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仕事のことを愚痴る父

父親は、私が中学校3年くらいから二十歳を過ぎる頃まで、東北に単身赴任していた。

ちょうど私の思春期〜大人になる時期には父親が不在だったことになる。

当時はそのことについて何も思わないというか、父親がいてくれたら…と思うこともなかった。一度ある出来事があるまでは。

その件はまたの機会に。

それほど、父親との関わりや信頼関係やら、関係性そのものが希薄だったのかもしれない。

父は月に2度ほど、単身赴任先から帰ってきて、また赴任先へ戻っていくという生活を、こちらに戻ってくるまで続けていた。

このときの赴任先での父の仕事は、それまでの建設現場での施工管理の仕事とは異なり、事務職、主にリストラを担当していたらしい。

この業務は父にとって相当負担で応えたらしく、赴任先から帰ってきた時に、仕事の辛さを愚痴るというか、吐露することがあった。

自分より年上の社員にリストラを宣告して、土下座されたり、リストラを告げた社員からあることないこといいふらされたり…。

それは相当神経を削られる過酷な仕事だったと思う。

それは自分もこの歳になると、本当によくわかるし、自分だったら続けられない、耐えられなかっただろうことは容易に想像がつく。

正直そんな仕事はやりたくない。

が、しかし、だ。

そんな話を聞かされている時の自分は、中学生〜高校生くらいだ。

大人ではない。

悩み多き、決して天真爛漫伸び伸び、幸せに順調な毎日を送っていたわけではなかった。

今思い出してもあまりいい思い出のない時期だった。

そんな中、たまに帰ってくる父親からは、仕事の大変さや愚痴を聞かされる。

その時の自分は、愚痴なんて聞きたくなかった。

というより、人の愚痴を聞く、人の苦しみや悩みなんて背負ったり知ったり受け止められるほどの余裕もないし、なにより、よく考えれば親と子どもという立場だ。

普通は子どもの悩みや愚痴、苦しみを、大人である親が聞いたり受け止めたりするものではないだろうか?

どういうわけか、私と両親の関係というのは、こちらが逆転していた。

特に母親なんかは、私が何か不満口でも漏らそうものなら、グチの〇〇(本名)などと揶揄され、自分はママ友の悪口やら嫁姑の悪口愚痴なんかを散々聞かされた。

本来友人や夫婦、大人同士でやりとりするような悩みや愚痴や苦労を、大人同士で共有したり解決せずに、一方的に受け身を取らざるを得ない子どもをはけ口にしていたような記憶がある。

悩みや愚痴を聞いてもらったり、頼ったり助けてもらいたかったり、支えになってほしかったのはこちらの方だ。

でも、親の不安定や、家庭内の不安定も怖かった。安全安心が脅かされるのが怖かった。そして、親との信頼関係も関係性もなかった。

だから、自分のことはずっと我慢して、サンドバッグのように、親の愚痴や不満、他人の悪口などを掃き溜めのように捨てられ続けていた。

子ども時代の自分に、今の自分が声をかけてあげるとしたら…

君は君で、いろんなことで悩んでいたり、苦しいこと、どうにかしたいことがあって辛いんだよね、苦しいんだよね。

親はいろんな愚痴や苦しみを吐き出してくるけど、君はまず、君の苦しみや悩みを対処することを優先していいんだよ。だって君はまだ子どもだし、人に頼ったり助けられたり支えてもらいながら成長する段階なんだから。

だから、親じゃなくてもいい、どこかに君の力になってくれたり、理解してくれたり、応援したしてくれる大人や友達、君の味方がきっといるはず。

そんな人たちに頼って、打ち明けて、信頼して、悩みや苦しみを乗り越えたり成長していけるから、大丈夫だよ。

自分ばっかりで背負わないで、我慢し続けないで…

と抱きしめてあげたい。

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