見出し画像

第5章<成長する>最高経営幹部に有効なコンピテンシー開発「付録5.4」

1.経営幹部コンピテンシー開発する方法とは

最高経営幹部の多くは、下の階層と同じ様にコンピテンシー開発のニーズを持っている。そして、ここですでに取り上げた学習方法は、彼らにも有効である。だが、最高経営幹部に求められる役割は独自のものなので、公式のコンピテンシー開発プログラムでは、内容をカスタマイズしなければ、すぐに適用はできない。


そのため、最高経営幹部のほとんどはエグゼクティブ・コーチに、公式のプログラムから自分に合うものをカスタマイズしてもらいながらスキル開発課題に取り組む。そういう意味で、最高経営幹部のスキル開発は、個人向けのコンピテンシー・トレーニングコースのようなものである。対象となるコンピテンシーや重点を置くキーアクションはどちらも成長のために有益であるが、学習は幹部のニーズに合わせ、リアルタイムの仕事と一体化して適用される。

2.最高経営幹部にとってのインタアクション・スキルの重要性

特にコンピテンシーに関して、インタアクション・スキル(第2章)は非常に重要な役割を果たす。最高経営幹部は組織と世間から高い水準を求められるので、基本的な部分で過ちを犯せない。このため人は組織の階段を上れば上るほど、インタアクション・スキルを効果的に適用する必要性が増す。さらに、高い階層では意思決定のリスクとストレスが多くなり、性格の阻害要因が弊害をもたらす可能性が高くなるため、一部の基本原則はさらに重要度が増す。阻害要因の影響は、適切な基本原則を使うことで軽減できる

3.最高経営幹部のためのコンピテンシー開発プロセス

世界的なエネルギー関連会社が危機に直面した。世界的な不況といくつか続いたビジネス上の失敗により、事業面でも組織文化面でも困難な状況に陥っていた。外からも中からも厳しい目が注がれた。業績は下がり、経営陣は何とか立て直そうと必死になっていた。納期は守られず、コストは上昇し、業績目標は期待に遠く及ばなかった。

そこで、CEOと人事担当の上級副社長は、「戦略突施の推進」のコンピテンシーを他と切り離し、まず最高経営幹部を対象に能力開発を開始した。人材開発の加速化が早急に必要だった。このプロセスの最初の目的は最高経営幹部一人ひとりに対して、1対1のコーチング(トレーニング)を行って、大至急、戦略実施を強化することだった。紙面の都合上、ここではコンピテンシー開発の詳細だけを説明する。

事前面談:プロジェクトの設定、計画立案、関係者の支援の取りつけの後、エグゼクティブ・コーチが、最高経営幹部一人ひとりと個人面談を行った。その目的は、2つあった。①チームが直面している問題や課題を診断し理解することと、②個別コーチングのプロセスと、「戦略実施の推進」のコンピテンシーを確認することである。面談で、経営幹部は戦略実施の推進に関連するキーアクションへの洞察を得た。そしてコーチは、チームメンバーの個人的なニーズと職務の課題に関する情報を集めた。

アセスメント:経営幹部は、最高経営幹部階層に求められる戦略実施の推進能力に重点を置くようカスタマイズされたアクセラレーション・センターに参加した。また、多面(360度)診断、性格診断、多面(360度)インタビューも組み入れて、参加者が互いに洞察を与えられるようにした。

フィードバックと最初のコーチング:次に、参加者はDDIのエグゼクティブ・コーチングのプロセスに取り組んだ。このプロセスは、まずはアクセラレーション・センターのフィードバックから始まり、続いてビジネス、職務、それぞれが直面している課題を、特に戦略実施の推進という観点で次から次へと見ていく。コーチの支援やアクセラレーション・センターのフィードバックの行動に関する情報を利用しながら、それぞれが自身の戦略実施のためのスキル強化を目的とした能力開発計画案を作った。計画案は他の主要な関係者と共有されて、レビューを受けた。もちろん参加者たちはそれぞれ、自分が開発を必要とするキーアクションに重点を置いた。

チーム学習:最初のフィードバックとコーチングに続いて、参加者は世界クラスの戦略実施の原理を学ぶ2時間のトレーニングイベントに参加した。トップのエグゼクティブ・コーチ陣がインストラクターを務めるこのイベントは、組織の状況と事業に合わせてカスタマイズされたものだったが、一方で、戦略実施の推進に関連するキーアクションと、現在のビジネス状況との関連について理解することに重点を置いていた。幹部たちはアクセラレーション・センターの結果を手元に持ち、アクセラレーション・センターで自分が観察したことと学びを共有して、学んだことを基に能力開発計画案に改良を加えた。

グループでの能力開発の報告:公式学習が終わると、参加者は再び集まって、個々の能力開発の目標を見直し、改良した。グループのアセスメント傾向とデータを見直し(ここでも戦略突施の推進に特に着目しつつ)、共通の能力開発の機会について話し合い、個人の能力開発目標を皆に伝え、その取り組みがビジネスにどんな影響――特に戦略実施の強化において――を与えると思うか、フィードバックし合った。能力開発計画は、開発すべきキーアクションがどのように適用されているかを中心に精査された。そして、全員がチームの他のメンバーの前で新しいスキルをどのように適用するかを示した。

個人の能力開発の報告:コーチング・プロセス開始から6週間ほど経つと、参加者はCEOに個人的に報告を行い、能力開発の進捗状況を見直し、自身の行動が重要な取り組みにどのような影響を与えているかについて話し合った。それぞれのコーチも立ち合い、参加者がスキルの強化を継続して今後もさらに難しくなる課題に適用できるよう、能力開発計画の改訂と強化が行われた。最新報告は、人事の上級副社長にも定期的に伝えられた。

3カ月のチェックポイント:3カ月後のチェックポイント時点で、全参加者が能力開発計画の少なくとも最初の行動は起こしていた。そして大半が、初期的な成長を遂げていた。このチェックポイントで、参加者全員が今後のコーチの支援の有無を問わず、能力開発を続けることを(CEOと人事の上級副社長からのインプットとともに)勧められた。コーチングを続けるか否かは、開発計画の性質、必要な支援の度合い、将来コーチングを必要とする課題や機会に出合うと予想されるかどうかによって決められた。多くがコーチングの継続を選んだが、一人で取り組むほうを選んだ参加者もいた。コーチングの有無にかかわらず、CEOおよび人事副社長への報告は定期的に続けられた。

結果:参加者全員が、戦略実施の推進の成長を行動による証拠で示した。戦略実施能力は大きく強化され、その結果、重要な効率指標、コスト削減、利益増大の進捗度合いが飛躍的に改善した。株価や、災害発生時の対応に対する世間の評価にも良い影響が出てきたため、CEOは役員会を進めやすくなった。また、チームは、効果を損ねる原因となった障害について徹底的に議論し、繊細な問題にも互いを信頼しながら率直に向き合えるレベルに到達した。彼らはさらにチームとして、コーチング・プロセスで明らかになった問題――意思決定の効率化、人材開発など――を解決するための能力開発に取り組んだ。そして最終的に、戦略を実施する力は大いに強化された。CEOはこう言った――「みんなで一緒に進めているので、戦略実行のプロセスがとても効果的になった」。

4.おすすめ人材アセスメントソリューション

5.DDIとは

DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。

◆DDI社の4つの専門分野

DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。

6.会社概要

会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?