日本企業のリーダーシップの見通しは「停滞」
1.日本企業におけるリーダーシップの現状について
2009年、2011年そして2014年に実施した調査項目「リーダーの質」に関する結果では、グローバル全体では、リーダーの質が高いと同答したリーダー自身は38%から40%と、評価はわずかですが上がっています。ただし、人事/人材開発担当者の評価は25%にすぎず、2011年の調査結果から変わっていません。
一方、日本の回答結果は、リーダー自身の回答は、わずか6%で、2014年は2011年よりも少し高くなってはいますが、微増であり絶対値も相変わらず低いと極めて厳しい現状です。人事/人材開発担当者の評価は厳しく、2011年の結果から変わらず2%と、さらに低い結果となっています。このデータから、日本のリーダーは、グローバルと比べて、自信喪失に陥っていることは明確です(図表7)。
重要ポジションに就く準備ができているリーダーの準備態勢(準備度)の見通しについて調査するために、将来の重要ポジションの中で、即戦力になるリーダー(リーダーの準備度)を人事に尋ねています。まず、グローバル全体の状況ですが、2011年調査では、18%のリーダーが「将来の準備ができている」と回答しました。決して高い数字ではありませんでしたが、2014年調査では、さらに低下して、15%という結果でした。日本の状況は、2011年のデータでは、わずか9%で、グローバル全体の半分でした。2014年は、さらに下がり、日本はわずか6%でした。2011年、2014作ともに、即戦力になるリーダーは、1ケタ台であり、しかも低下しています(図表8)。
この調査結果から、日本企業のリーダーシップ・パイプラインはグローバルと比べて脆弱であることが分かります。このままでは、日本企業の競争力はさらに落ちていってしまいます。
リーダーシップ開発という観点からは、時代とビジネスの変化に対して、新しい人材施策を本気で実行してこなかった、あるいは、リーダーシップ開発のスピードがとても遅いという洞察が得られます。
図表8のデータからも分かるように、日本のリーダーは、将来に向けてビジネスを成長させていくために必要な能力を備えていないということです。グローバル全体でもわずか15%ですから、ビジネス環境の変化が激しいVUCAの時代においては、世界中の企業がリーダー人材についての課題を抱えています。しかし、その中でも日本は特に大きな課題を抱えていることが、データから実証されています。
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2.VUCAの時代を勝ち抜けない
多国籍企業のリーダーは、国内企業のリーダーに比べて、VUCAの影響を受けやすい環境に置かれています。GLFによると、グローバル全体で、多国籍企業は過去3年間で国内企業の2.5倍のスピードで成長し、積極的なグローバル展開を計画している割合は国内企業の8倍にのぼります。
時代背景を踏まえ、2014年のGLF調査では、「VUCA時代の課題への準備」について、その年のハイライトとして取り上げました。世界の1528名の人事/人材開発担当者に対して、自社のリーダーに、次に示したVUCAの課題(変動性、不確実性、複雑性、暖眛性)に対応する能力があると思うかを尋ねています。
自社のリーダーが、これらの課題に対応する能力が備わっていないと回答した人事/人材開発担当者は、グローバル全体では、変動性40%、不確実性32%、複雑性36%、暖昧性31%でした。四つの課題のいずれについても、約3分の1以上の人事/人材開発担当者が、「自社のリーダーには、対応する能力がない」という認識を持っています。
一方、日本の結果は、変動性60%、不確実性53%、複雑性62%、暖昧性51%です(図表9)。人事の目から見て、四つの課題のいずれについても、自社のリーダーには「対応する能力がない」という回答が半数を超えています。日本企業のリーダーは、経営環境に適応するVUCA対応能力が、グローバルと比較して、低いということです。
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日本の50%以上のリーダーは、戦い方が日々、変わっていくビジネス環境の中で、どのようにリーダーシップを発揮し、ビジネスを進めなくてはならないか、そのスキルを有していません。
これまでの人材育成、リーダーシップ開発のあり方そのものを見直すことが、日本企業にとっては、待ったなしの段階にきています。
これらの結果から、VUCAに対応するために強化しなくてはならないリーダーシップスキルは、以下の四つです。
図表7で述べたように、GLFで、自社のリーダーの質が高いと回答した人事/人材開発担当者の割合は、グローバル全体でもわずか25%。日本企業の人事/人材開発担当者に至っては、たった2%という極めて厳しい状況です。この結果は前回の2011年調査から変化がなく、日本のリーダーの質に向上は見られません。
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3.リーダーの準備度のスピードが上がらない
近年、日本中グローバルで述べれば、世界中の組織がリーダーの育成に多額の投資をしています。多くの企業が、「これまで経験したことのないビジネス上の課題に直面し、過去の成功パターンだけでは成果が出せない」「経営戦略を実行し、結果に結びつけることができるリーダーの不足」という課題など、「リーダー不足による企業の将来への危機感」を感じているからでしょう。
実際、リーダー人材の育成を目指し、世界中で年間推定億ドルもの資金が費やされていると言われています。それだけの資金がリーダーの能力開発に投資されているにもかかわらず、リーダーの質は良くならず、即戦力になるリーダーも増えていません。ある大手多国籍企業の人事担当役員は、「リーダーシップ開発に長年投資しているが、現場での成果が見えない。リーダーシップ開発は、実施してもしなくても同じかもしれない」と弱音を吐いたことがありました。
日本の会社は、人材育成に熱心な企業が多いと感じます。しかし、今日のの時代にリーダーが成果を出すために、日本企業は、現在の能力開発プログラムの抜本的な改革に、本腰を入れて取り組む必要があります。
本調査でも、自社のリーダーの能力開発プログラムの質を「高い・非常に高い」と回答したリーダーは、わずかでした。日本企業だけに絞った場合、さらに低く、わずかという結果になりました。同じことを繰り返している限りは、変化は起こりません。
調査結果から、リーダーのための「能力開発プログラムの質」は、「リーダーの質」と強く相関することが分かっています。
リーダーの成功に不可欠なリーダーシップスキルに特化した能力開発プログラムへ大きく変えるタイミングを逃さないでください。社内だけに目を向けず、アウトサイドインで自社の課題を認識します。特に重要なリーダーシップスキルは、戦略実行に役立つスキルです。これまでのやり方を本気で変える覚悟と、具体的な施策の立案・タイミングを逃さない実行力が問われます。
4.リーダーの輩出は待ったなし
グローバル化がさらに加速する中、日本企業が成長を促進し、生産性、利益率、市場占有率を上げ、世界でその存在価値を出していくためには、世界で戦えるリーダーを輩出することが求められています。グローバルリーダーに求められるスキルや経験は、国内人材の育成とは大きく異なります。この違いを踏まえた人材職略・人材施策を策定しなければ、高い投資効果を生み出すことは難しいでしょう。
リーダーの能力開発の成功には、トップのコミットメントが何よりも重要です。経営陣がビジネスで勝つためには「リーダーが何よりも重要」という、強い思いを抱きリーダー人材育成を経営の優先課題として、自らの時間とエネルギーを投入しているかということです。リーダー本人は、将来のポジションを獲ることへの強い意志を持っていることが重要です。高いポジションに就くということは、権限や責任の範囲が広がり、ビジネスの規模も大きくなるということです。
大きな挑戦があっても必ず結果を出したいというリーダーとしての意志と情熱があるということが大前提です。ですから、ポジションを獲れる可能性のある人材の選抜誰をリーダーまたはリーダー候補にするのか、後継者育成経営人材のプールと育成は、能力開発と同様に、重要なカギを握っています。
リーダーは自然発生的に生まれてくるのではなく、育てるものです。リーダーシップは効果的に開発することができるという考え方が前提です。「優れた能力開発」はリーダーシップに良い影響をおよぼします。
5.おすすめ人材アセスメントソリューション
6.グローバルポジションを獲りにいく
グローバル企業において、日本人は優秀な部下にはなれるが、グローバルポジションはとれないという事態が起きつつある。外国人、とりわけアジアの優秀なリーダーたちが、日系企業の重要ポジションを占め始めている。このままでは、日本人はグローバルはおろか、国内でも重要なポジションをとれないことが危惧される。
日本企業では、なぜリーダーシップ開発が停滞しているのか。グローバルポジションをとれるリーダー人材は、いかにして輩出されるのか――。
日本人のリーダーがグローバルで戦うために世界基準で獲得すべきリーダーシップスキル、及びリーダーシップ開発成功の要諦、人事が起こすべき変革、経営のコミットについて、具体的事例とリーダーシップに関するグローバル・データを織り交ぜながら解き明かす。
7.会社概要:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント