ドラマ「大奥」〜それぞれの愛の道
「大奥」5話~7話、五代将軍・徳川綱吉と右衛門佐の物語も、とても心を揺さぶられた。
前回4話までの感想はこちら
色狂いなどと揶揄される反面、学問好きで本当は女だとか男だとかの区別なく生きたかった綱吉もまた、将軍という運命に翻弄された人生だった。
一人娘である松姫を幼くして失い、将軍と言えども女と生まれたからには早く次の世継ぎを産むのだ!それがお前の存在意義なのだ!と言わんばかりの父・桂昌院(竜雷太さん)からの猛烈なプレッシャーの日々。
父・桂昌院は、若い頃に猫の若紫を殺めたせいで綱吉に子が出来ないのだと言いだし、綱吉は「生類憐れみの令」を制定することになってしまう。
自分を愛してくれるのは父だけだ、愛にすがりたい綱吉は、そんな父でも見放すことが出来ない。
すでに閉経したことを伝える娘に、「なおのこと神仏にあやかる他ない」と妄執に取り憑かれた父は酷過ぎて、目を背けたくなった。
綱吉が男として生まれていたら、またその一生も違ったものになっていたのだろうか。
大奥入りしても自分の体は差し出さずに権力を得、有功の後釜である大奥総取締の座についた右衛門佐。
綱吉にとっては学問の師でありながら煙たい存在でもあり、それでも長年、綱吉を包み込むように見守ってきた右衛門佐。
江戸市中では「生類憐れみの令」も含め綱吉に不満を持つ者が増え、ついには夜伽に刺客が紛れ込み、綱吉は命まで狙われる。
「まったく、私は何のために生まれて来たのか」
絶望し疲れ果て命を絶とうとする綱吉に、右衛門佐はそれを許さない。
「上様、生きるということは、女と男ということは、ただ女の腹に種をつけ子孫を残し、家の血を繋いでいくことだけではありますまい」
「もう死ぬと言うのなら、今叶えさせてもらう」
ただ一度だけ、子を成すためではなく、何の目的もなく結ばれる二人。
「上様、私は上様に恋をしておりましたよ」
「一目お見かけした時から」
右衛門佐は長年の夢だったと綱吉に打ち明ける。
「ここには何もない。ただの男と女として、ここにおるだけです」
「こうなったのが今のあなたで本当によかった。なんという幸せか」
綱吉は初めて父に逆らい、甲府の徳川綱豊を養子に迎え6代将軍・家宣とする、と宣言する。
徳子!許せへんで!許せへんで!と怒り狂う父に「父上、将軍である私が決めたことです」毅然とした態度をとる綱吉。
父を振り切り、表情も晴れやかに、さっそく報告しようと部屋に駆けつけた綱吉の目に飛び込んできたのは、すでに息を引き取った右衛門佐の姿だった…。
かすかに微笑みながら安らかに眠る右衛門佐の亡骸に、涙。
病の床についた綱吉のそばには、幼少の頃より仕える吉保の姿が。
「夢を見ておってなぁ…佐(右衛門佐)が迎えにきたのかと」
「お迎えにいらっしゃるのは佐殿なのですか」
「欲得のない、慈しみを教えてくれたのじゃ。佐だけがのう」
「そうですか」
そうですか…そうですか…
吉保も
一生、綱吉に仕えると誓い
全身全霊で、綱吉を愛していたのだ。
その愛に綱吉は生涯、気づくことはなかった…。
「私のどこに、どこに欲得がございましたでしょうか」
「上様、もとは上様に、恋をしておりましたよ」
「幼き日よりずっと」
「誰よりも長く、深く」
「佐とお会いになりましたか?」
胸を掻きむしられるような壮絶なラストに
ただ、ただ、号泣するのみ…。
綱吉を演じた仲里依紗さん、右衛門佐の山本耕史さん、吉保の倉科カナさん、役者たちの熱い演技に惹きこまれ、それぞれの激しくも切ない愛憎が交差した綱吉編、圧巻であった。
8話からはまた八代将軍・徳川吉宗の話に戻り、またカッコいい冨永愛さんの吉宗が堪能できる!
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