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【1分小説】春の憂鬱

お題:快晴
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 どうせ楽しくない。分かっている。外に出たって何もいいことはない。

 窓の外は快晴。憎らしいくらい。隣の公園は桜が見頃で、なんとも楽しげな笑い声が聞こえる。

 卒業式に出られず、入学式へ出る予定もなく、宙ぶらりんのまま親と目を合わせることもできない私には、遮るもののない春の日差しはまぶしすぎる。

 風が吹く。桜吹雪が舞い上がる。
 開けていた窓の隙間から、花びらが一枚舞い込んできた。

 春の日差しをたっぷり浴びたそれは小さな陽だまりのようで。

 暗い部屋に、私と、花びら一枚。

 風が吹き、花びらは踊るように私を外へ誘う。