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ミステリーを読んだら自分がミステリーだと気付き、さらなるミステリーを呼び込んだ事件

その日読了した本は感想を書くのが難しかった。
特徴を上手く表現出来るものでもなく、ありきたりな感想しか書けない自分に嫌気がさしていた。

人の良いところばかりが目につく。

他人は、感想の品評会かと疑うほどに、語彙力、表現力、そして知識を見せてくる。

そういった螺旋が好きで始めて、自分の可能性に賭けて始めたのに積もるのは嫉妬や、自己否定ばかりだった。

すごく小さな場所、小さな世界だけで悩んでいた。本来、SNSはそこから無限に広がる世界のはずなのに、一部分でしかないはずの上手い文章を書く人ばかりと比較して嫌になってきていた。

もう一度だけ、自分を信じよう。

ほんとに、書きたい。溢れてくるものだけを書こう。言うなれば、初めて自分をさらけ出した表現だったのかもしれない。

なんのはなしですか

聴いてください。🎤

「ビックリ‼️トックリ🍶」

二人組の作家さんですって。ビックリね。
どうやって創るのかしらね。ビックリね。

今日は感想が、ザックリね。
そんな自分に、ガックリね。

いきなり高額請求された気分。ボッタクリね。
さらに帰りに財布をとられた。ヒッタクリね。

Wow WOO トックリでちょうだい🍶

あなたの物真似、ソックリね。
何故だかそれが、シックリね。

ああ、何だか眠い。コックリね。
いや、川が見える。ポックリね。

ちょっと運転乱暴。ガックリね。
スピード抑えてよ。ユックリね。

これ以上クリ返すのかい?ヤリクリ出来ずにパックリ心が裂けて、シャックリ止まらず

ヒックリ返るお目めがパチクリパチクリ

Wow WOO トックリでちょうだい🍶

っていう歌詞になりました🎵

私はどうなるのでしょう。

と、その日は締めくくった。

とんでもないものを世に出した。

もう二度と真面目路線には戻れない。

興奮とやってしまった感とが入り雑じり、自分はいったいなんなのだろうかと自答した。

そもそも、真面目に書いているのだ。
書いた先がこれだったのだ。

自分にビックリだし、他人にトックリだし、とにかく僕は、この日作詞家としてデビューしたんだ。

僕も、世間もこの衝撃作を忘れていた頃、ちょうど僕は大人の自由研究として燃え尽きたことや、一皮むけたことをハッシュタグ #チーム抜け殻 をつけて投稿して欲しいとInstagramで去年の夏に広く募集した。そして一通のDMが届いた。

「あの歌詞にインスパイアされたんです」

私は冷静に聞き返した。

「ちょっと何言ってるかわからないです」

彼女も冷静に答えた。

「ちょっといいから聴いてください」

と。それがこれ。

僕は、何が起こっているのか信じられなかった。

そして僕の才能に嫉妬した。

自分が路頭に迷い、人にどう思われてもいいという所から出発した「ビックリ‼️トックリ🍶」は、見ず知らずの女性の琴線に触れなんと歌になって返ってきたのである。

開き直った僕に待っていたのは、無限に広がるSNSだった。

僕はこの後、立て続けにヒットを飛ばすがそれはまた別のはなしだ。

一歩踏み出すと、道は続いている。

作詞家木ノ子(当時はTAWA名義)体験談


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