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料理科学 「料理の見た目」


日本料理は目で楽しむと言われており、かなり見た目にこだわる文化とされている。
そして実際に、料理の見た目が「まずそう」だったら、実際にまずく感じるとされている。
では、実際に「まずそうに見える」や「おいしそうに見える」といった基準や法則というものはあるのか?
ある程度はある。
自然界では、食べ物は慎重に食べないといけない。もし仮に傷んでいたり毒だったりした場合、生死にかかわるためである。
そのため、おいしそうに見えるとは、つまるところ安全な食べ物に見えるというのが基本となる。
ただ、現在は文化も発展しており、生まれてから後天的に学習することでこの見た目はおいしそうと思うようになっている。

色について

日本人とアメリカ人の色の好き嫌い

まず、国によって食べ物の色の好き嫌いがある。
日本とアメリカでは、日本では青色の食べ物が避けられるが、アメリカでは黄緑色の食べ物が避けられる
日本人的感覚で言えば、青い食べ物は自然界にあまり存在せず、食べ物として食べ慣れていない。一言で言えば、まずそうである。
アメリカ人的感覚は、どうも黄緑色の食べ物というのは、植物が枯れた色のため、まずそうということらしい。
海外では「カラフルなケーキ」や「原色を使ったお菓子」などが売られているのはこのような感覚の違いも影響している。
つまり、育った文化が違うと、見た目に対する感じ方も違ってくる。

更に、人によって見える色がそもそも違うということもある。
日本人男性の20人に1人、日本人女性の500人に1人は色覚が弱い。
これは、遺伝的な特徴であり、年齢によって変化することはない。

見分けずらい色として
●緑から赤までの範囲の差
●紫から青までの範囲の差
●濃い赤が黒に見える
などとなっており、これらの影響により
◆焼けた肉も生肉も同じように見える
◆赤身の魚の鮮度が分かりにくい
といった影響がある。
一般的に、男性より女性の方が色彩感覚は鋭いとされており、色に関する仕事についている女性も多い。

形について


黄金比は約5:3となっており、料理の見た目にもこの比率が使われている。
●コロッケの形は、縦横比が5:3
●カレーライスは、ご飯全体盛り付けてある端から端までの長さと、白いご飯が見えている部分の比率が5:3
●カレーライスの入っている皿の縦横比が5:3
●すし屋で使っているどっしりした湯のみの縦横比が5:3
などがあり、探せばいくらでも5:3の比率の物が出てくる。
しかし、当然ながら5:3以外の物の方が多く、黄金比が絶対的に美しいものという訳ではない
重要なのは、一つの引き出しとして知っておくことである。

皿の盛りつけについて


リムとは、皿の外側にあるふちのこと

皿の大きさ
【大】
料理を乗せても十分な余白がある。お皿の空間に余裕と緊張が生まれ高級感やオシャレな印象を受ける。
【中】
リム、お皿の余白、料理のバランスが取れた状態。安定感がある。
【小】
お皿の余白が少ないので、料理のボリュームが強調される。

リム幅
【大】
リム幅が広いと盛りつけられるスペースが狭まり、盛りつけられた料理に目線が集中する。今風なオシャレな印象を与える。
【中】
贅沢なスペース使いで余裕を感じられる盛り付けは、高級感を演出する。

【小】
リム幅が小さいとカジュアル(堅苦しくない)印象を受ける。安定感があるので、気軽な日常使いに向いている。
【リム無し】
リムが無いと、デザイン性が一気に高まる。ソースやハーブなどでデコレーションするとよい。

お皿の高さ(立ち上がり)
【低い】
フラットなスペースがデザイン心を刺激する。オシャレにデコレーションする時によい。
【中間】
お皿、料理、余白が整っておりバランスのよい盛りつけ。
【高い】
お皿の立ち上がりが料理と接近しているので、料理の立体感が強調される。


お皿の形
【丸皿】
非常にバランスの取れた安心感のある盛りつけ
【長角皿】
落ち着きのある安定感が感じられる

【オーバル皿】
カジュアル(堅苦しくなく)で温かみのある雰囲気
【角皿】
緊張感があるクールなイメージ。硬いかしこまった印象。


皿の材質について

木の皿やコップは同じ料理でもおいしく感じる傾向がある。
これは、木材への接触が金属やプラスチックといった人工素材への接触に比べ、血圧の上昇など生理学的反応が少ないためと考えられる。
そのため、木や陶器製の食器が見た目のおいしさに与える影響が大きい。

皿の色について

料理との相性もあるが、皿の色によって料理の見た目も変わる。

●食器に占める青色の割合が白地に対して10%~20%のとき食欲を増進させるとされている

●赤色の食器も食欲を増進させる。特に酢豚やシュウマイなど中国料理との相性が良い

●白色の皿はデザインに癖がない反面、料理そのものの勝負となるため上級者向けとなる。コロッケなど油っぽい料理に使うと、油っぽいイメージが軽減する

色と心理について

人間は色によって感じる重さが違う。
白は最も軽さを感じさせ、黒は最も重たさを感じさせる
これは、色の明度によって重量感まで違って見えてくる現象である。
そして、人は過去の経験から重いものを高価に感じる傾向がある。
そのため、黒色の物は高級感があるとされており、黒い皿に乗っている料理も同様の現象が起こる。

料理の盛り方について

チャーハンを盛り付けるときに、皿に高く盛り付けたほうが美味しそうだと判断される傾向がある。
そのため、盛り付けの際には立体感や高さを意識した方が良い。

また、料理が大皿に大量に盛られている場合。
このとき、大量の食べ物が寄せ集められているのを見ると、たくさん食べる傾向がある
ごちゃごちゃとたくさんある様子は、少量のものより魅力的に見え、たくさんある方が食べた量の把握がしにくいためである。

ワンポイント学習

料理に暖色系の色のアクセントがあるとおいしそうに見える(食欲がわく)とされている。
●サラダにトマト
●焼き魚に筆ショウガ
など

この効果は直接料理に含まれていなくてもよくて、視界に入ればよい
つまり
●色のついた皿に盛る
●レードルや玉杓子の柄に赤いリボンを結ぶ
●器に赤いリボンを結ぶ
●赤い小さな花を食卓に乗せる
●赤いナプキンを使用する
●ロウソク(オレンジ色の炎)をテーブルに置く
などにも同様に効果がある。

しかし、料理やテーブルクロスなどをすべて赤、オレンジ、黄といった暖色だけでうめつくしてしまうと、食欲にとってはかえって逆効果となる。
これらの色は、ほんのわずかあれば十分である

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