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『ボウリング・フォー・コロンバイン』なぜアメリカでは銃を持って殺し合うのか<★3.8/5、2022年8本目>

<映画情報>
『ボウリング・フォー・コロンバイン』2002年
監督: マイケル・ムーア

<1文内容紹介>
なぜアメリカでは銃を持って殺し合うのか

<ネタバレ感想>


今回はドキュメンタリー映画なので、感想だけを記す。

まず面白かったのが映画の焦点の当て方。高校での銃乱射のような大事件だと、事件そのもの、特に加害者や被害者に焦点を当てた作品になりがちである。だが、本作品は事件を生み出したアメリカ社会そのものに「なぜ?」を問いかける。そこがまず他の多くのドキュメンタリー作品と決定的に違う点だと思った。

カナダにも銃を持つ人は多い。ではなぜアメリカでは突出して銃犯罪が多いのだろうか。監督はこの疑問を当事者たち−全米ライフル協会の会長から事件被害者の少年たちにまで−に問いかける。

監督が主張しているのは、アメリカでは日常に恐怖が埋め込まれていると言う点だ。全体としては犯罪件数が減っているのにも関わらず、テレビは視聴率を追い求めて犯罪を繰り返し取り上げる。だから人々は疑心暗鬼になる。銃が売れる。そうするとその銃が犯罪に使われ、扇情的に取り上げられる負の循環が始まる。

もちろんこれは単純化した見方で、教育の格差もあれば、福祉の格差もある。自己責任を重んじ、全ての結果責任を個人に負わせる社会の風潮も、強いストレスを人々に与える。

ではどうしたらいいのか?答えはわからない。この映画は考えるきっかけを与えるだけだ。公開されて20年近くが経とうとするが、状況は変わっているように思えない。

最後に、映画の緩急の付け方がとても上手。集中力が落ちてきそうな頃合いで、例えばアニメのように少し視点を変えた動画だったり、登場人物の面白い(=トンデモな)発言が挟まれる。だから飽きない。これは特に社会派の作品において大事だ。いくら映画に興味を持ってみている人でも、2時間近く重いテーマに集中し続けることは難しい。ユーモアは一度緊張を解きほぐし、再び映画へと没入せる。

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