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ジュネーブより、レマン湖畔の街とシシー最期の軌跡を辿る旅

2014年夏、長期出張で滞在中の夫を訪ねて、ジュネーブへ向かった。そして、週末を利用して、私たちはジュネーブ近郊の街を訪れることにした。

ジュネーブはレマン湖の西端に位置する。そこから湖に沿って列車で1時間ほど進むと、ローザンヌに着く。駅に到着後、街の観光をする前に、まず向かったところは船着場。三日月型に弧を描いている形のレマン湖。弧の外側はスイス、そして湖を渡った対岸はフランスになる。ローザンヌから約30分、対岸へのクルーズを楽しみ、到着した街はフランスのエビアンだ。

レマン湖

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エビアンという名前は、誰もが知っているであろう。そう、あのミネラルウォーターのエビアンである。船から降り立つと、アルプスの麓の新鮮な空気が感じられる。たった30分ちょっとのクルーズで別の国に降り立っているなんて、なんとも不思議な気持ちだ。

この街ではのんびりしたホリデーを楽しみたい清々しい雰囲気が漂っているが、私たちが訪れたのはほんの数時間。その僅かな時間の間に、行ってみたいところがあった。天然水が湧き出る鉱泉。この街にはいくつかの鉱泉があるようだ。そこからあのペットボトルに入ったエビアンと同じ水を汲むことができるのだ。世界中のスーパーマーケットで目にするエビアンの鉱泉、大々的な施設となっているのかと思いきや、そこは簡素な公園のような場所だった。

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湧水が出ているというだけで、本当にあのエビアンと同じ水なのか、とちょっと疑ってしまう。持参した空のペットボトルに水を入れて飲んでみる。冷たい透き通るような水が乾いた喉を爽快に潤してくれた。お水を飲んでこんなに幸せな気持ちになれるものなのか。大きなペットボトルを持参して水をいっぱい汲んでいく人たちもいる。さっそく小さなボトルを水へ近づける。アルプスの天然水と共に、喜ばしい気持ちも一緒に注ぎ込まれる。

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エビアンの街中は、可愛らしい小さな繁華街があった。スイスから来ると、見慣れたユーロ表記にはやはり安心する。レストランに入って、ランチのひと時を過ごす。

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再び船に乗ってローザンヌの街に戻る。小高い丘にあるノートルダム大聖堂のあたりから、歩いて街を散策する。落ち着いた雰囲気のある長閑な街だ。

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街の散策を楽しんだ後、今度は列車に乗り、さらに東のモントルーへ向かう。

レマン湖のほぼ東端に位置するモントルー。ジュネーブと違い、静かなリゾート地。7月に行われるジャズ・フェスティバルが有名だ。忙しく観光した1日を終え、ゆっくりと休むにふさわしい街。湖畔沿いを歩いてホテルへ向かうと、すっかりリゾート地に来た気持ちになる。

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さて、その日の締めくくりに美味しい夕食を楽しもう。スイスと言えばチーズ。私たちはラクレットをいただいた。薄くスライスされたチーズを専用の鉄板で焼き、じゃがいもなどの上に乗せて食べる。温かいチーズがふんわりと口の中に広がり、心は踊る。ニンマリした顔がしばらく元に戻らない。白ワインと一緒に贅沢な時間を堪能した。

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食後に湖畔沿いを歩きながらホテルへ戻る道すがら、アイスクリーム屋さんを発見。スイスでアイスと言えば、メーベンピック。熱いチーズ料理でホクホクした体を、冷たいアイスで冷ます。1日無事に観光を終えて、甘いアイスが優しい就寝へと運んでくれた。

翌日は朝から雨だったが、バスに乗って、シヨン城を訪れた。レマン湖の岩場に立つお城。13〜16世紀にサヴォイア公の居城であった場所。城内にも中世の雰囲気が漂い、見応えがある。雨でも訪れてよかった。

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さて、ランチを食べてホテルに戻り、チェックアウト。その後、夫は仕事に行かなくてはならなかった。一足先に私は一人で列車でジュネーブに戻り、夜にまたジュネーブのホテルで集合することにしていた。寂しい気持ちを抱えつつ、列車に乗る。しかし、車窓の景色に癒される。このあたりはワインの生産地としても知られており、ブドウ畑が広がっているのだ。スイスでもワインが作られているなんて、それまで知らなかったことで、嬉しい発見だった。

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その日は夕食も一人。ジュネーブの街でレストランに入り、簡単にパスタを食べた。ロゼワインをお供にすることも忘れずに。夕食後、もうすっかり遅い時間に夫がホテルに到着。翌朝一緒に朝食を済ませると、また仕事で出かけなければならないとのこと。その日の夕方にはウィーンへ戻る私。ジュネーブ観光は一人ですることになった。ざんねん・・・ 

だが、一人旅も悪くない。ジュネーブではずっと訪れたいと思っていた場所がある。ウィーンに住み始めてから大好きになった、シシーこと、皇妃エリザベート。長男ルドルフがマイヤーリンクの館で愛人と一緒に自害を遂げると、心に闇を抱えてしまったシシー。彼女は心を癒すため、様々なところを旅して過ごした。そして、悲しい最期を迎えた場所が、ここジュネーブなのだ。

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1898年9月、シシーはジュネーブを訪れ、女官たちと安らぎのひと時を過ごした。翌日昼過ぎ、レマン湖から船で次の地へ出発すべく船着場へと向かう。その時、何者かが突然シシーへとぶつかり彼女を倒した。エリザベートはそれから気丈にも起き上がり、30メートル先に停泊していた船へと足を踏み入れる。しかし、船上で再び彼女は気を失い倒れた。驚いた女官が彼女に近寄ると、エリザベートの胸にナイフのようなもので刺された傷があることがわかった。船は出航していたが、慌ててジュネーブへと引き返す。シシーは前夜に宿泊していたホテル、ボー・リバージュへと運ばれる。そして、そこで悲しくも息を引き取ったのだ。

シシーを刺した犯人は、イタリア人のルイジ・ルケーニ。彼は当初、ジュネーブに訪問予定であったフランスの王族を狙っていたが、彼らは急遽ジュネーブ訪問を取りやめた。そんな時、たまたま新聞でエリザベート王妃がジュネーブに滞在していることを知り、ターゲットを変更したという。シシーの死を知らされたウィーンのフランツ・ヨーゼフは深い悲しみに打ちのめされた。

私はこのシシーの最期の軌跡を辿る地図を入手し、それをたよりに歩いた。

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①シシーが刺された場所にある記念碑 ②犯人ルケーニがナイフを隠した場所 ③刺された後にシシーが乗船した場所 ④シシーが気を失い船が引き返した場所 ⑤引き返した船が停泊した場所 ⑥シシーが運ばれたホテルボー・リバージュ ⑦シシーの死から100年後に立てられた記念像 

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かつて一人でウィーンでの生活を始めた私に、元気をくれたシシーの物語。そのシシーが最後に訪れた場所に立ち、感慨に耽った。この美しいレマン湖の上でむかえた最期、子供の頃から自然を愛したシシーにふさわしい最期だったのかもしれない。

旧市街の洋菓子屋さんでランチにパイを買い、花時計が飾られたイギリス公園で食べた。

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スイス名物チーズフォンデュも食べたかったが、レマン湖の大噴水を見ながらスイス旅行最後の時間をのんびり過ごすことにした。

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それから、買い物をして空港へと向かった。友人へのお土産にチョコレート。そして、やっぱりどうしても買わずにはいられなかったもの、スイスのワイン。ボトルのラベルは、今でもコレクションの一つとしてアルバムに収められている。

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#旅のフォトアルバム

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