【1分小説】隕石を蹴飛ばしに
お題:「でかい宿命」
お題提供元:即興小説トレーニング(http://sokkyo-shosetsu.com/)
※サービス終了しています
-----------------------------------
「無茶だ! 逃げろ!」
「山田くんだけでも!」
地球に迫りくる隕石。
おれはこのために生まれてきたのか。
運動も成績もまるで良くなかった、好きな子には振られ、飼い犬も懐かず、正月のおみくじはいつも小吉で“つつましくあれ”とか書かれていたこの俺にも、みんなのために果たせる役割がある。
それが嬉しかった。
迎撃用ロケットに一人乗りこんだ俺は、真っ直ぐ隕石の方へ向かっていく。
「山田!帰ってこい!」
「山田ーッ!」
無線越しに俺を呼ぶ仲間たちにじんとする。
かつてこんな頻度で呼ばれたことはなかった。嬉しくて、だからこそ言いにくい。俺は本当は山本なのだと。
黒々とした隕石はもう目の前だ。
そしてついに、ロケットが隕石と衝突する。
衝撃。激しく揺れる操縦室。俺は目をつぶる。
ぱん! と、でかい音がした。
それきり衝撃は収まり、辺りはしんと静かになった。
恐る恐る目を開ける。ロケットは壊れていなかった。
隕石は砕けていた。いや、正確には割れたのだ。
ロケットの船外を、赤や青の紙吹雪が舞う。隕石の中は空洞だった。いや、隕石ではない。これは、くす玉。隕石の中からでかい垂れ幕が出てくる。幕にはこう書かれていた。
“小吉”