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音楽を(大衆に)開きたい ※独り言

音楽の現場に行くと、言い方は悪いけど、満席の客席だけでなくガラガラの客席を目にすることだって当然ある。

私は長いこと音楽をやってきているけど、周り(特に家族)は音楽をやっている人間がほぼおらず、価値観の違いを感じてはもやもやし、最近は「私はこの相反する価値観に挟まれて死ぬんじゃねえか」とさえ思い始めている。

私は、音楽をやっている仲間たちに比べたら音楽(特にクラシック)に対して誰よりもシビアな見方をしているんじゃないか、と思うことが度々ある。それはしょうがないのかもしれない。育った環境的に。だけど私は音楽を殺しちゃいたいわけじゃないんだ。


最近思うようになったのは、「音楽をもっと開きたい」ということだ。音楽にあんまり親しむ機会がない人にも。

ありがたいことに最近は自分が出演する機会にも、人の演奏会やイベントに足を運ぶ機会にも両方に恵まれていた。

出演させていただいた方はどっちかというとバンド系のイベントだったが、私の所属する団体がサブカル音楽をカバーしているからぜひ、とのことで呼んでいただいた。演奏の機会を頂けたことはとてもありがたかった。(団体の知名度を上げたいので)

いざ出演してみると、客席は空いたスペース9割…という感じだった。トップバッターでもあったからしかたないかもしれないが。ちょっと残念だなあと思うと同時に、「クラシック系じゃないイベントでもお客さん少ないことあるんだなあ…」という発見があった。正直ポピュラー系のイベントはもっと人気があるものだと思っていたので…(主催者様、お力になれずすみません。今後のイベントはお客さん増えることを祈っております。)

とにかくこれで、音楽を開かれた状態にするべきはクラシックに限らないことがわかった。ポピュラー系も、もっといろんな戦略が取れないか考えてみたい。


そのしばらく後、今度は大学で外部から作曲家を招いた講演会などのイベントがあった。こちらに2日間ほど参加したところ、今後の自分のヒントになりそうなことが見つかった。

この作曲家の方は、オーケストラと仕事をしつつも、瓦を使った音楽を行ったり、無人駅をめぐるツアー的な演奏のイベントを行ったりしているユニークな方だった。映像も見せて頂いたが、地域の方たちをうまく巻き込み、一緒に楽しんでいるような姿がとても印象的だった。

オーケストラの仕事の方も、ただ演奏会を行うのではなく、演奏家たちと就職に悩む若者たちのためにワークショップを行ったり、オーケストラにはないシタールやガムランを使い、しかも初めて演奏する人たちと共にオーケストラとして演奏をするなど、ここでも枠にとらわれない活動が展開されていた。

この方によると、「時代が変わるにつれ楽器が増えていったオーケストラはいろんなものを受け入れる存在。だから今後ももっといろんなものを取り入れていけるのではないか(要約)」とのことだった。個人的には、この言葉にこの方の活動が詰まっていると思った。オーケストラという編成に限らず、音楽自体がいろんなものを受け入れられるものだ、ということなのかもしれない。

また、この方の言葉で他にも心に残ったものがある。それは「オーケストラは音楽を演奏するだけじゃなくて、もっといろんな仕事ができるのではないか」というものだ。このオーケストラは経営難に陥っていたこともあり仕事が必要だったからだと思うが、私はこの言葉を、

「今までの形(仕事)だけにとらわれるのではなく、持っている知識や技術でできる新しいことを探していくことが大事」

ということだと解釈した。正直、演奏会だけをひたすら行っていても、聴衆が広がるとも考えにくい。新しい仕事を探し、そこで人々とオーケストラ(音楽家)とのつながりを作ることが、新たな聴衆を増やすことにもつながるのかもしれない。


そしてまたその後、演奏家をやっている親戚が出演するコンサートを、家族で聴きに行った。

聴き終わり帰った後、祖母が私に言った。

「全然曲が分からないから、少しは有名な曲をやってほしい」

音楽に詳しくない方はよく言われることだと思うが、そこから今回はもう少し気持ちを考えてみた。

例えば、自分の目の前で外国の方が延々としゃべっているが、それが自分が全くわからない言語だとしたらどうだろう。何を言っているかわからないので、その場に居づらくならないだろうか。

それが、祖母の抱いた気持ちなのだと思う。

私のような音大生や音楽が分かる方なら、その曲自体がわからなくてもある程度知識を活かして楽しめると思うが、音楽に詳しくない人はそれどころではないのだ。詳しいことがわからないのだから。このことは、私達が思うよりももっと深刻に考えた方がいいのかもしれない。


長々と書いてしまったが、私はとにかく音楽をもっと開きたいわけである。

そのために、今回わかったことは

・音楽はいろんなものを受け入れられる可能性があること
・今までの形(仕事)だけにとらわれるのではなく、持っている知識や技術でできる新しいことを探していくことが大事であること
・(曲などを)知らない、ということは結構深刻な問題になりえること

などである。

個人的には、やはり音楽をもっとみんなで楽しめるものにしていきたいと思っている。その中には、自分の好きなものが素敵なものであるはずだ、という気持ちもあるが(やっぱり捨てきれない)。

現状はまだまだではあるが、時間をかけてゆっくりと変えていけたらいいと思っている。


☆画像:Atelier hanami様

https://hananosu.net/illustration-violin/

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