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たたかう読書

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「自分を守れる自分」を作るための読書。
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#読書感想文

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』(文春文庫)

作家であり、ランナーでもある著者が「走る」という行為を通じて自分自身を見つめ、それを「正直に」言葉にした一冊。
本書を手に取ったきっかけは、わたし自身も走ることを習慣にしようと思ったからだった。

著者は1982年の秋に走り始め、それから毎年必ずどこかのフル・マラソンの大会に出るほどのベテランランナーだ。週に60キロ、一ヵ月に260

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桐野夏生『ハピネス』

桐野夏生『ハピネス』

桐野夏生『ハピネス』(光文社文庫)

若々しくて、綺麗で、セレブで、おしゃれで、ハッピーなママライフ。

桐野夏生『ハピネス』は、女性誌に頻出しているこれらの言葉を体現するような人たちが暮らす、東京都・江東区の五十二階建てのタワーマンションが舞台の物語である。

このタワーマンションに暮らす専業主婦の有紗は、娘の花奈と二人でタワマン生活を謳歌している。夫は海外に単身赴任しており、有紗の実家は新潟と

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羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)

羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』は現代社会の現実と、皮肉と、ずるさを多分に感じられる物語である。

「もうじいちゃんなんて、早よう寝たきり病院にでもやってしまえばよか」(11頁)

二十八歳の孫・健斗は八十七歳の祖父のこの台詞を毎日のように聞いている。新卒で入った仕事を辞め、アルバイトで食いつなぐ健斗はフルタイムで働く母のサポートのた

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2015年7月~12月読書まとめ

2015年7月~12月読書まとめ

みなさま、新年明けましておめでとうございます!

本年もどうぞよろしくお願い申し上げますm(_ _)m

新年初テキストノートは、去年の振り返りですw

トークノートにも書きましたが、2015年は読書目標の100冊を達成しました~!!(^◇^)

長くなりますが、たけしまの読書記録にお付き合いくださいませ!

*****

2015年1月~6月の読書まとめはこちらです(^◇^)↓
https:

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黒川伊保子『夫婦脳 夫心と妻心はなぜこうも相容れないのか』(新潮文庫)
独身だけど読む。感覚でものを言う"女性脳"と全体を俯瞰して合理的に考えようとする"男性脳"の違いを夫婦の関係性から解き明かす一冊。大いに納得!仕事においても役立つかもしれない。 #読書感想文 #本

桐野夏生『グロテスク』

桐野夏生『グロテスク(上)(下)』(文春文庫)

9月はだいぶんおさぼりモードで、お久しぶりのnoteになりましたm(_ _)m
シルバーウィークに伏見稲荷大社でおみくじをひいたら「焦らずにコツコツ努力しなさい」というお告げが出たので、引き続きコツコツゆるゆる更新していきます。

本書は「アメトーーク」の読書芸人で光浦靖子さんが紹介していた一冊。
都内の名門私立女子校が舞台で、とある少女(のちに成

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浅田次郎『終わらざる夏』

浅田次郎『終わらざる夏』

浅田次郎『終わらざる夏(上)(中)(下)』(集英社文庫)

一年ほど前にnoteで紹介したいわた書店
(https://note.mu/mrn_123_mrn/n/nac918ea47122)
の素敵なサービス「一万円選書」が先週届いた。

今年のお正月に申し込み(約7ヶ月待ち…!)、やっと届いた11冊!どれを読もうかな〜とうきうきしながら背表紙のあらすじを流し読み、浅田次郎『終わらざる夏』を手に

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フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』

フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』

フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』(新潮文庫)

もしもわたしが作者だったら…『アンヌごめんなさい』みたいな安易なネーミングしか思いつかないだろうと思う。「言葉が美しい」ということを体感させてくれる一冊だった。

フランス南部の海辺の別荘で気ままなヴァカンスを楽しむ主人公・セシルとその父・レイモンのひと夏の悲しい思い出の物語。

思春期は過ぎたが成人になる直前の生意気盛りの年頃のセシル

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2015年1月〜6月読書まとめ

みなさまこんにちは。
タイトルの通り、このnoteは半年間で読んだ本のまとめです。
ほんとうは6月末にまとめたかったのですがあれこれしている間に7月に入っちゃいました。最近、一ヶ月経つのがあっという間で、自分でもゾッとしています。
備忘録としてnoteを活用していますが、このnoteがみなさまの読書の参考になれば幸いです。
半年間の読書まとめとおまけに自分の読書についての振り返りもしますので、とっ

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大瀧純子『女、今日も仕事する』

大瀧純子『女、今日も仕事する』

大瀧純子『女、今日も仕事する』(ミシマ社)

「ワークライフバランス」「自己実現」「バリキャリ」…どれもピンとこない女性たちへ

と書かれた帯とシンプルな装丁に惹かれて読んだ。

本書は著者の経験・苦労を通して女性の理想の働き方を説いた一冊である。これまで「たたかう読書」と称して自分の生き方働き方を模索するために読書をしてきたが、本書ほど「しっくりきた」ものはなかった。
母子家庭で育ったせいか

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山田ズーニー『人とつながる表現教室。』

山田ズーニー『人とつながる表現教室。』

山田ズーニー『人とつながる表現教室。』(河出文庫)

山田ズーニーさん。あなたに、10年前に出会いたかった!

以前『おとなの小論文教室。』
(https://note.mu/mrn_123_mrn/n/nbad28ba3de5f)
を読んで著者の言葉に魅了された。10年前にウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」上で連載されたものを書籍化したものだが、わたしが高校生の頃に知っていたら…大学生の頃に出会

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金原ひとみ『持たざる者』

金原ひとみ『持たざる者』

金原ひとみ『持たざる者』(集英社)

「蛇にピアス」ぶりの金原ひとみ作品。帯には「『蛇にピアス』から10年。」と書かれていて、「蛇にピアス」を読んだ高校生の時のぞわぞわ感と10年も経ってしまったショックが二重にやってきた。

代表作しか読んでいない自分のミーハー心を戒めつつ金原ひとみ『持たざる者』を読んだ。金原ひとみ『持たざる者』は東日本大震災から四年後、環境や行動を変えて過ごす四人の登場人物の感

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山田ズーニー『おとなの小論文教室。』
わたしは何がしたいのだろう。どうして思い通りに行かないのだろう。著者と迷い人達とのやり取りの中で発見される「問い」は自分の言葉を見出すためのヒントに溢れている。毎日を忙しなく、こなすように生きる人に贈りたい一冊。 #読書感想文 #たたかう読書

又吉直樹『火花』

又吉直樹『火花』(文藝春秋)

話題の本を読みました。
ネタバレを含めて感想文を書きますので、未読の方はご注意下さい。
今までもそうでしたが、今回は話題のものなのでなおさら。

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スリル満点のエンタメ小説も好きだけれど、読みの可能性が無限にある純文学が好きだ。芥川賞受賞作に代表される純文学作品は「なぜ、ここでこの

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