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過去の傷

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今見返すと、痛々しいな、と思うものも。それでも全てが宝物なのです。
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#エッセイスト

軽率に好きだと言えたなら

軽率に好きだと言えたなら

何か変わるのだろうか。

「好きとかじゃなくて、もう愛してる」

なんてことを言われたって、

好きの軽さも、愛してるの重さも知らない自分にとってはどうでも良かった。

「自分から好きって言わないね」

と言われるようになったのはいつからだっただろうか。

本来「好き」だから恋人同士という関係性を築くべきであるのに、私の「好き」はそこからもう歪んていた。

其々に振り分けられた「好き」とうまく付き

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この世に誕生したあの日、誰が何処で泣いていたのだろう

この世に誕生したあの日、誰が何処で泣いていたのだろう

私がこの世に誕生した寒い冬の日に、

誰が十分にご飯を食べられなかったのだろう。

誰が隠れて泣いていたのだろう。

誰がもっと愛してほしいと嘆いていたのだろう。

そして、誰が私の誕生によって笑顔になったのだろう。

そして、それは本当に誰かにとっての幸せだったのだろうか。

人生はとても残酷なもので、

生きたいと思う人の元にはほんの僅かなチャンスしか来ず、

私のように望まれていない命がこう

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段々とゴム手袋をつけなくてもよくなった。

段々とゴム手袋をつけなくてもよくなった。

「お湯張りをします」

という機械音とともに、朝に増えた洗い物をこなすのが日課である。

ゴム手袋をはめて洗い物をすると、油がどれだけ取れているのか

分かりづらく、結局洗い物が全て終わってからもう一度洗わなければならないものも、あったりした。

ゴム手袋をしていても、冷水を感じていたのに、いつからか

素手で蛇口を捻り、

そのまま洗い物に進んだ。

冷たくないわけではなかった。

ただ、頭でそ

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試すような二月が嫌いだ

試すような二月が嫌いだ

毎年送られてくる、happy birthdayのスタンプを受信することはなかった。

きっと、こうして、父親との思い出も消え失せていくのだろうと思った。

自分の誕生日は、雪が降っている確率が高く、寒いのは嫌いだけれど、雪が降っていると、「今日、雪降ってる」なんて話す話題が一つ増えることが、私に取っては大事だった。

小学生の時、校庭に集まる集会で、校長先生が話してる最中、フラフラと揺れ前へ進んだ

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