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段々とゴム手袋をつけなくてもよくなった。



「お湯張りをします」


という機械音とともに、朝に増えた洗い物をこなすのが日課である。

ゴム手袋をはめて洗い物をすると、油がどれだけ取れているのか

分かりづらく、結局洗い物が全て終わってからもう一度洗わなければならないものも、あったりした。


ゴム手袋をしていても、冷水を感じていたのに、いつからか

素手で蛇口を捻り、

そのまま洗い物に進んだ。


冷たくないわけではなかった。

ただ、頭でそんなに寒くなくなったな、なんてぼんやり考えていた。


今年の冬はいつものものよりも、幾分と過ごしやすかった。

気温も、時の流れるスピードも、


人との関わり合いも、


決して落ち着いた冬を過ごせたわけではなかったけれど、

すぐに思い出せるような「冬の厳しさ」なんてものはなかった。


冷たくて、

寒くて、

温かさを欲して、

温め方も知らず、

温度のない言葉に身を埋めた、


そんなこと、

ゴム手袋をしていなくたって

思い出さずに済んだ。


それはきっと、

今年の冬がいつもより、ほんの少しだけ

暖かかった証拠なのだ。



もっと早くこんな冬に出会いたかったなんて、我が儘は言わない。

だから、

春を迎えるまで、

こうして、この瞬間を頭に刻み、


感じでいたい。




文字を書くことが生き甲斐です。此処に残す文字が誰かの居場所や希望になればいいなと思っています。心の底から応援してやりたい!と思った時にサポートしてもらえれば光栄です。from moyami.