文字を読むのが苦手なら

文字を読むと言うことが僕はすごく苦手だ。小学校のときは、国語のテストで良い点数がもらえ、給食のおかわり券がもらえるというご褒美をもらえることがたくさんあったが、中学高校と上がるにつれて、国語の苦手意識がぐんと強まった。それというのも、定期テストや、模試で、順位というものが現れたからだ。苦手意識というのは、意識であって、自分が勝手に作り出した幻想に過ぎないのだが、なんにもしなくて出来るような特別な人はいないと分かっていても、やはり「順位」というものを突きつけられて、他教科よりも勉強したのに、できなかったことが悔やまれて、「苦手なのかな?」とどうしても考えてしまう。誰かと比べることって、順位が高い人にとっては、モチベーションに繋がるかもしれないが、順位が低かったひとにとっては、よりその科目が嫌いになることに繋がりかねないといえる。

ひとそれぞれ、好きなモノ嫌いなモノが全く違うはずだ。運動するのが好きなひともいれば、体育の時間に失敗したことを笑われて、嫌な思い出しかないというひともいるはずだ(僕だ)。食べ物だってそうだ。ピーマン好きな人もいれば、どんなに小さく刻まれていても一個一個丁寧に取り除かれる方がいる(僕の妹だ)。ほとんどすべての好きなモノは生まれつきもしくは、個性として決まるものだといえるが、勉強や仕事は、後天的に「好き」「嫌い」が決まるものだと考えられる。成功体験を味わったからこそ、好きになったというものを思い起こしてほしい。

好きなモノに対しては、嫌いなモノと違って、取り組み方が明らかに違うといえる。好きなモノに対しては、ずっとやっていても嫌にならないし、やれと命令されても、ほとんど抵抗を感じない。もちろん好きなことなら、成長も早い。本を読むことについて言えば、自分の興味のある作品なら良いが、どこのだれだか分からない、なにか堅苦しい文章を読まされても、理解したいと思わないし、国語の教科書の多くは、歴史だの文化だの興味の無いことばかり書かれている。科学的なことが好きな僕であるが、国語の教科書でも、たまに科学的な話題が取り上げられているのをみる。しかし、あくまで国語の教科書の中での立ち位置の話で、僕にとっては全く科学的には感じないのだ。科学的な話をするなら、もっと数式を使って欲しいし、物理的な背景に迫って欲しいが、ほとんどのものは、陳腐で、何か味気ないものばかりに感じる。

大学入試を意識しはじめたとき、さらに文章のレベルが上がり、読むことすらままにならないことがあった。文字を目で追うのに精一杯な状態で、文字を本当になぞっているのみの内容が何も頭に入ってこない・残らない、苦しい状態をずっと味わってきた。本を日頃読むという子は何も困らないだろうが、文字を見ることすら抵抗のあった僕は、国語のいろんな参考書を買いあさってみたりしたが、「しかしの後は筆者の言いたいことが来る」「このように・こうしての部分はまとめを表す」みたいな小手先テクニックのみで、僕が本当に求めているモノに出会えなかった。ネットの情報記事などを読みあさって、そもそも文字が読むのが嫌な人はどうすれば良いのか調べたところ、「音読100回法」みたいな独学ではなかなか心が折れてしまうような方法ばかりだった。分かったことは、結局、たくさんの文章に触れること。それも、自分の読みたいような文章(自分が読めるレベルの文章)ではなく、読むのが辛いようなもの。問題集を開けて、何度も読むことを繰り返すことだ。

嫌いなことに対して、ひたむきにこれに取り組むのは、本当に苦しい。確かに、取り組んでみた文章の理解度は数回読んでみるうちに、上がったが、なかなか継続できるものではなかった。国語力というのは、漸進的に進化するものなので、自分が急にできるようになったとは感じにくいものかもしれないが、これでは成功体験を獲得しにくく、勉強するのがただの苦痛でやめてしまうかもしれない。そこで、「そもそも文字読むのが辛い病」を解決することができれば、飛躍的に国語力を上げることができ、どこかできっと成功体験を味わうことができるだろうと考えた。

僕が非常におすすめしたいのは、いろんなものを聞きまくることだ。読む力と聞く力は一見全く別の能力のようにもみえるが、実は、聞く力を伸ばすことは、読む力のみならず、書く力・話す力を伸ばすことができる。結局すべては、どれだけ幅広くいろんなことに触れてきて考えてきたのかが全てなのだ。考えたこともないことについての数学の問題を解かされてもおそらくすぐには、解けない。三平方(ピタゴラス)の定理を導けといわれても、三平方の定理について全く触れてこなかったひとは、絶対導けないし、4つの直角三角形を正方形の形になるように並べるというような発想はまず起こらないだろう。こういう考え方を、読むだけでなくて、聞くことによっても仕入れることはできるはずだ。読むことが苦手なら、聞く方を伸ばしてみるのはどうだろうか。

読む力・聞く力はいずれもインプットの方法で、書く力・話す力はアウトプットの方法である。アウトプットはさすがにインプットにならないので、読むか聞くかの二択にはなってしまうだろうが、読むという能力を普段活かせていない方は、聞くという能力の方がまだ活かせている場合が多いと考えられるので、ぜひともいろんなものを聞きまくって欲しい。You Tubeは一番手軽に聞くことができるものだと思う。いろんな人が講演や授業、一人語り・切り抜きの動画を出していると思うので、普段見ないような話題のものや面白そうと感じたものなどをいろいろ「聞いて」みて欲しい。エンタメやVTuberばかり見ずに、真面目に語っているちょっとお堅い動画も「聞いて」みるようにしよう。もちろん、2倍速で、速すぎると感じるなら、とりあえず1.5倍速で、のちのち2倍速にあげていこう。(2倍速に慣れていくようにしよう!)

勉強の合間なら、罪悪感もちょっとは薄れるはずだし、わざわざ本を出してきて音読100回やらないあなたは、まだYou Tubeでいろんなものを聞くという方がハードルがかなり低いはずであり、やらないよりはましなので、まずは日本語を聞く力を伸ばしていくと良いと思う。いろいろなことに対して、ハードルを下げる方法は、誰かと一緒にやるか、自分にとって楽と感じるものを選択をするしかない。

最後に、聞くことは誰しもあたりまえのようにできていると思うかも知れないが、まったくできていない。相手が言ったことに対して、必ずといっていいほど、それに対して自分の考えがぱっと浮かんでそっちに自分が巻き取られてしまったり、次何を言おうなどと考えて、相手の話を最後まで聞くことができる人なんてそうそういない。「自分が聞けていないんだ」ということを認識できた人から、あっという間に聞く力を伸ばすことができ、気付いた頃には、それに伴って読むことが辛い病も消え始め、読む力も付いてくるだろう。

すぐには成果は期待しない。自分の続けられる方法で、楽しく続けていこう。

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