人生、転職、やり直しゲーム 第1章

【ダンプに乗って優順さんの所に向かう】

俺は、総務の課長に
話は後で聞くと言って内線電話を切った。
すぐ、優順さんの家にダンプで向かうと、

まず、庭の1台のユンボが目に止まった。
隣の木造金物店舗が
見る影もなく、
木材の山になっていた。
ユンボで解体されたのだろう。

壊れた店舗の横には、
残っていた金物、
トンカチ、ペンチ、ノコギリ、スコップ、
ツルハシ、釘なんかが無惨に散らばっていた。

家から優順夫妻が出てきた。
「店舗は人に貸すって言ってたべ!
俺らが旅行していた隙に、
どうして勝手に壊したんだ!」

しまった!
解体工事業者に、
優順さんの家の工事を
中止するように手配するのを忘れていた!

業者は、
鴨葱さんの家を解体した後、ここに来て、
優順さんが留守にしていたから、
勝手に壊したんだ!
ん?旅行?

「優待旅行に行っていたのですか?」
「キャンセルの電話サ掛けても全然繋がらないから、
しょうがないから約束通りに行ってきたべ!
帰ってきたら、店舗がこのザマだべ!
どうしてくれるんだべ!
ここは、ええ借り手が決まっているのに!」

1度は店舗を解体すると言ったのに…
夫婦は真っ赤な顔でぎゃぁぎゃぁ俺を責め立てた。
俺は、土下座をして謝った。

「申し訳ありません!」

「アンタの責任で直してけれ!
伝統建築の建物だべ!」

「全く同じものは作れません…、
アパートでしたら、
新しく作れます…」

「だからァ!
アパートなんていらないって言ったべ!
なんだが、今、流行ってるレトロ家具屋『お宝買い叩き屋』が借りてくれるって、
契約したばかりだべ!
今すぐ元に戻してくれ!」

俺は、よろよろ立ち上がり、
ユンボで潰された木材の山の、家の木の柱、割れた窓を見つめた。
家の折れた柱をくっつかないか戻してみたが、
そんなことをしても元に戻るわけがない。

「もう、下っ端のあんたじゃ話になんないべ。
課長に連絡して、
賠償してもらう。
断ったら、
裁判だべ」

課長に怒鳴られる、
嫌だ…
また、死ねって怒鳴られるんだ…

俺はかつて店だった木材の山の横に仁王立ちする
優順さん夫妻の足元に
土下座の姿勢から
さらに地面に額をつけた。

「お願いします!
この通り、この通り、謝ります!
ですから、
課長にだけは、連絡しないでください!」

「あんたじゃ賠償金を払えないべ!
会社に連絡する!
おい、俺の電話を貸せ!」

「はい」

奥さんが、優順さんに俺の名刺と携帯電話を渡した。
俺の名刺をみて、
俺の務めるパワハラパレス情弱店の電話番号の入力を始めた。
課長にまた、死ねって言われる…
「やめろぉぉおおおおおおおおおおおお!」
俺の理性が飛んだ。

俺の叫び声で、優順さんの電話を触る動きが固まった。
目を見開き、信じられない、といった
表情でこちらを見ていた。


俺は、その表情を見て更に激怒した。
俺がサビ残して書類を作ったり、
サラ金の督促に怯えながら
金策に翻弄して、
息子の命まで亡くしたのに。
部長を呼ばなくてはならないなんて、
また、怒られるじゃないか。

「どうして…
俺は全てを犠牲にしてまで
こんなに頑張っているのに、
アンタ達の態度はなんだ?
仕事もしないで
ゴルフ三昧か?
俺が、天誅を下してやる」

「ゴルフ?なんのこと?」

俺は土下座の姿勢をとりながら、
おれの横に無造作に積まれた金物の中で、
使い勝手の良さそうなハンマーがあるのを確認した。

素早くハンマーを手に取り、
血走った目で俺を見つめる優順(ゆうじゅん)さんの
右目を狙って
ハンマーの釘抜きする先端で
思い切り叩いた。
手に衝撃が伝わった。
ぐにゃりとした柔らかく脆い眼球に
ハンマーの先端が刺さる感触が生々しい。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」
さっきまで俺を罵倒した優順さんが仰け反って、
手から電話と名刺を地面に落とした。

「がはははははははは、
いひひひひひひ!」

俺は仰け反って倒れた優順さんの上に
馬乗りになり、
ハンマーの先端で、左目を叩いた。
ヒット!
上から打ち付けたせいか、
さっきより深く刺さった。
俺が、ハンマーを引き抜くと、
優順さんの潰れた目玉が一緒に引き抜かれ、
ポテっと地面に落ちた。

俺は、痙攣でピクピク動く、
優順さんの動きを封じるために
人中(じんちゅう、鼻と口の間、人間の弱点の1つ)に、
ザクザクハンマーをふりおろした。
前歯がポロポロひん曲がる感触が手に伝わってきた。

優順さんが、
ブッ、っと、
口から折れた歯と血をいきおいよく吐き出し、
俺の顔にかかった。
俺の目に血が入ったので、視界が見えなくなり、
俺は、ハンマーの連打を止めた。
優順さんが隙を見て、
体をひねったので俺はさらに頭にきた。
「抵抗するんじゃねぇよ!」

俺は、右目にもう一度ハンマーを下ろして、深く刺し、えぐり、
ハンマーを引き上げたが、
もう片方の目玉がひしゃげただけで、
ほじって出すことは出なかった。
優順さんの痙攣は止み、動かなくなった。
俺は、優順さんの電話もハンマーで叩き壊し、
課長の名刺をビリビリに破った。

「ふ、ふぁぁぁぁあ!」
俺が顔を上げると、
優順さんの奥さんが、
腰を抜かして、勢いよく小便を漏らす音をたてた。

俺はハンマーを持って奥さんに近づいた。
奥さんは、
こちらに背を向けて
四つん這いになって逃げた。
遅いので俺は直ぐに追いついた。
俺は、
奥さんのブラウスの襟首を掴み、
首の神経目掛けてハンマーの釘を抜く方を振り下ろした。
ガッ、
「ぎゃあああああああああああぁぁぁ!」
奥さんは前につんのめって倒れた。
俺は奥さんに上からのしかかり、体と顔を正面に向けてから、
馬乗りになった。
手でこちらを引っ掻こうとするので、
足の体重で腕を押さえつけ、
涙を流している右目に向かってハンマーの釘を抜く先端を振り下ろした。
ガスッ
「ギャアァァアァァァァ!」
手に振動が伝わり、痺れる。
俺は、左目も潰す事にした。しかし、奥さんが顔を背けたため、
こめかみに当たった。
「動くんじゃねぇ!」
奥さんの顎を左手で押さえつけ、
左目も狙った。
ガスッ!
「うぁぁあああああああああああ!」
奥さんはピクピク痙攣していたが、やがて動かなくなった。

庭で、でかい声で叫びやがって。
近所の人間に警察を呼ばれたら厄介だ。

俺は、もう、死体処理する気が失せた。
考えるのが面倒くさい。
どうにでもなれ。
死体をそのままにして、
かつて店であった木のスクラップの横に置かれた金物を
俺はポケットに入っていたコンビニの袋に詰めた。

ラスボスを倒すために、
返り血をボタボタ垂らしながら、
乗ってきたダンプに向かって歩いた。

ところで、俺にとってのラスボスって誰だ?

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