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『見えた最大値』2023.#26 アルビレックス新潟×浦和レッズ

スタメン

初期配置:4-2-3-1
鈴木
長倉 高木 長谷川
島田 高
堀米 トーマス 舞行龍 藤原
小島

初期配置:4-2-3-1
カンテ
関根 小泉 大久保
岩尾 伊藤
明本 マリウス ショルツ 酒井
西川

前半

・天皇杯川崎戦に引き続き劣悪なピッチコンディション。夏場は暑さによって荒れる事があると、グラウウンズパーソン(芝管理のプロ)の方がポストされていた。ここは理解を示したいところ。

・90分間の話へ。
・両者とも自らの陣形を崩してまでボールを奪いに行かず、必ずセットした状態からミドル~ハイプレスを発動。なので保持側もそのテンションに付き合ってローテンポなボール循環を志向。試合全体を通じて落ち着いた展開となった
・前提として新潟と浦和にはアスリート能力に差があると感じた。50:50のボールへの競り合い、ブロックを構成するスライドとカバーの速さ、ボールスキルでは特に際立つロングパスの精度。『J1』を否が応でも感じてしまう相手だった。正直引き分けに満足しちゃってる。
・そんな赤い選手達が真面目に賢くディフェンスしてくるので、新潟からしたらとにかくフェアなストレスを感じ続けたと思う。相手のアクシデントが無ければ多分ドローゲームにすらならなかった。
・(ちなみにアンフェアなストレスというのは町田とか福岡のそれ)

・ゾーン1では初期配置を大きくは動かさず、ピッチを広く使いながらビルドアップの出口を探る新潟。
・対して浦和はカンテ+小泉が新潟CMFを消しながら小島,トーマス,舞行龍に向かい、関根,大久保の両WGは中間ポジションに立ちながら出所に素早くアタック。ボールと人の位置を基準にチーム全体でスライドしてパスコースを埋めに来るので、新潟SBに渡る頃にはその周辺に浦和を背負う男達が沢山。

・更に、献身的なプレス隊の守備貢献はこれに留まらず。新潟のバックパスに対してもパスコースを消しながら二度追いを敢行。これにより新潟バックスは地上からのボール出しを中々許してもらえず、マリウス-ショルツがそびえ立つエリアへの配給を強いられてしまう。
・03:30~のシーンではアンカー位置に立つ高の体の向きからトーマスへのバックパスを読んで素早くパスコースへアプローチした大久保。ただ頑張るだけでなくサッカーIQを携えながら効果的に守備に走る姿が印象的であった。
・洗練されたカバーシャドーで新潟を追い込める小泉が中央にいて、賢く速く守れる関根,大久保をワイドに擁する時間帯は新潟視点だと苦難の連続。蹴らされるシーンもかなり目立っていた。
・そんな浦和の4-4-2攻略のために配置的優位を活用したい新潟。ゾーン1,2で『3-2』のビルドアップ隊を形成しながら浦和プレス隊が届かない位置に人とボールを送り込んでいく。

小島が関与できないゾーン2でも人が入れ替わりながら3バック-2CMFを形成

・誰がそこにいてもいいけどチームの原則は常に共有する意思が読み取れる新潟。浮いた後方3枚の一角が運んでライン間に差し込んだり、相手WGの牽制を誘って自軍ワイドに渡したり。そのワイドから斜め前に差し込むなど、内→外→内と段差を利用しながら危険な箇所への侵入を図っていく。
・しかし浦和による守備構築の練度はとてつもなく高い。徐々にパスルートが読まれ始めると、サイドを限定されて一気に圧縮をかけられてしまう。ライン間へのダイアゴナルなパスもDF陣による迎撃で無効化。対応が早い。
・特にタッチライン際に立つ機会が多かった堀米だが、利き足のサイドにいるのでそのエリアで受けても脱出する術が基本的に無い。味方のサポートがあればそこと繋がればいいのだがそもそも狭く守られている。パスの先で詰まってしまうのだ。
・もし左なら右利き,右なら左利きのように、逆足のサイドに立つWGがタッチライン際に張っていたら…。その世界線の結末はまた後程。
・ボール保持の比率は高いけど相手にダメージを与えるようなシーンは極僅か。そんなこんなしてる間に浦和側のGXが徐々に高まってしまう。
・浦和の試合を観ていると例に漏れず毎回発動されている岩尾による列落ちからの後方3枚形成。もはや相手関係なしにやっているんじゃないかとも思ってしまうがこの試合では見事にハマってしまった。
・4-4-2を形成しながらミドルゾーンを起点にブロックを敷く新潟に対して、岩尾のサリーダから3-2-5気味の変形を始める浦和。新潟が届かず、尚且つ堀米vs酒井という質的優位を得られる箇所に対して岩尾からの精度高いロングパス。
・折り返しに対して最後は伊藤敦樹のシュートが外れたが、構造と個人の特徴を上手く組み合わせた完璧なアタッキングであった。もしこれが決められたとしても新潟を責めるのはナンセンス、正直止める術が無いからだ。

・07:02~のシーンでもこの形が見られており、相手のウィークと自らのストロングをぶつけやすいとして恐らくスカウティングされていたのだろう。
・格上と当たると守備のウィークネスになりやすい堀米。相手に応じて新井と出場機会を分け合う起用法が望ましいのかなと思う。

・潮目を分ける1つめの出来事。19:44~大久保が負傷。

--大久保 智明が早い時間に負傷交代となったが、現在分かっている状態は。
スコルジャ:不運な出来事でしたし、重傷かもしれません。もちろん検査などをしなければ分かりませんが、筋肉系のケガのようですので、そうであれば長期離脱も考えられます。

・スコルジャによると重い怪我かもしれないとの事。軽い症状である事を祈っております。
・この交代により小泉が右にスライド、空席となった2topの一角には安居が送り込まれた。相手選手の負傷がきっかけというのは決して喜ばしい事ではないが、新潟からしたらかなり楽になったと思う。
・関根-小泉-カンテ-大久保のプレス隊はじわじわとパスコースを制限しながら新潟の前進を阻止できる上に、自らアクションを起こして奪いに行けるユニット。バックパスや視野が確保できていないホルダーをトリガーにして一気に追い込みをかけて奪取or回収を試みる。
・その余波でセカンドを拾われてカンテに繋がれてピンチの連続だったのが序盤戦。そこに大きく関与していた大久保が退いて重要な最前線での限定役を担っていた小泉がワイドへの移動を強いられた。
・これによりゾーン1,2で制限はかけられるものの圧を感じるシーンはかなり減り、楽にゆっくりとボールを持てるようになっていった。
・しかし先制は浦和。

・CKに合わせた関根のシュートに対して長倉の手が当たったんじゃないかというVARチェック。

・結果的にPKの判定が下されて、ショルツに蹴り込まれてしまった。0-1。
・ある種の陰謀論のように『VARは新潟の味方をしてくれない』という言説が日に日に強まっていくが、正直自分達で改善の兆しを掴んで欲しいなと思っている。
・背中で手を組んでハンドを防止したり、タックルの際には足裏を見せないであったり(to舞行龍,島田)。結局はVARも試合を構成する一つの要素なんだから、上手く付き合っていけるようにチームとして取り組んでいきたい。ここら辺は経験値と日常からの意識付けでどうにでもなると思う。
・リードした事で前半終了までの浦和のスタンスは明確に。試合が膠着した事と失点によるローテンションからアタッキングが停滞気味に。
・中央を完全に塞がれて侵入口はワイドから。それも左右で対照的になってしまう。

・左では堀米が機転を利かせてポジショニングの優位をとって相手SBの背後をとるまでは行けた。しかし、結局は逆のSBまでしっかりBox内に絞る浦和の徹底ぶりにシュートまでは至らず。0-1、ノッキングを感じたまま45分間が終了してしまう。

後半

スコルジャ:後半に入ってからは、相手を自陣ペナルティーエリアから遠ざけようとする守備を試みました。ほかの試合を見ても、新潟がたくさんのチャンスを作っているからです。

・意図は分かりかねるが、恐らく押し込まれ続ける状況は避けようというのが後半開始~中盤までの浦和の狙い。しかし実際はどうだったかというと7割方新潟によるハーフコートゲームが演じられる事となった。
・1stラインがハーフェーライン付近にまで下がり、プレスというより構える形で後半の大部分を過ごす事となった浦和。
・これによりわざわざ『3-2』を形成する必要がなくなった新潟。島田-高を相手1stラインより前、アンカー位置とビルド補助に回す事で中央でのパスルートを開拓。外回りでなくてもブロック内に侵入できるようになってきた。
・それでも浦和の練度は落ちず、ボール周辺の密度を高めながら横と縦の隙間にコンパクトを保ってくるので中々崩れる気配が無かった。相手の手前でプレーしても結局動かせていないのでスペースも生まれない。内向きにプレーする選手が多めな構成だと陥りがちな展開になってしまう。
・一応主導権は握り続ける。スコルジャの言葉を借りるなら『相手をゴール前から遠ざける』展開に持ち込んだ事でカンテには見せ場を作らせず、更にカウンターで脅威になるようなアタッカーが不在なので殆どゴール前は脅かされず。
・なのでどうやってゴールまでたどり着くか、そのためにどこにどうやってスペースを生み出していくのか?がここからのメインテーマに。
・浦和プレイヤーに持ち場からのスライドを強制して、連鎖して生じるカバーの隙を突いてスペースを見つけたい。55:00~とかその好例。

・とはいえクロスやシュート,外からの脅威をあまり感じさせないのが新潟。当然相手もそれを分かっているので、敢えて動かず4-4を崩さない事でBox内からシャットダウンを図る方が合理的なのだ。
・チャンスに繋がったパスワークもいつまで通用するのか分からない。
・ならば手を変え品を変えという事で選手交代。

・特に長谷川→松田が大きかったように思う。

・更に76分、小泉が脚に違和感を覚えてシャルクと交代。あくまで怪我人である事を承知で、これもかなり新潟に追い風が吹く出来事であった。

77分時点での構図

・左右ともワイドにドリブラーを置いた事で、段差を利用しての中央への侵入が再開。キープレイヤーの交代とスタメン組の疲労からか、浦和のプレス隊は新潟の組み立てに全く圧力をかけられず。更にチーム全体のコンパクトネスもアタック&スライドの緩みから機能不全に。ライン間,選手同士の隙間が目に見えて広がっていく
・シャルクがWGを務めた事でパスコースを塞ぎながら奪い所に誘導する、スコルジャが求める基本的な守備のタスクが遂行しきれず。松田の到来とシャルクの登場、このエリアから崩れ始めたのは決して偶然ではなかった。
・右利きの三戸を左に、左右両足使える松田を右に置いた事でレーンを跨ぐドリブルが可能に。これにより相手の目線を集め、更には縦方向からのアタックを引き寄せるのでこれまでには無かったスペースが生じてくる。その結果が
・同点弾に繋がった。舞行龍→ワイドの松田→カットインから中央へ、最後は小見のJ1初ゴールで1-1

・その後にも長倉の反転から鋭いショットがあったが⬇

・WGの設置により各レーンでの各々の振る舞いが明確化。これは湘南戦でも見られた現象だが、特に右では基本的に松田を張らせて藤原をアンカー脇〜ライン間と中央寄りに解放してあげる事でそれぞれに得意なエリアでのプレーを担保させた。
・中央に相手を集めてワイドにスペースを、逆にワイドから相手を引き付けて中央に綻びを見出すように、各レーンで適切な振る舞いを見せる事で別エリアがその恩恵を受ける形となる。
・同点弾もその後のチャンスシーンも藤原がシャルクの意識を引き付けた事でワイドに時間とボールが与えられた所から。上記の事項でいうと前者の関係性を利用した。
・ワイドから中央へ、レーンを横断する事で不用意な縦スライドを強制した松田のドリブル、その後味方へ供給したパスは見事の一言。これによりパスを受けた選手は今まで無かったスペースへアタックしてシュートまで持ち込めた。
・WGが到来すると途端にチャンスが生まれ始める新潟。誰が出ようと1stプランからライン際での振る舞いを1つ狙いとして持っておけばこれまでのように45分間を無駄にする事はないんじゃないかと思ってしまう。
・ただ、今節の勝ち点1は相手ブロックの隙間が生まれ始めた辺りに効果的なカードを切り続けたベンチワークがあってこそ。チーム随一の個人技を誇るダニーロも本調子で戻ってくるであろう中断明け、選手起用とゲームプランの微調整に期待したい。

・VARの再介入があったりと最後までトピックスに欠かさなかった好ゲームは1-1で終演。
・スワンに例の凱歌を響かせなかった事からも比較的ポジティブに捉えられるドローゲームであった。


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