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ソーシャルナッジ①「強共感」の方程式

こんにちは。株式会社スパイスボックスの森竹アル(@aru_moritake)と申します。

広告と人の幸せな共存を目指して、業界の健全な発展に貢献するため日々奮闘しています。当社では、SNSデータを起点にしたマーケティングソリューションを数多く提供しており、主にSNS領域を主戦場としています。

数回に渡り、「トラストモードを生むソーシャルナッジデザイン」を題材にした記事を書いていきます。

↓↓ 前回のnoteはこちら ↓↓

皆さんの日々のマーケティング活動の一助になると幸いです。毎回「持ち帰りポイント」を入れるようにしていきますので、ぜひお役立てください

「強共感」とは何か?

前回のnoteで、情報が洪水するSNS時代では信用される状態づくり(=トラストモード)がブランドにとってとても重要、という話をしました。そしてそのトラストモードづくりを目指した情報発信の工夫を「ソーシャルナッジ」とご紹介しました。今回はその「ソーシャルナッジ」の1つ目にあたる「強共感」について解説していきます。

以下の図は、SNS時代に生活者がブランドを発見し購買に至るまでの流れと、各フェーズで必要な「ソーシャルナッジ」、ナッジが生み出す「トラストモード」を表しています。

ソーシャルナッジマップ_強共感

この生活者の行動の中で、最も左の部分、商品・ブランドを知らなかった人に対して最初の出会いのパート、発見され・認知されるところに位置するソーシャルナッジが「強共感」です。

まだニーズが発生しておらず、積極的に探索しようとする手前の状態でブランドと初めて出会うというフェーズですが、発見・認知と同時にブランドに強い共感が生まれると、購買意欲を一気に高めてフェーズを進めたり、突発的なファン化が生じたり、以降のブランド検討時にいい影響を与えます。

みなさんも、SNSでどこかのブランドに「強共感」して信用し、一気に購買に至ったことや、ファンの輪に入ったことはありませんか? 「強共感」発見(Discover)と、購買体験参加・ファン化(Join)を強く促進します。

ソーシャルナッジ1_強共感

強共感を起こすためのポイントは、シンプルですが以下の2点。
① ポジティブな印象を与えること
② 相手の興味のあるイシューを理解し、入っていくこと

当たり前に思われるかもしれませんが、いざ実践になるとなかなか難しい部分でもあります。

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い

「ハロー効果」という言葉をご存じでしょうか? 天使の頭上に描かれる光輪(halo)のことで、後光効果とも呼びます。ある対象を評価するときに1つの目立った印象が全体の印象に引っ張られる現象です。

最初に好印象を持つとその他の様々な事柄に対してもポジティブな印象を持ち、逆に最初がネガティブだとすべてがネガティブになります。人間関係においても、外見的な第一印象でその人の印象を勝手に決めつけてしまうことってありますよね。まさに「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」です。

ハロー効果

後々商品を検討してもらう段階に進んでもらった時のことを考えると、最初の時点でポジティブな印象を持ってもらうことはとても大きな意味があります。SNS時代において、情報を広げるのは“人”です。誰かを通じてブランドが強共感を得るためには、そもそも人々がどんなイシューに興味を持っているのか?を良く知り、そこにブランドとしてできることを答えていく必要があります。

社会の風を読み、イシューに入っていく

もう1つ。商品・ブランドを宣伝する情報ばかりに特化してしまうと、人間関係に置き換えると“自分語り”ばかりする人になってしまいます。“自分語り”を延々されても余程好きな相手でないと聴いていられないですよね。先ほど「相手の興味のあるイシューに入る」と表現しましたが、商品・ブランドの話をする際に“自分語り”に特化するのでなく相手の興味のある話題・イシューとの接着点をつくることが、初対面で受け入れるためには重要です。ここで言う相手というのは誰か1人のことでもあり、社会でもあります。

SNSを通じ社会で大きな共感が生まれるきっかけは、いつもn=1の熱です。

ですので、ここはSNSのデータをしっかりと見つめること。具体的には、ブランド周辺に存在する、“強い共感イシュー”をn=1の顧客のブランドとのストーリー投稿や、多くの人に共感された投稿から傾向を分析し見つけます。この“強い共感イシュー”がブランドへの「強共感」の種となり、n=1から特定トライブへ、さらにそこから社会にも共感の輪を広げる可能性にもなります。

我々はこれを「n=1からソーシャルマスへ」と言っていて(※これは別でまた書きます)、「強共感」はブランドにとってひとつの大きなキーとなります。

SNSは共感の宝庫。

SNSはいいね、RT、シェア、コメントなど、1つの情報に対するリアクションが簡単にできるため、人々が何に興味関心を持っているのかリアルタイムで把握することができます。情報洪水が起きている現代ではほとんどの情報がスルーされていきますが、多くの人々が興味関心を持っている情報は次々リアクションされ、逆にリアクションが集まらないとほとんど表示されないようなアルゴリズムになっています。

雪だるま式情報流通

これらのリアクションは、SNSの向こう側にいる1人1人が何らかの感情を伴って起こした反応です。ポジティブなものもあればネガティブなものもあるかもしれません。いずれの側面も「自分もそう思う」という感覚(=共感)を持った時に、人はリアクションをしやすくなります。

つまりリアクションを集めている情報に対する人々の反応の背景となる気持ちを想像することで、どのような話題に対して、どのような感情・考えが集まっているかを類推することができます。それを我々は「共感文脈」と呼んでいます。

「強共感」の方程式(持ち帰りポイント)

それでは、1つ目のソーシャルナッジ「強共感」を生むにはどうしたらいいのか、方程式をご紹介します。今回の持ち帰りポイントはこちらです。

SNSでリアクションされている「共感文脈」に、商品・ブランドの強みや伝えたいことを掛け算することで「強共感」を後押しする情報=ソーシャルナッジを考えます。

ベン図

このときのポイントは、
① どんな生活者・社会の気持ち(ソーシャル)にフォーカスを当てるか?
② そこに応えられる嘘のないブランド価値・姿勢はあるか?
です。

自社商品の良いところを伝えようとブランドだけに傾いてしまうと強共感は見込めません。自社ブランドの価値をテーマにしつつもどんな話題やイシューに寄り添い、ソーシャルにどう切り込むべきか考えましょう。前述したように、いずれもポジの側面とネガの側面が存在します。

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ソーシャル側のポジは興味(INTEREST)、ネガは課題(ISSUE)。ブランド側のポジは価値(VALUE)、ネガは弱点(WEAKNESS)と整理されます。お互いのプラスな面に寄り添うことだけが共感を生むわけではありません。

1) ソーシャルの興味×ブランドの価値 
2) ソーシャルの課題×ブランドの価値
3) ソーシャルの興味×ブランドの弱点 
4) ソーシャルの課題×ブランドの弱点

この掛け合わせをもとにしたストーリーでPRを設計することが「強共感」を生み出す方程式です。

「強共感」が起きた事例

最後に、実際にSNS上で強共感を生んだ事例をご紹介します。

① ミロ
私の世代では非常に馴染みのある、サッカー選手のパッケージで懐かしのミロさんが、SNSを通じて強い共感を集め、店頭から消えていくという事象まで起きた事例。きっかけは、TwitterでのUGC投稿。本来ミロの持っている成分を女性の生理の視点で熱量を持って投稿された内容が多くの共感を集め、バイラル。多くの人がこのことを知り、購買体験の輪に入っていったのではないでしょうか。女性の生理という生活者のイシュー視点で生まれたUGCによって、強共感が起きた事例です。


② タイガー魔法瓶
大きな社会的イシューを捉えた、タイガーさんの長年の姿勢が強い共感を集めました。タイガーさんは、優れた水筒・魔法瓶などのイメージを多くの人がもっていると思いますが、ブランドの約束として「紛争鉱物を使わないこと」を発表しました。その取組みや、姿勢に共感するTwitter投稿が生まれ、話題となりました。

Shopifyさんの 【Future of Commerce:2021年 5つの主要トレンド予測】では、社会的影響を考えた消費行動をとる方が新型コロナウイルス感染拡大以降増えている傾向や、サステナビリティに配慮した製品を積極的に購入する傾向も発表しています。このような時代の変化もある中、社会ごとのイシューをつかみ、強共感を生んだコミュニケーションと製品開発の事例です。

※該当Tweet削除のため弊社運用メディアで取り上げた内容記載

③ 木村石鹸
SNS上で虚偽広告(過大広告)に対する批判の文脈も広がっている中で、リアリティさや顧客に対しての誠実さがとても表れている、等身大でやさしい広告に多くの共感が集まっています。この投稿で木村石鹸さんを知った人・ファンになった方も多いのでは。私自身もこの広告を見て、とてもほっこりした気持ちになり、一気にファンになりました。

実際に、売上にも効果があったようです ↓↓


④日産自動車 シーマ

女優の伊藤かずえさんによる1つのSNS投稿から生まれたソーシャルPRが強い共感を生み出しました。30年以上にわたり愛車としてシーマを乗り続けられていることに感謝して、日産自動車さんが伊藤かずえさんの愛車をお預かり、レストアすることに。そのプロセスをコンテンツとして共有していったところ、多くの往年のファンたちが熱狂した事例です。「#シーマレストア」 を追ってみると非常におもしろいので是非見てみてください。


以上、1つ目のソーシャルナッジ「強共感」を生み出す方程式と、実際に「強共感」が起きた事例でした。いかがでしたでしょうか?

このように、起点はそれぞれあっても、多くのファンや生活者の心をくすぐる「強共感」は、新しいブランドでも、往年のブランドで生み出せる可能性があります。そのためには、まずは生活者やファンのイシューを捉えること。そこに取り組んでみてはいかがでしょうか?

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次回のnoteではソーシャルナッジの2つ目「多面ナラティブ共感」についてご紹介していきます。ご興味のある方はぜひスキとフォローをお願いします。

すこしボリューミーでしたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

では、良いソーシャルナッジを!





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