「山田錦の身代金」第一章「三億円の田んぼ」第二節 その四
振り向くと、タミ子だった。お地蔵さんのような微笑みを浮かべている。
勝木課長も足を止め、不審そうな顔で振り向いた。
「あんた、何もんや?」
タミ子はそれには答えず、枯れた田んぼと用水路の間、あぜを指さした。
「よく見てごらん、箒目が残ってるだろ。鑑識の人は気づいてたよ」
言われてみると、あぜに動物が引っかいたような跡が残っている。箒で掃いた跡にも見えた。
「なんなんや? それが」
「犯人が、箒で掃いてった跡だよ。自分の痕跡を消すためにね。奴は、ここから毒をまいて、稲を枯