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ワーク・ライフ・バランス ~ 好循環を生み出すテクニック

今日は「勤労感謝の日」です。🇯🇵
 
元々は、収穫に感謝し豊作を願う宮中行事「新嘗祭(にいなめさい)」という祭日だったものが、戦後に「勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう」ことを趣旨とした「勤労感謝の日」に改められました。
 
1 最終章でお伝えしたいこと
今回は、そんな勤労感謝の日にふさわしいテーマであり、「働くこと」をテーマにしたシリーズの最終章です。
 
第2部では、働くことの意義は「生きている実感を味わうこと」にあると述べました。
 
生きている実感とは「充実感」のことであり、充実感は「自己実現」によって得られるというのが私の考え方です。
 
ワークとライフのバランスが図られ、両方が充実して、相互に良い影響を及ぼしあってこそ「好循環」は生み出せる。
 
いわゆる「公私ともに乗ってる状態」をどのように創り上げていくか。ワーク・ライフ・バランスの好循環を生み出す具体的なテクニックについて述べていきたいと思います。
 
 「好循環」の組み立て方
(1) 波形を整える

ここに、ひとつの概念図をお示しします。

Created by ISSA

図の上側は、公(国家・社会・組織)のために費やす「ワーク」の時間であり、下側は私(自分自身や家族・友人、地域等)のために費やす「ライフ」の時間です。
 
多くの人は、1日24時間この波を行き来しながら暮らしていると思います。
 
好循環とは、この波動のリズムとバランス整え、それぞれの波の頂点、つまり「充実度」を最大限に高めることを意味します。
 
緑色のエリアは「コアタイム」、つまり一日の中でもかなり重要かつ動かすことの難しい時間帯を示しています。
 
波形を整えるには、以下の点に留意する必要があります。
① コアタイムを決める
② 仕事終わりの時間を決める
③ 帰宅後は自分の事を後回しにする
④ 就寝前に一日をリセットする時間を持つ
 
これらを押さえた上で、他の活動を割り当てれば、好循環の効果が高まります()。
 
(2) ニュージーランド時間で暮らす?
更に、標準的なライフタイムで暮らしている方は、ワークとライフの開始・終了時間を、可能な限り数時間ばかり早めの方向にずらしてみましょう()。

そうすることで、
● 出勤前に最新ニュースをチェックできる
● 通勤ラッシュを回避できる
● 早めの出勤で仕事に先行性が生まれる
(アタマが他者よりも先を行く)
● ランチタイムの行列を回避できる
 
などのメリットが加わり、結果として時間的猶予、すなわち心の余裕が生まれて好循環の効果が更に高まります。
 
「早起きが苦手」という方は、このように考えてみてください。
 
「私は早起きするのではなく、ニュージーランド時間で暮らすのだ」と。

ニュージーランドを日本の時差

一旦、体内時計を合わせてしまえば、どうってことありませんから。
 
ワーク・ライフ・バランスの理想形が整ったところで、ここからは実際の場面で物事を円滑に進めるためのテクニックについて述べていきます。
 
 ワーク(仕事)における留意事項
(1) 他人に迷惑をかけないこと

仕事では、他人に迷惑をかけないこと、自分の面倒は自分でみることが鉄則です。先ずは「他人の好意に甘えず、自分で出来る限りを尽くす」、それでも、困った時には人を頼るように努めましょう。
 
(2) タイム・マネジメント能力を身に着ける
他人に迷惑をかける原因のひとつに、時間を守れないことが挙げられます。あらゆる仕事には「期限」がつきものですので、「この仕事は、何が何でも時間内に終わらせる」という熱意が必要になります。

(3) 先行性やゆとりを持つ
とはいえ、時間に追われるというのはかなりのストレスになります。「時間」と上手く付き合うためには、先行性やゆとりある気持ちが不可欠です。例えば、重要なプレゼンがある場合は、早め早めにそのことに目を向け、余裕を持って必要な準備を終わらせる必要があります。
 
(4) 目的意識を持つ
先行性やゆとりを持って取り組んでも、目的をはき違えるとトンチンカンな結果になり兼ねません。ですので、常に「何のためにこれをやるのか」と問い続け、目的を見失わないことが大事です。
 
加えて、仕事を与える側は、あまり細かいところまで指示しません。
ですから、
● その仕事をやることになった経緯
完了期限と具体的なアウトプット
問題点改善策
このような思考回路も必要になります。
 
(5) 段取り名人になる
ただ、目的意識が明確でも、やみくもに働くと余計な仕事を増やすばかりです。最小限の時間で最大限の成果を出すことを念頭に、最も合理的な段取りを考えるようにしましょう(段取り名人は、部下から「頼もしい」という信頼感を集め易いです)。
 
(6) イメージアップを怠らない
プレゼンを行うときは、できるだけ、その現場に赴いてリハーサルをやった方がいいと思います。その際、照明や音響なども含めて細かくチェックしてください。現場に行けないときでも、類似の会議室等でイメージアップするようにして下さい。
 
(7) プラスアルファの仕事に心がける
「最後の詰めを怠らない」これがプロの仕事です。ただ言われたことで終わるのではなく、その仕事を命じた人に、「私の意を汲んで、ここまでやってくれたんだ」と思わせるような質の高い仕事を心がけましょう。
 
(8) 自分の立ち位置を意識する
自分はどこを向いて仕事をするのか、ということです(直属の上司とか、仲間とか、お客様とか、現場で働く人たちとか)。
 
また、報告書や資料を作ったりプレゼンをしたりする場合は、受け手が、どのような立場の人で、どの程度の予備知識を持った人かを考えておかなければなりません(既存の資料を使う場合も、相手の立場に合うように「テーラーメイド」する工夫が必要)。

4 ライフ(私生活)における留意事項
(1) 自分のことは後回し
冒頭でもふれましたが、仕事が終わってからも、自分のことは後回しにしましょう。優先順位というのは極めて重要で、自分を後回しにするだけで周囲の評価は見違えるほど変わってきます。
 
特に若い頃は、家族や地域のために奉仕する時間は「ワーク」の延長であるかのような感覚になるかもしれませんが、頼りにされる喜びを知れば、充実度アップにつながります(会社・組織の側から見ると、あくまでも「ライフ」の一部とみなされるので、混同しないように注意が必要)。
 
(2) 知・心・技・体・徳の要素を取り込む
少しずつでいいから、これらの要素をバランスよく取り込み、日々、実践することが好循環へのカギとなります。
 
例えば、日々のニュースを英文で音読すれば、「知」「技」が一石三鳥で身につけることができます。

また、運動することで「体」を若々しく保つことができ、その際、神社などに立ち寄れば「心」の美しさを取り戻すことが出来ます。

また、地域のボランティアや自治会の活動等に参加すると、「徳」を高めることに繋がります。
 
(3) 今を生きる
未来を見過ぎても、過去を振り返り過ぎても、生きることが辛くなるばかりです。
 
「ただ、今を精一杯生きる」
人に出来る事はそれしかありません。
 
心配事は色々あるでしょうが、大概のことは、しばらく放っておいても大丈夫です。
 
大まかに方向性だけを考えておいて「分岐点に差し掛かった時は全力で考え抜いて右か左かを決断する」それで良いのです。
 
(4) 寝る前に必ず自分だけの時間を作る
冒頭でもふれたとおり、一日の終わりは必ず心を整える時間が必要です。グレート・キャプテンと呼ばれたJALの小林宏之氏は「一晩寝たら、明日に持ち越さないことが大事だ」と説いています。
 
一日の終わりの時間を持ち、日々、リセットすること。これも、好循環を実現するための大事な要素です。

リセット時間確保のため、就寝時間は多少変動があってもいいと思いますが、起きる時間は毎日一定になるように努めましょう。
 
起きる時間が変動すると、「時差ボケ」を起こしやすくなり、パフォーマンスが低下して好循環に悪い影響を及ぼすからです。
 
(5) 日々、少しずつというのが真の力になる
ワーク・ライフ・バランスは永遠の課題です。せっかく築いたバランスは、体調不良、心的ストレス、突発的な仕事、転勤、身内の不幸などの外カによって、いとも簡単に崩されてしまいます。
 
むしろ、崩されるのは当たり前と考え「崩されては積み上げることの繰り返し」そのような柔軟な心持が必要だと思います。
 
オール・オア・ナッシングは失敗の元です。長期戦と構え、崩れても、遅れを取り戻そうと頑張る必要は全くありませんので。

Photo by ISSA

おわりに
皆さんは1日が24時間で「十分足りている」と思いますか? それとも「全然足りていない」と思いますか?
 
私自身は、若い頃は前者で、歳を重ねるごとに後者になりました。
 
振り返れば、過去にバランスを大きく崩したことで不整脈、帯状疱疹、坐骨神経痛などの疾患にみまわれ、周囲に迷惑をかけたことが何度かあって「安定的に質の高い成果を出し続けるにはどうしたら良いか」という問いが、いつも身近にありました。
 
注意すべきは、このような挫折をした人に対してありがちな「あなた真面目過ぎるから、もっと手抜きしたら?」といったアドバイスです。
 
この手のアドバイスは、高い理想を追求している人には少々失礼な物言いであり、本当にその人を理解しその人の為になっているとは思えません。
 
挫折の本質的な問題は力加減ではなく、負荷のアンバランスや個人の充実感にあります。挫折を味わった人が、安易なアドバイスを真に受けて力を出し惜しみすると、かえってその人の心は病んでしまうと思うのです。
 
いずれにせよ、そのような問いと向き合い、日々、格闘する中でパフォーマンスの最大発揮(=自己実現の追求)ということに関心が高まり、自ずと時間との付き合い方が上手になっていきました。
 
その結果、いつの間にか「1日24時間では全然足りない」という感覚になってしまったのですが、それは裏を返せば「今を生きる」という感覚でもあって、「余計な煩悩がつけ入るスキがない」という点では、こちらの方が優れているのではないかと思います。

ワーク・ライフ・バランスを考えることは、人生そのものを考えることかもしれません。
 
今回、お伝えした内容はあくまでも一例であり、人によって波の形やバランスは様々です。しかも、ライフ・ステージに応じて変化するものであり、加えて、時代の波にも影響されます。
 
ただ、先行き不透明な時代だからこそ、会社・組織の上層部も、個人個人も、ワーク・ライフ・バランスを決して遊びや怠惰の口実などと捉えることなく、それぞれが真剣に考えないといけないと思います。
 
「勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう」この日に、働くことの意義と、バランスの取れたより良い人生を見つめ直す。本稿がその一助となれば幸いに思います。
 
では、今日も良い一日を!🍀