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オレゴンの小学校でガーデンインストラクター デビュー

下記NOTE初投稿では、オレゴン暮らしの中で「ガーデン」に心をつかまれた体験を書いた。今回は小学校のスクールガーデンで子どもたちに教えたこと、私が教えられたことを伝えていこうと思う。

オレゴン州レーン郡 スクール・ガーデン・プロジェクト 

スクール・ガーデン・ プロジェクト(以下略してSGP)は、常に高い人気を誇るNPOだ。オレゴン州では、約25000ものNPOが助成金や寄付の獲得を巡って熾烈な争いを繰り広げる中、SGPのビジョンとミッションに共感してボランティアや寄付をしたいと手を挙げる市民や企業が後を断たない。

スクールガーデンプロジェクトのビジョン&ミッション 要約https://www.schoolgardenproject.org/
私たちはこんな未来を約束します。野菜作りの基本を学んだ子どもたちは、サイエンスを通してガーデンの生態系を学び、健康な大人に成長します。彼らは自然を守り、果物と野菜を食し、地域の発展に貢献するでしょう。そんな未来のために、私たちは学校にガーデンを造って科学の基礎を子どもたちに教える取り組みをサポートします。先生やボランティアのためのトレーニングや教材を提供し、地域のガーデン維持拡大に貢献していきます。

オレゴン大学の都市農園プロジェクトの有志チームが、20年前、近隣の学校に菜園を作り子どものための環境と食の教育を始めたのがSGPの始まりだ。ガーデンをデザイン造園し、用具、種、苗を揃え、教材の作成まで行う。人材育成のために教員、ボランティア、地域の人々のためのワークショップも開催している。現在は約20の小中高校で活動していて、年間1000人以上の生徒がその恩恵にあずかっている。

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私がガーデン・インストラクターとして手伝うことになったのはアダムス小学校、見晴らしのいい丘の住宅街にある公立校だった。お手伝い初日、ドキドキしながら小学校に到着すると、SGPのプログラムディレクターのアモリーナが人懐っこい笑顔で迎えてくれた。趣味は合気道、お母さんは禅が大好きという親日家だ。4月からの春学期の10週間、彼女と一緒に3年生のクラスを担当することになった。

ミミズのレッスン

この期間、毎週木曜日の午後、STEM(Science, Technology, Engineering and Math)と呼ばれるプログラムに基づいたカリキュラムに沿って、子どもたちは光合成、生態系、受粉、気候変動等の環境問題、ガーデニング技術のレッスンを受ける。その中で一番印象に残っているのは5月に行われたミミズのレッスンだ。

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最初の15分はいつものように教室でのレクチャーから始まる。土壌の養分とミミズの関係をアモリーナが説明するが、経験豊富な彼女は子供たちを惹きつける術をよく知っている。「地球上にはなんと2700種のミミズが存在するんだよ。ミミズの心臓は5つ。口はあるけど目は無い。でも明暗の区別はできるんだ。雌と雄はどう見分けるか知っている? 雌雄同体だから雌であると同時に雄でもあるんだよ」など、初めて聞くことばかりに子どもたちは目をかがやかす。

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レクチャー後は校舎前のガーデンに移動して、観察と実践の時間だ。このレッスンのためにアモリーナは自宅の飼育箱で大切に育てていたミミズとミミズの卵をたくさん持って来てくれた。私は、子どもたちの手にミミズをのせてルーペで動きや特徴を観察させ、栄養分の循環やコンポストについて話し合ってもらった。土壌やミミズ用語は専門的で大人にも難しい。卵を見たのは私も初めてだった。(この下の写真だけは冬のレッスンから)

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ふと顔を上げると可愛らしいキウイの白い花が見守ってくれている。ミミズさんのおかげもあってきっと夏は美味しいミニキウイが鈴なりだ。

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ガーデンレストランの日

そして6月、春学期修了日にはお楽しみの恒例イベントがある。SGPのスタッフとボランティア総出で子どもたちをガーデンレストランに招くのだ。メニューはもちろんガーデンサラダ。大きいテーブルをいつものガーデンの横に設置し、コットンのクロスをかけお皿とフォークをセットする。小さい器にはエディブルフラワー、サンフラワーシード、ドライフルーツなどのトッピングが盛られる。

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レインボーチャード、レタス、トマト、ラディッシュなど子どもたちと育てた色とりどりの野菜を収穫し、大きなボールに放り込んで洗う。準備完了、レストランの開店だ。

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子どもたちが教室から飛び出しアウトドアレストランの前に並ぶ。レストランのシェフになりきった大人たちが、一人ひとりに笑顔で話しかけながらサラダを盛り付けていく。「ドレッシングはどれにいたしましょう?」地元の惣菜屋さんが提供してくれたオーガニックドレッシングやソースを一人ひとりの好みに合わせて振りかける。トッピングをのせてカラフルなサラダのできあがり!

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子どもたちは好きな場所に陣取って満面の笑みでサラダを味わう。自分たちが一生懸命に育てた野菜は格別な美味しさにちがいない。撮影係の私は、ガーデンレストランでたくさんの笑顔を撮った。

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クラスの中には経済的な理由でランチにセロリしか持って来られない子や、親が多忙で食事はいつも一人でジャンクフードという子もいる。移民社会、現代社会の歪みが子どもの食事にそのまま影響するのだ。「スクールガーデンはそのような子どもたちに生きる力を与えてくれるんだ」と、SGPのスタッフは常に口にしていた。

ガーデンは子どもたちの多様なバックグラウンドを優しく包み込み、食物を自分で育てるスキルを教えてくれる。彼らが生きていく上で最も大切なレッスンを学ぶ場所なのだ。コロナ禍でスクールガーデンも通常の活動が再開できるまでには時間がかかるだろう。子どもたちが一日も早くガーデンに戻れるよう願わずにいられない。

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さて、さらにもっとガーデンと関わりたいと思った私は、ママ友のレベッカに相談した。ガーデンのデザインを研究しているランドスケープ・アーキテクトの彼女は、「私にまかせて。ものすごいガーデンがあるから土曜日に連れて行ってあげる!」こうして私は信じられないほど素敵なガーデンと出会うことになるのである。(まだまだ続く) 


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