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ソーシャルナッジ③「ストッカブル正直レビュー」の必要条件

こんにちは。株式会社スパイスボックスの森竹アル(@aru_moritake)と申します。
広告と人の幸せな共存を目指して、業界の健全な発展に貢献するため日々奮闘しています。当社では、SNSデータを起点にしたマーケティングソリューションを数多く提供しており、主にSNS領域を主戦場としています。
 
数回に渡り、「トラストモードを生むソーシャルナッジデザイン」を題材にした記事を書いていきます。

最初に書いたnoteはこちら

皆さんの日々のマーケティング活動の一助になると幸いです。毎回「持ち帰りポイント」を入れるようにしていきますので、ぜひお役立てください。

「ストッカブル正直レビュー」とは何か?

最初のnoteで、情報が洪水するSNS時代では信用される状態づくり(=トラストモード)が重要という話をしました。そしてそのトラストモードづくりを目指した情報発信の工夫をソーシャルナッジとご紹介しました。

前回までのnoteはこちら

今回は、3つ目にあたる「ストッカブル正直レビュー」について解説していきます。

ストッカブル正直レビュー」というのは、簡単に言うと情報を「探索」している際に、参考としてストックしたくなる他人の評価です。なぜ、他人の評価が重要なのか、どのような評価が増えると好ましいのか1つ1つ紐解いていきます。

私たちにとって「得」よりも「損」の方が重大

「損失回避性」という言葉をご存じでしょうか? 同じ条件の損得でも、プラスの喜びよりマイナスの悲しみの方が心理的なインパクトは大きくなるというものです。例えば、以下2パターンの訴求をされた場合、どちらの方が気になりますか?

A:いまご契約いただけると、1万円分お得になります!
B:後日のご契約になると手数料1万円がかかってしまいます。

おそらく、ほとんどの人にとってBの方が気になります。契約にかかる費用はいずれも一定で、そこからプラスマイナス1万円という条件は変わらないはずなのに、Bの方が気になってしまう。私たちが「得」より「損」の方により大きな心理的インパクトを感じるからです。

損失回避性:私たちは「得」よりも「損」の方が重大

 つまり、私たちは得をしたいという感情よりも、損をしたくないという感情の方を重要視しながら日々様々な意思決定をしているのです。

「損」を知っておきたい心理

多くの人が、「食べログ」や「アットコスメ」、映画のレビューサイトなどを使った経験があるはずです。全員の評価が満点ではなく多少良くない感想があったとしても、お店に行ったり購入したりした経験もあるのではないでしょうか。私たちは必ずしも「完璧」を期待していません。「損したくない」「失敗したくない」「騙されたくない」と思いつつも、心の中で何かしら至らない点もあるものだと許容もしている。それらを前もって「確認」しておきたいのです。もし、検討しているお店や商品を検索しても、評価が全く見つけられなかった場合、検討から外してしまうこともあります。そのため、全く評価がない(=損を知ることができない)よりも、中には良くない評価もある(=損を前もって知ることができている)状態の方が好ましいのです。

オンラインでも「棚取り」する時代

流通の現場では「棚取り」が重要です。コンビニやスーパー、量販店などで商品を幅広いスペースに沢山置いてもらうこと(=棚を取ること)です。商品を見つけてもらえないと買ってもらえないので当然のことです。
ここ数年、新型コロナの影響もありオンラインショッピングの需要は飛躍的に伸びました。そういった背景もあり流通現場における棚取りだけでなくオンライン上での「棚取り」も必要です。商材にもよりますが、私たちは商品を購入する手前でSNSや検索エンジンを通して他人の評価を確認し、吟味・検討をします。オンラインで検索する際に、どれだけ参考になる他人の評価を見つけられるか? 先の説明の通り、人は損を前もって知っておきたいので、情報量が少ないと検討行動自体が止まってしまう。そのため、企業側としては流通現場での棚取り(置いてもらえる商品を増やす)だけでなく、オンラインでの「棚取り」(商品に対する評価を増やす)もしておく必要があるのです。

流通現場と、オンラインでの「棚取り」の関係性


信憑性の厳しい追求

「探る」段階にいる消費者は、「損したくない」「失敗したくない」「騙されたくない」という意識もあり警戒している状態でもあります。評価を見つけたとしてもその情報に対して信憑性を疑うこともあります。その際、気をつけるべき視点は3つです。
 
誰が言っているのか?
情報の出どころについて。商品提供の当事者となる企業自身が発信している情報では自作自演に見えてしまうため、第三者発信の評価情報が求められます。SNSで検索されるケースが多いのはこのためです。
 
ステマじゃないか?
第三者からの情報だとしても当事者との関係性がどうなっているのか? も気になります。金銭を受け取っているのに、それを明示していない場合はステマ(=ステルスマーケティング)となってしまいます。タレントやインフルエンサーに仕事として依頼している場合や、試してもらいたいために無償で商品を送付した場合なども、関係性を明示してもらう必要があります。
 
忖度していないか?
消費者からすると検討において参考になる情報を欲しているので、忖度して正直な感想が語られていない情報は参考になりません。表面的で良いことしか言わない評価ではなく、良いところも至らないところも正直に言及しているかどうかを見ています。
 
労力がかかっているか?
評価を簡単に書き込めるレビューサイトなどでは、アルバイトなどでサクラを雇って評価を加えることもできてしまいます。どれだけ評価に関わる労力がかかっているかも実は重要です。インフルエンサーが商品写真を上げて「(ブランド名)さんありがとうございます!」とコメントするだけでは、ほとんど意味がありません。(よっぽど影響力の高い方なら別かもしれませんが)
実際に使った人にしかわからない粒度の情報というだけでなく、撮影や編集に労力のかかる動画フォーマットで紹介していたり、画像や文章だとしても実際に使ってみないと分からない切り口や複数の視点で使用実感をコメントしていたり、かかった労力が伝わるものの方が信頼してもらえます。
 
昨今ではインフルエンサーという職業は広く認知され受け止められており、より多くのSNSユーザーに情報を見つけてもらうためにもインフルエンサーへの投稿依頼は有効です。しかし上記のような視点を欠いてしまうと機能しなくなるため注意が必要です。
 

「保存」から「購入」の流れが生まれる理由

SNSの中でもInstagramは「保存」というストック機能が設けられています。ここで保存された商品に対しては、その後の購入意向が高いという調査結果も出ています。

投稿を保存したユーザーと、保存しなかったユーザーの行動比較

保存する際の動機として「憧れる」「気になる」「気に入った」「参考になる」「使える」といった心理が働いているため当然といえば当然です。「Amazon」のようなECモールでは「欲しいものリスト(=ウィッシュリスト)」がありますが、このような売場にアクセスする手前で、日常的に接しているSNSにおいて「欲しいものリスト」が作られ、候補が絞り込まれているようなイメージに近いと言えるでしょう。自社サイト(=商品情報ページ)やECサイト(Amazonのようなモール含む)だけでなく、その手前で接触するSNS上で商品に対する評価情報が増えた方が、消費者の行動導線に対する情報供給として有効に機能するのです。

「欲しいものリスト」はSNSと売場でそれぞれつくられる

「ストッカブル正直レビュー」の条件(持ち帰りポイント)


今回の持ち帰りポイントとしては、3つ目のソーシャルナッジ「ストッカブル正直レビュー」として消費者にストックしてもらいやすい条件をまとめておきます。
 
SNSでヒットする。
商品を提供している企業自身からではなく、他者からの評価を知りたいためSNSで検索されることが多い。自社サイトやECサイトにあるレビューは日常的な接触は望めない。
 
関係性が明示されている。
評価をインフルエンサーに依頼する場合はステマにならないよう商品や企業との関係性の明示が必須。報酬が伴わない場合(例えば商品の無償提供)もその旨関係性を明示してもらった方が良い。
 
評価に労力がかかっている。
時間と労力をかけて評価した形跡が伝わるか。撮影・編集された動画によるレビューや、画像と文章だけの場合でも使った人にしか分からない視点の言及など。(インフルエンサーに依頼する場合は普段からそういったコンテンツを作っている人を選ぶ)
 
正直さが伝わる。
良い点ばかり褒めているのは不自然。至らない点も含め両面をフラットに言及するなど、正直な評価をしているかどうか。(インフルエンサーに依頼する場合は、企業側からはっきりと正直な言及を依頼する)
 
参考になるナレッジがある。
検討において有用になる情報があるか。ストックする際は「憧れる」「欲しい」というシンプルな動機だけでなく「参考になる」「メモしておきたい」といった動機もある。具体的には、着こなし、作り方、使い方、選び方、頼み方、組み合わせ、メリットデメリットまとめなど。

参考事例

最後に、「ストッカブル正直レビュー」と言えそうな参考事例をいくつかご紹介しておきます。

◆ナレッジ・ハウツー系 (YouTube)

コーヒー器具の紹介やドリップコーヒーの淹れ方、コーヒー豆に関する知識を幅広く織り交ぜながら紹介。 

◆実演レポート系(Instagram)

自分の肌で実際に使ってみてレポート。before&afterで実際の肌の写真も織り交ぜながら紹介。

◆自宅の購入品紹介(TikTok)

自宅のリモートワーク環境をまとめて紹介しつつ、購入した個々のアイテムとそのお勧めのポイントを1つずつ解説。
 
次回のnoteでは最後のソーシャルナッジ「確信アシストレビュー」についてご紹介していきます。ご興味のある方はぜひスキとフォローをお願いします。 
 
最後まで読んでいただきありがとうございました。
では、良いソーシャルナッジを!


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