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これから社会に出る君に。バッドエンドは無い。

「社会に出ると、学生時代はずっと優秀だった自分が、思いも寄らないことで人前で恥をかいてしまったり、みんなの前で注意されてプライドを傷つけられたりと、これまで耐性の無かったことに直面することがあるけど、実は君だけじゃない。みんなそう。自分もそうだった。

その先頑張れるかどうかは、傷つけられることをある程度覚悟をしてるかどうか、そういうことが誰にも起こり得ると知ってるかどうか、だと思う。だから出来ればみんなにはそんなことがあっても乗り越えてほしい。」


こんばんは。今日youtubeを見ていたらピースの又吉さんが近畿大学の卒業式ゲストでスピーチをしているのが流れてきました。前の文はそこで話してた内容の要約です。

有名人のくせに朴訥としていて、こんなに素の人そうそう居ないな、と思ったが私もそっち側の人間で、よく人に舐められるので不器用に話すその姿は他人事とは思えない。


この話を象徴する言葉として、彼の執筆本の引用で

「バッドエンドは無い。僕達はまだ途中だ。」

という言葉を使っていた。これがシンプルで良いと思った。死ぬまでは途中だから生きてれば100歳でも途中なんだよね。日々を過ごしてるとそれになかなか気づかない。今日が一番若い日、なんていうこともよく言いますね。


ところで、この話を聞いて思い出したことがある。

私は3回ほど転職をしています。その2度目の転職の時の話です。

29歳でわりと出世し、部下が30人ほどいた私は、とあるベンチャーにスカウトされて転職することになった。そこの社長と役員が大学の時の先輩で、バイトも一緒にやっていた仲だった。

来期上場する予定だ、だけど子供みたいな人間ばっかりでマネジメント出来る人間がいないので頼む!!と頼み込まれての転職だった。前の会社に辞めると伝えると、社長から「給料を1.5倍にするので辞めないで」と怪しげな引き止めにあったので一旦検討して、転職先に「ちょっと迷い出した」と伝えたら、

「みんなもう首を長くして待ってるんだよ、絶対に来てくれ!!」

と言われ、給料も元々1.5倍くらいの約束だったので、断る理由もなく、もう引き返せないなと思い、思い切って転職の道を選んだ。


あまりに急がされたので、正式登用前の月の途中から顔を出すことになった。急上昇ベンチャーでキラキラしてる若者ばっかりだった。みんな感じよく受け入れてくれた。1人を除いては。基本的にみんな意識は高く、明るくて上昇志向が強くて、とにかく生きる力に満ち溢れていた。


さて、2週間ほど経って正社員になった。

全社員の前で自己紹介した後、マネジメントしてもらうチームはここだよ、と言われ現場のメンバーに会いました。最初の部下は4人。全部で90人ほどの会社だったが、全員が全員ライバルな感じで、バラバラに仕事をしてる感じ。なんだか動物園ぽい。


その日の夕方だった。若干微妙な空気を出していたリーダー格っぽい女子(同じ歳)が鼻息荒く私の方にやってきて、ちょっとお話があります、と会議室に呼び出された。名前をA子としよう。

A子は、「上司にあなたがチームのマネージャーになると聞かされました。はっきり言いますが、あなたにやってもらう仕事はありません。このチームは私がマネジメントします。他の3人にもそう言ってあります」

と言いました笑

え?どういうこと?????


あまりに驚いたが、ここまでのことを言われると人間冷静になる。コーフンしてる女はコワイので、おそるおそる言った。

「いやいや、そう言われても。みんな待ってるからって言われて、私は前の会社を無理やり辞めてきたんですけど・・・」

するとA子は

「上司である担当役員は現場のことは何もわかっていないので、言うことを聞くつもりはないです」

とのことでした。こりゃ大変な会社に来ちゃったな。

その日をなんとか終え、ドキドキしながら家に帰った。泣きそうだった。



2日ほどあっためてから、役員である先輩にその話をしてみた。すると、

役員「そんなこと言ったの!!???ほんとに????あいつどういうつもりだ!!」

私「いやー、ほんと困ってる。なんとかしてくれませんか?」

役員「うーん・・・、、でも俺の言うこと全然聞かないし・・・・」

私「もう・・・辞めたろかな・・・・」

役員「!!!それはダメだ!!辞めないで!!」

この会話で、「こいつアカンやつやな」と察知した。マネジメントできないのはお前だったのか、と実態を把握した。八方塞がり感極まりない。今は笑い話だが、この時は正直泣いた。くっそー、騙された〜

その夜は落ち込んで、「もうほんとに辞めちゃおう。まだ3日だけど。」と決心して寝た。



翌朝、寝不足でボーッとしながら電車通勤している時に、ふと思った。今日辞めて、2ヶ月後には他の会社に通勤してるんだろなー。モワモワとイメージが浮かぶ。電車に揺られてると少し離れた斜め後ろあたりで、今の会社の人がたまたま私を見かける。

「あ。あの人自己紹介して3日で会社辞めた人だ(ププ)」

妄想が私の中を駆け巡る。私にはひどい妄想癖があり、乗り物に乗っている時は基本なんらか妄想している。

「それだけは絶対イヤ!!」と思い、頭をぶるぶると振った。隣でつり革に捕まってた人は驚いたに違いない。辞める前にちょっと考えを整理しようと思った。

この2週間ちょいで得られた情報はこんな感じ。

・現場の人たちは頑張っててみんな優秀でいい人。だけど雑であんまり教育されてない

・役員は現場との信頼関係がない(特にA子)

・役員は情報盛りがちで、気持ちはあるが助けるスペックが無い感じ。目的もあやふや。

・役員の肝いりで入社した私は役員と同じタイプの人間またはアイツの手先だと思われている

・A子はムカつくが、正直で上昇志向がある。頭も悪くない。上司には嫌われているが同僚には割と好かれており信頼もされてる


そして、マネジメントはできるが、初めての業界で不安がある私。うーん、これは捨てるべきは役員かもな・・・ということで、私は選択した。3日で辞めてしまったら知らないところで陰口叩かれるという妄想に負けた。

その日の午後、役員を呼び出してこう告げた。

・現場の仕事を半年から1年ほどやってからマネージャーになる。それまで一般社員として仕事させてくれ

・できればあの部署はA子をマネージャーにしてやってくれ、多分できそうだから

その2つを飲んでくれたら辞めない、と。もちろんこうなったのはあなたのせいなので給料は当初決めた通りもらいますけど、ということも付け加えました。


その後、A子を呼び出し、業界が違うことを理由として当面の間マネージャーになるのは辞退したこと、現場仕事を覚えたいから私の教育担当やってくれとお願いした。A子は驚いてたけど、後から聞いたらこの時に私とはやっていけると思ったそうだ。腹を決めると伝わるもんなのだ。

我ながらすごい立ち回りだなと今思い出すと思うけど、その時はもう必死だった。あと、給料が変わらないならマネジメントしないで仕事教えてもらったほうが断然得だと思った。プライドより実を取るほうが腹落ちしやすい。

この日からずっとA子と行動を共にした。1年間一緒に仕事をして、業界のこともしっかり覚えたところで彼女は転職することになった為、私は1年後に予定通りマネージャーになった。部下も10人に増え、給料もなんと100万円アップしてもらった。ストックオプションももらった。

こう書くと結果良いことばっかりに思うけど、そこに至るまでにはプライドをズタズタにされるようなことも数え切れないくらいたくさんあった。大きなことから小さなことまでトラブルがいっぱいだった。その話はまた別の機会に書きたいと思う。

それでも報われたなと思うのは、社員もクライアントも取引先もみんな若くて優秀で、本当に本当に勉強になっていた。嫌なヤツも仕事には必死だった。1年で私は驚くほど成長したと思う。30歳前後で理想的な職場に恵まれていた。いっぱい怒っていっぱい泣いていっぱい笑って、とにかくものすごく働いた。


ちなみに例の役員とは入社3日目の会話をしてから1年間、一切口をきかなかった。

それでも給与テーブルの段階を無視して、私の給料を他の誰よりも大幅にアップしてくれたのはその役員だった。役職がそうだからというだけで出来ることじゃない。人にはそれぞれ役割があって、組み合わさるとすごいパワーが出る。

その年、会社は無事に上場した。動物園がパブリックカンパニーへ変身したのだ。

振り返るとうまく出来すぎかなと思うくらい良い思い出しか残っていない。人生、信じられないようなショックなことがあったりしたほうが面白い。時代が変わっても、自分の人生の中心は常に自分なのだ。

だからこれから社会に出る皆さん、今仕事で大変な思いをしてやっていけないかもしれないと不安になって泣いている人、この壁は超えられないかもと思って数日落ち込んでも、ちょっとサボって気分転換して、なんとか打開策を考えて、工夫して、どうにか元気で乗り切って欲しい。又吉さんと同じようにそう思う。

どう考えても自分の軸がブレてしまうと思ったら仕事を変えるのも1つの選択肢だ。自分の譲れない部分を譲らなければならない場所には居てはいけない。その判断が出来なくなるまで我慢をしてはいけない。でもこの場所にいたい、いてもいい、と思ったら譲れるところは譲ろう。大事なものは人それぞれ違う。



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