【山道づくり日誌】これからの人生でやりたい道づくり 後編
【はじめましての方へ】
こんばんは!秋田県北秋田市で小さな宿屋を営んでいる織山と申します。山大好き人間です!(海は視線の置き所がなくて怖い)この記事は2023年から始めたい「山道づくり」について最初の意気込みを書いている記事の後編です。前編はこちらからご覧ください。
https://note.com/moriyoshizan/n/na3c1ea954b99
まずは、読むために貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。また、このnoteは投げ銭をしてくださったお二方のパワーにより成り立っています。感謝感激です。それでは後編のスタートです…。
【1人活動の限界を感じた1年】
皆さんは森吉山という山を登ったことはありますか?もし森吉山という名前に馴染みがない場合は、地元の身近な山を思い浮かべてみてください。地元の代表的な山、子どもの頃に一度だけ登ったことがあるような山があるとベストです。
その山で、最も多くのお客さんが来て登るコースといえば、ゴンドラやケーブルカーを使った最もライトなコースだと思います。でも、コースはもっともっとあるんですよね。
周辺には大小様々な滝や景勝地もあります。その山に関わっている人だったら、もっともっとその山のことを知ってほしいと思うのではないでしょうか。
でも実際のところ、普通のお客さんはピークハント、つまり山頂にたどり着くとその山を制覇したと思ってしまいますよね。それで「はい、1座!」名山ポイント獲得チャリーンというのがSNSでは散見されます。私は、それが何となく寂しかったし、悔しかった。私と同じ思いを持っている人は少なくないと思います。
だから、自分の宿のお客さんが山登りをしたいといって、私自身がガイドをするときには、1度もライトなコース(当地域、森吉山でいえば、ゴンドラを使って8合目まで登っちゃうコース)を案内したことがありません。だってそのコースはお客さん1人でも行けるから…。ガイドの役割はそれ以外にも沢山あることは承知しています。ライトなコースでも素晴らしいガイドの人と歩くことで、今まで気が付けなったことに気付きますし、色々な楽しみが増えることも分かります。でも、これは単純なワガママですが、せっかく自分自身で山道を案内をするのだったら、お客さんが単独では行かないようなコースを案内したかった。かなりのエゴ成分が含まれていたかもしれません。それでも、私は今まで一人ひとりを全力で案内して、その時その時で伝えられる魅力や地域特有の考え方を全力で伝えてきました。その想いだけでやってきた山ガイドの5年間でしたが、そろそろ次の段階が見えてきたような気がしています。特に、この1年間は狭く深く掘ってきましたが、そのために捨てなくてはならないリクエスト、様々な声を無視してきたことに罪悪感を抱くようになってきてしまいました。
1人で出来ることは、とても少ない、のです。もちろん、1人でやることが大事な時期もありました。でも1人でやる領域を深堀するのは、もう少し裾野を広げてから、また戻ってきても良んじゃないかと現時点では考えています。
【ガイドで飯を喰うということ】
私の周りの登山ガイドさんの多くは、ある問題で困っていました。地元の山が好きだけど、ひとつの山の案内だけでは生活していくことができない…と。そのため、人気の山ガイドさんは全国に出張して行きますし(地元に不在)、山ガイドだけでは収入が足りない人は別のバイトをかけもちしたりしています。
私自身も3つ、4つの収入源を持ちながら日々暮らしています。それが普通、と考えることは容易いでしょう。山ガイドは金にならない。金にならないから、他の仕事をするのは当たり前。当たり前のことを変えようとしても仕方がない…。
でも、私はその「仕方がない」を変えていきたい。
「仕方がない」を変えることによって、もっと救われる人が増えると思っています。まずは、あの人を救いたい。それは、地元の人であったり、仕事がなくて地域から出て行ってしまった若者であったり、あるいは移住してみたものの希望した山関係の仕事がなく、つまらない事務仕事ばかりで田舎嫌いになってしまった人であったり。
自分たちで山の道を整備しながら、他の人では満足に案内することができないコースをつくることで、もっと少人数高単価の取り組みに昇華させることができるのではないかと思っています。
でも、どうやって?
難しいことほど、やる気が出てきますよね。山ガイドで飯を喰うことが夢のまた夢の地域で、山ガイドが収入の柱となれば、もっともっと私自身が胸をはって、地域から離れてしまった人に「帰ってこいよ」と言うことができます。
【山ガイド2.0から3へのバージョンアップ】
それを解決するために、山ガイドをバージョンアップさせるところから考えてみたいと思います。
山ガイド1.0は、観光協会等に申し込んで、当日ガイドに会うまで誰がガイドしてくれるか分からないもの。つまり、誰がガイドしても良い、ガイドのプライオリティ(優先順位)が低いものと考えます。結構な確率で、植物の名前を連呼するだけの図鑑おじさんに当たります。客単価は3,000円~5,000円くらい。
次に、山ガイド2.0となり、SNS等を通じてガイドと参加者が直につながり、いわゆる指名買いできるようになった形式が2.0です。優れたガイドは、お客さん自身が見つけて直接依頼をしていきます。体験料は高くなりますが、その分満足度も高くなり…という姿が現在多くみられるようになってきた山ガイドの状況ではないでしょうか。客単価は1万円以上。
これから、また次があるとすれば、どのような形態が考えられるのでしょうか。Web1.0からWeb3へという議論があるように、Webの世界も日進月歩で変わっていきます。ブロックチェーンやDAO(自律分散型組織)、非中央集権といったWeb3を代表するキーワードを山ガイドにも当てはめて考えてみるとどうでしょう。
「山ガイド3」が生まれる時代へのシフトは、私たちの考え方や価値観の変化も求められる難しい問題です(とWeb3説明ページに書いてありました)。山道を消費して、お金を稼いで終わりではなく。人気ガイドを生み出したり、入れ替えたりするアイドル的なことではなく。どうやったらコミュニティ全体の幸福の総量を引き上げることができるのか、という考えが根底になければ土台から崩れていくでしょう。もはや「山ガイド」と「案内される客」という分断された関係性もあいまいになっていくのが自然かもしれません。
同じ価値観を持った人間が、ともに山道を歩きながら新しいものを「共創」していくことが可能になります。これぞ共創という姿は、まだ明確に示せるものはありませんが、かつて誰かが目指した天竺のように、薄ぼんやりとは見えるような気がしています。
そのための舞台装置として、前編から言及しているのが「ロングトレイル」なのです。
(ようやく脇道から正規ルートに戻った感)
私は、地元を代表する山として「森吉山」を出発点とした100km近いロングトレイルのコースを設定すると良いのでは?と考えました。秋田県北秋田市と隣の仙北市、さらに隣の岩手県八幡平市をまたにかけるコースです。現在は行政の区割りがあり…分断されているものを、ひとつのストーリーでつなぐことができる場所なんです。
北秋田市ではマタギ文化が生まれ、そのマタギは奥羽山脈を通じて各地に広がっていきました。仙北市の乳頭温泉にはマタギの勘助が発見した「鶴の湯」があります。これから私が人生の後半を投じて作りたい山道(ロングトレイルのコース)では、マタギが歩いた道をトレースして、ガイドとお客さんが新たな関係性を結べることを目的に、設計や整備をしていきたいと思います。
【実際の想定コースをご紹介】
具体的なコースは以下の通りです。
ポイントは、かつて北秋田市に住んでいたマタギが実際に歩いたコースであることです。それは楽しい思い出ばかりの道ではありません。昔は子どもが沢山いた時代。長男しか家に残ることは許されず、次男や三男は自らおのれが生き抜く場所を見つけなければなりませんでした。その旅に出た先のそれぞれで、運命的な出会いがあり、いわゆるマタギ文化と呼ばれるものが広がっていったのです。衣食住を担いで歩く。その意味合いの深さを感じるためには、2泊3日では全く足りないでしょう。
本当は1か月くらいのロングトレッキングが必要だと思いますが、現実的には5泊6日(前後の移動も含めて1週間)が現在の落としどころではないかと考えています。これはまた別の機会にnoteにまとめたいと思っていますが、日本人の有給休暇取得率が低すぎる(50~60%)ため、まずは取得率100%を目指してから、もっと長いコースも考えていきたいと思います。
5泊6日で100キロのコースです。
まだ机上の空論のため、2023年に雪がとけてから実際に歩いて検証します。
山道タイトル
『マタギ発祥の地・北秋田から、マタギが熊と共に生きる森吉山を登り、幾多の温泉と八幡平周辺を巡って、マタギの勘助が発見した乳頭温泉・鶴の湯までを結ぶ約100km』
※具体的な地名での紹介のため、よく分からない場合は飛ばしてください。もしかしたら、興味をもってくれて、一緒にやってくれるかもしれない地元の人向けに記載しています。
<1日目>(コースタイム:6時間50分/11.7km)
スタート
秋田内陸線・阿仁前田温泉駅~森吉山ダム・四季美湖~高畑~松倉コース~森吉避難小屋
<2日目>(コースタイム:9時間8分/18.6km)
森吉避難小屋~森吉山~ヒバクラコース~野生鳥獣センター~親子キャンプ場
<3日目>(コースタイム:11時間46分/22.5km)
親子キャンプ場~赤水渓谷~玉川温泉(入浴)~焼山避難小屋
<4日目>(コースタイム:9時間31分/19.7km)
焼山避難小屋~八幡平~藤七温泉(入浴)~大深山荘
<5日目>(コースタイム:7時間28分/15.7km)
大深山荘~八瀬森山荘~大白森山荘
<6日目>(コースタイム:7時間45分/10.7km)
大白森山荘~小白森山~蟹場温泉~新奥の細道~鶴の湯(入浴)
ゴール
【ポイントはオルタナティブな山道であること】
上記のコースはいわば空っぽの器。
これに前編で記載した大切にしたいこと「生物多様性」と「ライフ・センタード・デザイン」を背骨にして、肉づけしていきたいと思います。肉づけのポイントは下記の通り。
<ポイント1>古(いにしえ)のマタギが歩いた道をトレースするトレイル。
マタギに関する独特の文化や自然との関わり方について、地元のマタギたちからヒアリングを繰り返し、より深くマタギ文化を体験するために考案された全長約100kmのロングトレイルです。
<ポイント2>山小屋やキャンプ場に連泊する、極少人数限定。
2名様より催行、最大4名限定の極少人数制かなと(現在のところ)。山ガイド2名が全行程同行し、貴方の旅をお手伝いします。宿泊場所は電気がない山小屋を基本としており、大自然の中に身を溶け込ませることを大切にしています。気になる料金は全て込々で30万円前後になりそう。
<ポイント3>山小屋泊でも食事はレトルトなし。マタギ手作りの保存食や鍋料理。
そんなハードな内容ですが、食事はご安心ください。アルファ化米ゼロで、秋田県産食材にこだわった山めしメニューをご用意します(予定)。
これからの山ガイドは、ガイドだけではなく、料理人(シェフ)の役割もしたり、パフォーマー的な側面もあったり、高付加価値な体験を提供するために求められることが多くなることと思われます。でも、これしか生き残る道はないのではないでしょうか。言い過ぎか。
…妄想ばかりが膨らんでしまいます。すみません。
ロングトレイルガイド、という存在は山ガイドのバージョン3に近づきやすいのでは、という思いもあります。山道ならではのイレギュラーな事態(体調の悪化や予期せぬトラブル)をともに助け合いながら切り抜けることで「ガイドとお客さん」という経済関係を超えた親密な関係を構築することができるのではないでしょうか。
まずはこれから、山道づくりに賛同してくれる方を探していきます。
もしかすると、方向性のひとつとして、Web3やNFTをからめて、共助の登山道整備のモデルになるかもしれません。
(整備してくれた人、早期にコースを歩いた人にコインが配られるようにな…)
一緒に未来をつくりましょう~!という意気込みをアウトプット。
長々とした文章をお読みいただき、ありがとうございました。
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