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✓はじめての文学

▽印象に残ったフレーズ

私は二度とという言葉の持つ
語感のおセンチさやこれからの
ことを限定する感じが
あんまり好きじゃない。
でも、その時思いついた
「二度と」のものすごい
重さや暗さは忘れがたい
迫力があった。

「まあね、でも人生はいっぺん
絶望しないと、そこで本当に
捨てらんないのは自分の
どこなのかをわかんないと、
本当に楽しいことがなにか
わかんないうちに
大きくなっちゃうと思うの。」

浮ついたことがすきな人たちは、
きっと無駄にしてもいいような愛情、
どんどん水道の水みたいに
流してもまだまだ溢れてくる
愛情に無頓着になって
よかった人たちに違いない。

私なんか、この世のいても
たいしたスペースはとっていない。
そういうふうにいつでも思っていた。
人間はいつでも消えても、
みんなやがてそれに慣れていく。
でも私のいなくなった光景を、
その中で暮らしていく
愛する人々を想像すると、
どうしても涙が出た。

自分に自信がなくなって、
生きていることに罪悪感があったから、
自分を好きと言い寄ってくれた人を
貴重に思わなくてはいけない、
と思ってしまったのだ。

生きていることに意味を
もたせようとするなんて、
そんな貧しくて醜いことは、
もう一生よそう、と思った。

あの日の、あの時間を箱につめて、
一生の宝物にできるくらいに。
その時の設定や状況とは全く関係なく、
無慈悲なくらいに無関係に、
幸せというものは急に訪れる。

「相手が君の人生から
はじき出されたと思えばいい。」

「ずっと家の中にいたり、
同じ場所にいるからって、
同じような生活をしていて、
一見落ち着いて見えるからって、
心まで狭く閉じ込められていたり
静かで単純だと思うのは、
すっごく貧しい考えなんだよ。
でもたいていみんな
そういうふうに考えるんだよ。
心の中は、どこまでも広がっていける
ってことがあるのに。
人の心の中にどれだけの宝が
眠っているか、想像すらしない人たち
ってたくさんいるんだ。」

はじめての文学/よしもとばなな/文藝春秋


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