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『ノマドランド』、Not Hopeless!!

先週の土曜日、『ノマドランド』を見に行ってきた。アカデミー賞作品賞最有力と目されている作品だ。

見終わったときの正直な感想は、「ほう…、良かったけどなー…」といったところ。映画後に、友人との予定があったので、そそくさと映画館を後に。

翌朝、そういえば、と思い出し、『ノマドランド』の解説を読むことに。いつもは、映画を見終わった後に、カフェや帰りの電車で考察や解説を読むのが、私の映画後のルーティーン。

映画を思い出しながら、映画の解説を読んでいると、なぜかジワジワと湧いてきた!私のノマドへの憧れの感情や映画の奥行きが、ジワジワと思い出された。足早に映画館を出ながら、Filmarksのアプリで付けた星よりも、もっと高評価をつけていいんじゃないかと思い始めた。

私は、この作品の良さを文章や言葉で伝えるのは、難しいと思ってしまった。なので、気になった方は、ぜひ劇場へ足を運んでみてほしい。非常に他力本願で丸投げではあるが。笑
ですが、映画観の大きなスクリーンで見るからこそ、意義のある映画だと思う。


分かりやすく、1つすごいところをあげるとすれば、役者のほとんどが素人、だという点だ。実際のノマドワーカーの人たちを出演させているらしい。本物の役者なのは、主演のフランシス・マクドーランドともう一人の主要人物のみ。映画のエンドロールで自分の目を疑ってしまった。ほぼ全員が、役名と本名が同じだったのだ。だからこそ、本物のアメリカの地を旅しながら生きる「ノマド」たちのリアルな息遣いが感じられる映画となっている。フィクションでありながら、一人のノマドを追ったドキュメンタリーを見ているような気分になった。

また、フランシス・マクドーランドの演技もすばらしい。彼女が演じるファーンの一年の車上生活を追っているので、もちろん彼女が一人だけのカットも多い。しかし、セリフがなくとも、彼女の表情やしぐさだけで、ファーンの心情がわかってしまうし、間がもつ。というより、引き込まれて、まるで、隣で一緒に旅をしているような気分になってしまった。最後のファーンが、一人でパズルをする姿にはグッときた。昨年まで一緒にパズルを楽しんでいた親友は亡くなってしまったのだ。

アメリカの大自然も見どころだ。本当にスケールがでかくて、思わず息を吞む。


『ノマドランド』も『ミナリ』と同じで非常に「アメリカ的」な映画だった。アメリカ人のDNAに訴える映画なのだろう。なので、日本人の私たちとアメリカ人がこの映画を見て抱く感情は違うのだろう。劇中でも、ノマドはアメリカ開拓時代の生活に似ているなんて言われていた。

日本で「ノマド」といえば、ノートパソコンを持って、片田舎の古民家でも借りて、自然を楽しみながら仕事をする、なんていうような気楽なイメージだろう。アメリカのノマド,「Nomad」は、車で何時間もかけて州を渡り、車上生活をしながら、その土地その土地で、短期間、農作業やアマゾンの倉庫、ダイナーで働いたりする肉体労働だ。「Nomad」という言葉も元々は、放浪者や遊牧民を指す。


私たちは“ホームレス”じゃない、“ハウスレス”だ。

てな感じのことを劇中でファーンが、言っていた。「ノマド」たちは、帰るべき場所=「ホーム」は、心の中にあると考えてよう。ノマドたちは、物質的な豊かさを離れ、心の豊かさ、平穏を求めたのだろう。

余談ですが、留学時代、アメリカで私は、ダンボールで作ったような看板を持ちながら道に座っているホームレスを度々見かけた。彼らの前には、小さな缶が置かれており、小銭を恵んでもらっていたよう。あるホームレスが、
「I'm Homeless, but not Hopeless!」という看板を持っているのを見つけて、ニヤッとした。アメリカのこういうところが好きだ。

また、劇中では、元兵士でPTSDになってしまったノマドも登場する。彼は、大きな音が恐怖となってしまったため、都市を離れ、ノマドになることで、心の平穏を見つけたようだ。PTSDとなってしまった多くの兵士を抱えるアメリカにおいて、このような人は実際に多いのではないかと思った。

また、「ノマド」たちは、非常に人と人との繋がりを大切にしていた。車上生活なんてトラブルが起こるのも当たり前。それを助け合ったり、要らなくなった物同士を物々交換したり。自分ひとりじゃ生きていけないんだ、という当たり前ではあるが、忘れがちなことを彼らは大切に生きていた。

See you dawn the road. またいつか。

「ノマド」たちは、さよならは言わず、「またいつか」と別れのときはあいさつをする。また会えなくても彼らの出会いにホントの別れはないらしい。この考え方もステキ。


そんな物の豊かさよりも、旅のなかに大事なものを見つけた「ノマド」たちの生活、気になった方はぜひ見てみて下さい。私も危うく、バンを買って走り出すところでした。

それではこのへんで。
















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