1.誰の成長を加速させるべきか?
誰もがリーダーになれるわけでも、なりたがるわけでもない。即戦力になるリーダーを多く作り出すには、加速化を集中的に行う個人やグループを特定しなければならない。誰の能力開発をいつ加速させるか、難しい選択が求められる。能力開発を選抜的に行い一部の人を除外すると組織文化に傷がつくと考え、出発点で苦心する組織もあるが、そういった考え方ではうまくいかない。人材開発の加速化は組織文化への投資ではなくビジネスへの投資だからである。
もちろん人材開発の加速化は組織文化を大きく活性化させるが、それが一番の目的ではない。先にも述べたように、即戦力になるリーダーを増やすことは、不適切な、あるいは不十分なリーダーシップの下で弱体化している組織にとって、最も緊急度が高い。もしも新しいシステムが組織文化を壊すかもしれないという心配があるのなら、組織のメンバーを納得させられる明確な論拠と、強力なコミュニケーションプランを用意し、対応すればよいのだ。本章ではそのような論拠の作り方を、第3章では開発を加速化する人材の選び方を説明する。その一方で、人材開発の加速化がビジネスに必要不可欠であるというコンセンサスを得た上で、次のようないくつかの加速化のニーズに着手することができる。
2.何人の成長を加速させられるか
アクセラレーション・プールやリーダーグループの規模は、そのメンバーの開発に使えるリソースの規模に比例するべきだが、だからといって人材開発の加速化が一部の選ばれた人のためだけのものというわけではない。以前、ある専門サービス企業の人事担当リーダーが、前例のないことを成し遂げたと興奮した様子でわれわれのもとに電話をかけてきたことがある。経営幹部が集まって鍵となる人材のレビューを行い、誰がハイポテンシャル・リーダーであるかについて合意したというのだ。7人の経営幹部と2人の人事担当リーダーが、特別な開発プログラムを受ける250人を特定し、全員に通知を送った。確かにそれは大きな前進ではあった。しかし、経営陣はその先の計画を立てず、その開発プログラムに関わることすらしなかったという。
7人の経営幹部は250人のリーダー全員に即戦力をつけることはできないし、企業もそれを必要とはしていなかった。その後の3年から5年のうちに、25ほどのポジションに就く幹部が必要だった。役割を担う準備ができていると思われたのはほんの数人だったので、あと20ほどの空席を埋める必要があった。そこで、250人をハイポテンシャル人材(およそ40人)とそれ以外とに分けた。他の経営陣も7人に協力して40人の開発の加速を支援し、残りの210人のリーダーにはグループ単位での学習プログラムに参加してもらった。250人全員に能力開発計画が与えられたが、ハイポテンシャル人材として特定された40人には他と比べてはるかに直接的な重点開発が行われた。彼らの開発にはより高い目標を設定し、主要な役職に必要な能力を身につけることを目指した。やがて彼らが昇進してプールから出ていくと、残りの210人から次々と開発プロセスに補充されていった。
開発を加速させる人数については、特に決まった数字や公式があるわけではない。組織におけるリーダーシップのギャップの規模と、それを埋めるために投資しようとしているリソースの規模によって決まる(本章で、ギャップの数量化について述べる)。しかし、リーダーに即戦力をつけるために重要なのは、ただ能力開発計画を確保することだけではない。鍵となるのは、リソースと加速化のニーズの両方を分析して、埋めたいギャップに基づいてプールの規模と階層数を決めることだ。
3.人材開発の加速化:誰が何に対して責任を持つか
われわれはよく、「自分の能力開発に責任を持たなければならない」とか「つまるところ、成長は個人にかかっているのだ」といった言葉を耳にする。能力開発されている本人がその気にならなければ、たいした成果があがらないのは確かだ。しかし、成長をすべて本人に任せていたら、加速化は実現できない。われわれの定義を繰り返すが、人材開発の加速化は、成長を速く実現させるための組織的な取り組みである。コンセプトは簡単だが、人材開発の加速化には、然るべきときに、然るべきリーダーが、然るべき成長をできるようにするための協調的な取り組みが欠かせない。つまり、責任が共有されるのだ。最高経営幹部、人事部門、リーダー本人、そして図1.1に挙げられる主要な人材のすべてが、共に人材開発の加速化に関わらなければならない。
4.人材開発の加速化の信条(Credo)
人材開発の加速化に関わる際は、目的意識を共有し、予想される結果を理解しておくことが大切だ。そうすることで、コミュニケーションが明確になり、混乱や意見の相違なく進めることができるだろう。
下記は「人材開発の加速化の信条(Credo)」に、最高経営幹部が共有すべき最も基本的な前提をまとめてある。では、なぜ信条が必要なのか?それは、リーダーの成長に関する最も重要で基本的な信念なのに、経営陣が共有していないものもあり、そういった考え方の違いがシステムの失敗につながる場合があるためだ。基本を洗い出して確認することがいっそう重要になる。人材開発の加速化の信条は、経営陣に、人材開発の加速化は可能であり、重要であり、有益であり、彼らの責任であることを改めて認識させることができるだろう。こうして出発点がひとつにまとまることで、明確なコミュニケーションが可能となり、公平感が保証され、進歩が継統し、最終的には学習と成長という健全な文化が育まれるのだ。
われわれ最高経営幹部は、人材開発の加速化について以下のように考えている。
5.おすすめ人材アセスメントソリューション
①コンサルティングソリューション
②オンラインシミュレーションアセスメント&アセスメントシステム
③オンライントレーニング&ディベロップメント
6.DDIとは
DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。
◆DDI社の4つの専門分野
DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。
7.会社概要
会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円 (令和 2年12月31日)
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント