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虹色に輝くカゾクノカタチ~LGBTQ当事者の方と考えた総合の時間~

こんにちは。特別支援学級教員13年目のMr.チキンです。今日はLGBTQの当事者の方からいただいた総合的な学習の時間のヒントについてお話をします。それは、すべての人たちが優しく生きるためのヒントかもしれません。

「性の多様性」って一言で言うけど、、、

昨年度から、同僚と一緒に、特別支援学級の教育課程を整理しています。総合的な学習の時間・・・いわゆる”総合”もその中の一つです。これからの時代を生きる子どもたちにどのような力を付けてほしいか。私たちは「『性の多様性』について子どもたちに考えてほしい。」と考えました。
でも、

どんな風に考えれば良いのだろう?何を教えればいいのだろう?

分からないことだらけです。性の多様性と一言で言っても、教員自体が分からないことだらけなことに気付きました。そこで、LGBTQの当事者の方にお話を伺うことにしたのです。

大久保 暁(おおくぼ あきら)さんについて

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今回お話を伺ったのは大久保暁さんです。

1981年、高知県生まれ。12歳からバスケットボールを始め、中学では高知県大会優勝および四国大会出場、高校ではインターハイや国体に出場し、大阪体育大学へ進学後も選手として活躍。大学卒業後は経験を生かして中学校や高校のバスケ部の顧問をしながら、保健体育の教師を務める。2010年にGIDの治療を開始、2013年に戸籍変更、2015年にストレートの女性と結婚。現在は、LGBT当事者として講演活動も行なっている。

LGBTER プロフィールより)

女性として生まれた大久保さんは、性的違和を抱えながら生き、男性として生きる道を選ばれました。いわゆる”トランスジェンダー”の当事者の方です。
性の多様性について多くの方に知ってもらうために、精力的に講演活動をされている方です。

遠方ということで、ZOOMで話を伺ったのですが、画面越しにも分かるイケメン感!初めてお会いする方で緊張していましたが、穏やかな話し方で、すぐに緊張が解けました。

学校の教科書のもつ狭い家族観

”学校で性の多様性を教えるときに、何を大切にすれば良いのでしょうか?”

という、大まかすぎる私の質問に、大久保さんは丁寧に答えてくれました。

小学校4~5年生くらいから性について学んでいくと思うのですが、教科書の性についての捉え方や表現は狭いのではないかと思うんです。

学校の教科書では、”父親”がいて、”母親”がいる。そして子どもが生まれるという表現になっています。

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父親と母親がいることが前提となる家族観なのです。言われてみればその通り。大久保さんがおっしゃるには、この狭い家族観で苦しむ方は多いのではないかということでした。例えば
・同性を好きになった自分は家庭をもてないのではないか
同性を好きになる自分はおかしいのだろうか。
・(将来的に)女性同士で結婚した場合、子どもは授かれるのだろうか
・(将来的に)男性同士で結婚した場合、家庭はどのように築けば良いのだろうか。
などが挙げられます。
教科書の性の捉え方がすでに固定的で狭いものだという感覚は、私にとっては完全なる盲点でした。

「君は君のままで良いんだ」

小学生の頃から、もうすでに性的違和を感じる子はいるはずです。

と大久保さんはおっしゃっていました。そんな子どもたちに

・いろいろな家族の形があっても良いんだよ。
・同じ性が好きでも大丈夫なんだよ。

伝えていくこと、情報を与えていくことは、それだけでその子の自己肯定感を上げられる関わりになるということを教えていただきました。
「自分はおかしいのかもしれない。」と考えている子たちに、「君は君のままで大丈夫なんだよ。」とメッセージを伝えていくことが大事ということでした。

”いろいろな結婚式”から考える総合的な学習の時間

では、総合的な学習の時間をどうしようか?という話になった時に、大久保さんから

色々な結婚式を調べてみたらどうだろうか?

という提案をいただきました。
・一般的な結婚式のスタイルはどんなものだろう?
・男性同士の結婚式はどんな感じなんだろう?

女性同士の結婚式は?
・今スタンダードとなっている”スーツとドレス”の結婚式は今後どうなっていくんだろう?

たしかに、これならば子どもたちも興味があるだろうし、調べていく中で”あ、みんな同じである必要は無いんだな”という多様性に気付けるかもしれない!と、可能性を感じました。大久保さんは

男性同士だからどちらもタキシード、女性同士だから二人ともドレス・・・という訳でもないんですよ。

ということも言っていました。えええ?そこまで自由なんですね!
それは、LGBTQ関わらず、自分の考えがあったり、ファッションにこだわりがあったりする人たちにとって嬉しい情報かもしれません。

絵本から考える”性の多様性”

大久保さんは、小学生に対してもLGBTQについての講演をしているということでした。その中では絵本を使いながら教えることもあるということでした。今回は2冊の絵本を紹介していただきました。

真っ白なしろねこかあさんと、真っ黒なくろねことうさんからうまれたのが、わたし、あかねこ。
他の兄弟は、しろねこ、くろねこ、とらねこ、ぶちねこ、みんな白と黒でねこらしい模様。
私だけ赤い色をしているから、お父さんもお母さんも、みんなが心配して同情ばかりする。
私は、きれいで可愛い、この色が好きなのにな・・・。
まわりと違うからということで、認めてもらえない。あかねこがとった行動とは?(後略)
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

ロイとシロのおすペンギンは、いつからかお互いに気に入り、カップルになりました。一緒に泳いで一緒に巣づくりして、いつも一緒にいました。
ところが、他のカップルは、ただ一緒にいるだけでなく、どうやら巣の中で何かをあたためている模様。しかもそうこうしているうちにそのあたためたものがかえって赤ちゃんペンギンが誕生しているではありませんか。
ロイとシロは、近くにあった卵の形をした石を拾ってきて、さっそく毎日毎日交替であたためはじめました。でも石のたまごはちっともかえりません。
そんな様子を眺めていた飼育員がはたと思いつきます。
他のペンギンカップルが育てられなかったたまごをそっとふたりの巣においてやります。そして、ふたりにしっかりあたためられた卵から、タンゴが生まれたのです──。
(絵本ナビより)

どちらも読んだことの無い絵本だったので、この二冊を読むことは私の夏休みの宿題です。

虹色に輝くカゾクノカタチ

大久保さんと

今の子は、私たちが子どもの頃よりも自由な時代を生きている
きっと、この子たちが大人になる頃には世の中はもっと自由になっている。
その世界で生きる力は何かを考えて、学ばせていかなくてはいけない

という話をしました。
今回、大久保さんと話をして、私は

性の多様性を考えるということは、単にLGBTQを考えることでは無い

ということに気付かされました。大事なことはその人がその人らしく生きること。でも、そうじゃない現状があるのだということを教員は意識しなくてはいけない。それは特別支援教育についても通じるところがあります。
LGBTQの方々は、その多様性の象徴として虹色の旗を掲げます。子どもたちの未来が多様性であふれるように!虹色に輝くカゾクノカタチを夢見て
2学期、総合的な学習の時間が楽しみになってきました。実施したら報告しますね!
では、またね~!!

追伸

大久保さんは、インタビュー翌日も大阪市内で2件の講演を行ったそうです。ご多用な中、貴重なお時間をいただいたこと、この場をお借りしてお礼申し上げます。


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