モリタサユウ

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モリタサユウ

オリジナル小説やエッセイを書いています。泣いても笑っても、とにかく書き続ける。詳細はプロフィールのページをご覧下さい。

マガジン

  • 短編小説

    オリジナルの短編小説をまとめています。 お題を使用している場合は、作品の末尾に提供元を記載しています。 <更新頻度> 毎週日曜に定期更新。 加えて、気が向いたら不定期で投稿します。 <文字数> 作品の文字数を目安に、読むのにかかる大まかな時間を記載しています。 【1分小説】・・・600字以内 【5分小説】・・・600~3000字 【10分小説】・・・3000~6000字 【20分小説】・・・6000字~12,000字

  • エッセイ

    随時更新。 なんてことない、ほっと息抜きできるようなひとときを。

  • おすすめ作品まとめ

    これまで投稿した自作小説およびエッセイの中から、おすすめしたい作品をまとめました。

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【5分小説】最期の詩【純文学】

<あらすじ> 死の床を迎えた老人が、ひとひらの詩を思いつく。しかし彼には、もう筆を執る力がなかった。 ==========================  ほんものの詩が、言葉が、今、ひらいたのだ。  ああ、このひとひらの言葉が生まれる瞬間を、生涯、どれほど待ちわびていたことか。  それはまるで、花のつぼみが、血色の花弁をひらくように。そしてその内側から、あたたかな薫香を立ち昇らせるように。  死の床で、彼は目をひらいた。その息づかいは、彼のいのちよりも一足早く、口元

    • 【1分で読める小説】この道の先に

      お題:この道の先に お題提供元:スマホアプリ「書く習慣」 --------------------------------------  この道の先に何があるんだろう。  立ち入り禁止の看板の前で、道の先へ目を凝らす。  道は雑木林へ続き、曲がりその先は見えない。  すると、がさりと音がして、道の向こうから人がやってくるではないか。こんな田舎には珍しい、痩せた若い青年である。薄鼠色の着物を着ている。  青年は私を見ると、ぱっと顔を輝かせた。 「いらっしゃい! どうぞこ

      • 【1分で読める小説】いちばん遠い家出

        お題:あきれた14歳 お題提供元:即興小説トレーニング(http://sokkyo-shosetsu.com/) -------------------------------------- 「ハルトがいないんだ」 「どうせまた家出でしょ。放っておけば帰って来るよ。あの子ばっかりに構ってられないんだから」  母親はそう言って、料理皿を次々に食卓に並べていった。  それを取り囲む兄弟7人。父と母と合わせて、ハルトの家は10人家族だ。今あいているのはハルトの椅子だけ。 「あ

        • 【10分エッセイ】伊香保の湯の花まんじゅうが美味しい

           ハードルを上げるのは良くない。  例えば、Googleマップとかの飲食店の口コミって何段階かあると思っている。  まずはじめは身内の口コミで高評価。近所にこんな美味しいお店が! とか、そういう純粋な驚きや発見の喜びから書かれたりする。  次に、その高評価をアテに勝手に期待してやってきた外部の人が、「高評価の割には美味しくない」と勝手にガッカリして低い点数をつける。  誰かが何かを絶賛することで、それに対する期待が上がり過ぎてしまうのだ。結果、その高すぎる期待は裏切ら

        • 固定された記事

        【5分小説】最期の詩【純文学】

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          【5分で読める小説】思い出のサブスク

          お題:グラタン、浴衣、サブスクリプション お題提供元:お題bot*(https://twitter.com/0daib0t) --------------------------------------  余命1年を宣告された時、俺には家族も友達も、恋人もいなかった。両親は幼い頃事故で亡くし、俺はその遺産で学校に通っていた。  悲しい、というより、やっと解放される。そんな気持ちが強かった。たった13年生きていただけでこんなにくたびれてしまうのだから、人生100年時代だなん

          【5分で読める小説】思い出のサブスク

          【5分で読める小説】さいあくな日

          お題:最悪 --------------------------------------  最悪だ。大雨で職場へ向かう電車が遅れ、ようやく来た電車は激混みで息もできず、ほうほうのていで会社にたどり着けば、昨日メールで送信したはずの資料がなぜか送れていなくて、その資料を会議で使うはずだった上司から怒られ、よく確認してみれば宛先のメールアドレスが一文字間違えていて、あわてて上司に報告しようとしたら商談中で連絡がつかない。とにかく誤送信先にお詫びとメールを削除してほしいと連絡を入

          【5分で読める小説】さいあくな日

          【1分で読める小説】天界でも人間界でも、やることは同じ

          お題:どうあがいても何でも屋 --------------------------------------  天界ではたくさんの生き物たちの転生を手伝ってきた。  本人の要望を聞き、天界の都合を照らし合わせて転生先を決める。  文字通り一生モノの決定なので、その重荷に耐え切れず、とうとう自ら転生届を上司に出した。  転生先は人間で、ごく平凡な会社員として生きる道を選んだ。  ところがどうだ。 「最近人間たちがここを通るからうるさくてねえ」  とスズメが言う。 「新し

          【1分で読める小説】天界でも人間界でも、やることは同じ

          【1分で読める小説】ありきたりな殺人

          お題:ありきたりな殺人 -------------------------------------- 沈黙する死体の間を歩く。地下倉庫の一番奥へ向かい、肩に掛けていた新たな死体をそこに置いた。 どの死体にも傷跡はない。年齢性別も分からない。 後ろをついてきた仲間に、俺は問うた。 「なあ、この光景見たら、俺は殺人者に見えるのかな」 「……だろうね」 仲間もまた、運んできた死体をそこに置いた。 実際のところ、これが死体なのかもよく分からないのだ。 俺は運んできた死体の腕

          【1分で読める小説】ありきたりな殺人

          【1分小説】愛があれば

          お題:愛があれば何でもできる? ----------------------------------------------- 「アヤちゃん、そいつは無理だ」 「いやいや」 「いやいやじゃなくて」  なんてことを言っている間に、手際の良い現地スタッフにより、俺の体には次々にベルトが装着されていく。  アヤちゃんは天使のように笑って、 「私のこと好き?」 「好きだよ」 「大好き?」 「大好きだよ」 「じゃあできるよね」 「なんで!?」  高い高い吊り橋の上。 「言っ

          【1分小説】愛があれば

          【5分小説】深夜に一人、ただ歩く

          お題:愛を叫ぶ。 -----------------------------------------------  めちゃめちゃ足が痛い。歩き疲れた。夜通し歩いていた。  なんでそんなことをしたのか。  終電を逃したからか。否。  誰かを探していたのか。否。  忘れたい恋があったのか。否。  理由はもっと簡単だ。歩きたくなった。それだけだ。なのに人には理解してもらえない。人はどこまで歩くことができるのか。試したくなったのだ。  これがマラソン大会なら沿道で声援もあった

          【5分小説】深夜に一人、ただ歩く

          【1分小説】スマホの中に誰かいる

          お題:耳を澄ますと -----------------------------------------------  耳を澄ますと、スマホの中からすすり泣く声が聞こえてきた。 「助けてください、出られないんです」  その声はスマホのスピーカーのあたりから聞こえてきて、耳に当てるとまるでスマホで通話しているみたいな格好になる。 「なんでそんなところに? っていうかあんた誰?」  スマホの中にいるこいつを救出するには、スマホを分解しないといけない。なんで身も知らないやつ

          【1分小説】スマホの中に誰かいる

          【1分小説】もう一度、桜を

          お題:桜散る -----------------------------------------------  地面に落ちていた桜の花びらが上へ吸い寄せられ、枝へ戻る。散っていたはずの桜が、みるみる満開へ戻っていく。 「いいのかなあ、こんなことして」 「うるさいな。ちゃんと話せば分かってくれるって 「ふうん」  使い魔の猫のマコマコは、どうせ怒られるよ、とでも言いたげに私を見上げる。  空を見上げる。上弦の月は静かに私の所業を見ている。  時間を戻しているのはこの学

          【1分小説】もう一度、桜を

          【1分小説】夢見る心

          お題:夢見る心 -----------------------------------------------  例えば「夢見る乙女」というと、窓辺で頬杖をついている少女。その目線は斜め上である。そんなイメージ、だよね?  例えば漫画で登場人物が何かを想像、あるいは妄想をするときも、その吹き出しは斜め上に出ることが多い。  極め付けは、「夢に向かって頑張ろう!」って言う時に指差すのは? 斜め上、だよね?  つまり、ええと何が言いたいかって。自分と夢との立ち位置って、斜

          【1分小説】夢見る心

          【1分小説】春の憂鬱

          お題:快晴 -----------------------------------------------  どうせ楽しくない。分かっている。外に出たって何もいいことはない。  窓の外は快晴。憎らしいくらい。隣の公園は桜が見頃で、なんとも楽しげな笑い声が聞こえる。  卒業式に出られず、入学式へ出る予定もなく、宙ぶらりんのまま親と目を合わせることもできない私には、遮るもののない春の日差しはまぶしすぎる。  風が吹く。桜吹雪が舞い上がる。  開けていた窓の隙間から、花びら

          【1分小説】春の憂鬱

          【1分小説】大好きな君に

          お題:大好きな君に -----------------------------------------------  大好きな君に、贈るものがない。  実はあったんだけど食べちゃって、ケーキ。  ケーキは美味しい。抗えなかった。  だからそもそも贈り物なんてなかったことにして、週末ちょっといいレストランでご馳走してごまかそう、と思っていたけれど。 「食べたでしょ」  なぜだ。包装紙は見えないように捨ててお皿も片付けて、もちろん口元に生クリームなんてつけてないか確認し

          【1分小説】大好きな君に

          【1分小説】雲で月を洗う

          お題:なし -----------------------------------------------  お母さんが雲で月を洗っている。  キッチンの椅子の上に立つと、それが良く見える。 「駄目だよルリ、降りなさい」  お母さんは洗い物をしながらそう言った。  いつもは「こら!」ってこちらに飛んでくるのに、今日はこちらを見ようともしない。  くしゅくしゅと揉みこんだスポンジから白い入道雲がわき立つ。キッチンの明かりの下で、カレーのお皿が白い月になる。さっき私が

          【1分小説】雲で月を洗う