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【1分で読める小説】この道の先に

お題:この道の先に
お題提供元:スマホアプリ「書く習慣」
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 この道の先に何があるんだろう。
 立ち入り禁止の看板の前で、道の先へ目を凝らす。
 道は雑木林へ続き、曲がりその先は見えない。

 すると、がさりと音がして、道の向こうから人がやってくるではないか。こんな田舎には珍しい、痩せた若い青年である。薄鼠色の着物を着ている。

 青年は私を見ると、ぱっと顔を輝かせた。

「いらっしゃい! どうぞこちらへ」

 状況が飲み込めず、「ええと」と口ごもる。

「ここって、立ち入り禁止って……」

「うわ、なんだこれ」

 看板を見て、青年は困ったように頭を掻いた。

「ははあ、なるほど。僕を困らせようとして誰かがイタズラしたんだな。見て」

 青年がひっくり返した看板の裏には‘’喫茶去さざれ 美味しい珈琲あります”と書かれていた。

「暑いでしょう。僕の店で休んで行きなよ」

 この日の気温は36度の猛暑日。見知らぬ土地で歩き疲れた私は、ありがたく青年の言葉に甘えることにした。

「特製の水羊羹を作ってあるんだ。誰も来なくて困ってたよ」

 青年の周りが妙に寒いこと、彼の影が不自然に揺れていること。きっと暑さで意識が朦朧としているからだろう。とにかく私は酷暑から逃れたかった。