴で語る』(幻冬舎刊)を上梓された。
それを少し読んだところで猛烈に読みたくなったのが、鯨統一郎『月に吠えろ!・萩原朔太郎の事件簿・』である。
教科書にも載る実在した近代の詩人 萩原朔太郎がマンドリンを弾きながら不可能事件から詩情を見出だして解決するという探偵役、その助手役には共に“人魚詩人社”を結した同士である室生犀星に託される七編の短編集。
同時代を生きた実在の文士たちが登場するのは『かくして彼女は宴で語る』も同じだが、「パンの会」のメンバーでもある北原白秋がこちらでも人魚詩人社の面々の師匠格として登場することで、どこかリンクしているような面白味がある。
実際に萩原朔太郎は推理小説の愛好家であり、いずれ誰かがこういう作品を書いてもおかしくないだろうが、きちんとベースをしっかりさせて時の文壇模様と共に描かれるフィクションとしてはとても好感の持てる作品で、まさか最後にあの人物が登場とは…畏れ入った。



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